047 単位
「ボクは右のアイアンマンティスをやるわっ! ペロンは左のシルバービートルをお願いっ! ファイアランス!」
「了解!アイアンバレット!」
カルラがアイアンマンティスに向けファイアランスを放つとペロンもほぼ同時にシルバービートルに向けアイアンバレットを放つ。
カルラが放ったファイアランスはアイアンマンティスの頭部を吹き飛ばすと後方の壁を一部破壊して壁を焼く。
そしてペロンが放ったアイアンバレットはシルバービートルの体を蜂の巣にして立派な角を根元からへし折る。
共に一発でランクCの魔物を屠っているので、俺がそれぞれの死体をアポートで引き寄せストレージに死体を収納する。
「クリストフ、行くわよ」
2人は俺が魔物の死体を回収している間に次の魔物を探し奥へ進む。
隊列はペロン・カルラ・俺の順である。
この隊形というか並び順はペロンが得意としている風魔法で索敵しつつ進むので、ペロンが先頭になっており、俺はポーター的な役割なので最後尾なのだ。
初期の頃は俺が魔力を展開して魔物の気配や罠を探していたが、今ではペロン君がしっかりと索敵をしてくれているし、罠も発見している。
そしてカルラは司令塔としてペロンをこき・・ゴホン、指示を出しており、俺はポーター的な非戦闘員扱いになっている。
クラン対抗戦から1ヶ月半ほど経ち、クラン『MIツクール』のメンバーは俺の薫陶宜しく魔法の腕を上げている。
勿論、魔法だけではなく魔法陣の構築も様になってきているし、書き込み自体も順調に成長していますよ。
で、今は実戦講座の授業でダンジョンに潜っているのです。
当初からの懸案だった魔物の剥ぎ取り部位の持ち帰りだが、俺の時空魔法でストレージを作り出し、回収することでその場での剥ぎ取り作業を省略し、地上に帰ってから剥ぎ取り作業を行うことでダンジョン内の進行速度を飛躍的に上げている。
実戦講座が始まった5月から既に3ヶ月が経っているので、俺達は初心者ダンジョン、初級ダンジョン、中級ダンジョンを踏破し、今は上級ダンジョンに潜っているのですよ。
まぁ、カルラとペロンが【詠唱破棄魔法】をものにしているし、カルラは上級の火魔法と中級の雷魔法に下級の光魔法が使えるようになっている。
ペロンも上級の風魔法に中級の土魔法が使えるようになっているので戦闘力は問題ないレベルとなっている。
あ、俺が魔法を教えているので魔力消費は少なく威力は高いため、連戦をしても魔力切れにはあまりならない。
まぁ、ペロンは元々魔力が多いので滅多なことはないだろうし、カルラは魔力操作が上手いので消費魔力がペロンよりも少なく燃費が良い。
そんなわけで、あっと言う間に中級までのダンジョンを踏破していってしまったわけです。
つまり、俺たちのパーティーは1回生の中では頭1つどころか、2つ3つ飛びぬけているパーティーとなっております。
それとクララとプリッツの兄妹もカルラやペロン程度には育っているのであの兄妹のパーティーもつい先日の話だが中級ダンジョンに潜り始めている。
つまりダンジョンアタックの成績では上位陣の部類に入る。
まぁ、1回生の3/4以上はまだ初心者用ダンジョンを踏破していないから、中級ダンジョンにアタックしているパーティーは数少ないしね。
あ、実戦講座の単位で言うと、初心者用ダンジョンと初級ダンジョンを踏破していないパーティーは単位がもらえない。
つまり卒業できないのだ。
初心者用ダンジョンでは出てくる魔物がランクGかランクFなので1回生中に踏破が目安となるが、初級ダンジョンはランクFからランクDの魔物が現れる。
一般的にランクDの魔物を6人パーティーで倒せることができたら冒険者としては一人前と言われている。
それを王立魔法学校では3人でランクDの魔物を倒す事ができるレベルになれば卒業の単位がもらえるというものだ。
因みに中級ダンジョンではランクCの魔物が現れ、上級ダンジョンではランクBの魔物が現れる。
俺たちのパーティーは中級ダンジョンを踏破して上級ダンジョンに潜っているので既に単位は取得している。
・・・このことから俺は既に卒業に必要な単位を全て取得していることになる。
