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043 クラン対抗戦・予選3

 


 爆煙が晴れて俺が普通に佇んでいることに生徒たちは焦った表情を隠そうともしない。

 まぁ、30対1で一身に攻撃を受けて無傷で佇む俺を見て焦らない方がおかしいと思う。

 開始前に俺に挨拶をしてきた上級生たちも呆然と俺を見ている。


 さて、面倒なので一気に方を付けますかね。

 え、もっと戦闘を引き延ばして見せ場をつくれって?

 だらだら遊んだり戦闘を続けて何の意味があるのですかね?

 万が一に俺が戦闘を延長してラッキーパンチみたいなのが当たったらどうするんですかね?

 日本では漫画や小説でだらだらの戦闘シーンをよく見たり読んだりしたけど、本当の戦闘って一瞬で勝負を付けるものじゃないかと思うわけですよ。

 え、そういうのは戦闘狂だから良いんだって?

 俺は戦闘狂ではないから安全第一でいくよ。

 死んだら元も子もないからね。


 勿論、戦力が拮抗して戦いが長引くこともあるだろうから、それについては否定する気はないよ。

 寧ろそれは必然だよね。


 教師陣が張った結界内に俺の魔力を行き渡らせる。

 まだショックから立ち直る生徒は居ない。

 こういう試合に重宝する魔法は雷属性のスタンだ。

 スタンは中級魔法なので使ってもルール違反ではない。

 ただ、一般的に知られているスタンは電気ショックで単体を麻痺させ行動不能にする魔法なのだが、俺は事前に薄く、極めて薄く魔力を周囲に行き渡らせておいたので広範囲にスタンを放つことができる。


「スタン!」


 バチッという小さな音が幾つも鳴ると共に俺の周囲にいた生徒たちが「うっ」や「ぐっ」などの声を上げてバタバタと倒れていく。

 気付けば全員が倒れている状況なので教師陣も1人佇む俺とピクピクと痙攣をしたり気絶している生徒たちを交互に見やる。


 それなりに長い沈黙の時間が流れる。

 とは言え、せいぜい数十秒だけどね。


「しょ、勝者C-1・・・クラン『MIツクール』のクリストフ・フォン・ブリュトゼルス・・・」


 あっと言う間に終わったバトルロイヤルは教師陣の混乱を招いた。

 勝者が俺1人で2位以下が皆同じタイミングで倒れているので点数をどうするかということで協議をしている。


「まったく・・・これまでに30人以上を瞬殺した生徒など居なかったのだがな・・・さすがと言うべきか・・・」


 褒めていただいていると思うのですが、瞬殺はしていませんので、殺してないからね。


「ブリュトゼルスの1人勝ちで500点を『MIツクール』チームに与える。他のチームは・・・全て0点だ」


 最後に溜めを作って比較的軽度の麻痺で済んだ他の生徒たちを見て0点と言った男性教師の顔は苦笑いしかなかった。


 気絶していたり、気分が悪いとか訴える生徒は20人以上いて救護室に連れていかれたので軽度の麻痺で済んだのは10人ほどだ。

 そんな10人もまだ立つことはできないが、後は教師に任せて俺はカルラたちの応援に向う。

 未だ麻痺している生徒や客席からは殺気が篭った視線も見受けられたが、そんなことは知らない。


 移動をしているとクリュシュナス姉様が前方から歩いてくる。

 クリュシュナス姉様は生徒会なのでシード権を持っているから予選は出なくてもいいけどシード権のあるクランは教師の手伝いをしている。


「クリストフ、バトルロイヤルはどうしたのかしら?」


「もう終わりましたよ。ですから皆の応援にでも行こうとかと思っております」


「・・・一応聞いておくけど、勝ったのよね?」


「はい、500点をしっかりゲットしました」


「参ったわね。クリストフなら勝って当たり前とは思っていましたが、こんなに早く終わっているなんて・・・観戦に行こうと思って向かっていましたが遅かったようです」


「すみません、クリュシュナス姉様」


「いいのよ。呼び止めてごめんなさいね。チームメイトの応援に行っていいですよ」


 クリュシュナス姉様は最初に声を掛けて来た時よりも疲れた感じになっていた。

 ・・・すみませんね、クリュシュナス姉様。


 さて、クリュシュナス姉様と別れ