算術、歴史、魔史、国語、バルムス古代語の5科目は4月の単位修了試験で、魔法講座と魔術講座の2科目は5月のバカボンとの決闘で、実戦講座の初心者用ダンジョンと初級ダンジョン踏破は6月に、魔物学と地理学の2科目は7月の単位修了試験で単位が取れている。
これだけで卒業に必要な単位は全て取ってしまったので、あとはアイテム講座を受講しているだけとなったし、上級ダンジョンに潜っているのは既に実戦講座から離れているので自分の能力向上のためのものだ。
「よし、今日の目標だった10層のボスもぶっ飛ばしたし、今日は帰ろう!」
「そうだね。帰って魔物の剥ぎ取りもしないとね」
「うっ、ペロン、あんたねぇ~、せっかく帰ってシャワーでも浴びようかと思ったのに何でボクの気分を壊すかなぁ~」
「カルラはいつも剥ぎ取りをサボるからだよ。全部剥ぎ取りをするわけじゃないんだからチャンと剥ぎ取りをしましょうね」
「クリストフ、君まで言うかっ!」
カルラは脳筋だ。
筋肉達磨ではないが、魔法脳筋で攻撃魔法は得意だが補助魔法はあまり覚える気はないようなので勿体無いと俺は思っている。
特に光魔法には回復魔法が含まれているのだが、カルラは回復魔法もあまり得意ではない。
補助も回復もあまり興味がないのに何でクラン『MIツクール』を立ち上げたんだろうか?と聞いたことがあるが、「何言ってるの?強力な攻撃魔術をぶっ放すためじゃないっ!」と躊躇なく言い放ちました。
ペロンは攻撃魔法も補助魔法もそつなくこなすので後はカルラに負けないように魔力操作の錬度を上げると良い魔法使いになるだろう。
因みに剥ぎ取り作業は俺たちがする必要はない。
では何故剥ぎ取り作業を自分たちで行うかと言えば、俺たち自身で剥ぎ取り作業をすることで剥ぎ取りのスキルレベルを維持でき、更に魔物の体の構造を知ることができるためだ。
魔物の部位の剥ぎ取りは魔物の種類によっても難易度が違うし何より魔物の体の構造を知ることで本には書いてないような弱点が分かることもあるのだ。
剥ぎ取りは意外と重要なのだよ、カルラ君。
それから剥ぎ取り作業をする必要がないっていうのは、王立魔法学校の中にも冒険者ギルドの出張所があるのでギルドにそのまま魔物を提出すればギルドの方で剥ぎ取りをしてくれるのでわざわざ俺たちが剥ぎ取る必要はない。
但し、手数料が引かれるので換金額は減るけどね。
そこはカルラもペロンも金持ちの子供だから多少減っても問題ないし、俺も言わずもがなね。
但し、魔物を丸ごと持って帰れるってことで俺たちはマジックバッグを持っていると認識される。
このマジックバッグはダンジョンや古代文明の遺跡などで偶に発見されるアイテムで大量の物資を収納できるマジックアイテムだ。
俺のストレージに近いがマジックバッグは収容できる重量の制限があるのでストレージほどの使い勝手はない。
校内に冒険者ギルドの出張所があるということで俺たちは冒険者ギルド員なのです。
王立魔法学校に入学すると同時に準ギルド員になり、初心者ダンジョンを踏破するとランクFの冒険者として正式にギルド員として登録される。
そして中級ダンジョンを踏破している俺たちはランクCの冒険者となっている。
冒険者ギルドのギルドランクは踏破したダンジョンの難易度によっても変わるし、ダンジョンに潜っていなくても討伐した魔物のランクや数で決まる。
俺たちは前者で中級ダンジョンの踏破者としてランクCの冒険者になっているのだ。
「せっかくの素材だし、これを使ってマジックアイテムを作るよ。明日は製作日にあてるからね」
『了解!』
「ところで、1週間後から始まる夏季休暇は2人共どうするの?」
「僕は父さんの手伝いをして魔法の練習かな」
「私は少し旅行をしようと思っている。父上も西部以外であれば良いって許可してくれたしね」
「なっ! クリストフが旅行するならボクも行くわよ! ペロンも行くわよねっ!?」
はい?
何でカルラが俺の旅行についてくるのかな?
しかもペロンを巻き添えにして・・・ペロンは交通事故状態ですよ。
「え、僕も?」
「当たり前でしょ! クララたちにも声掛けるわよ! で、何処に行くのよ?」
行き先も聞かずについてくるって意味分かりませんよ!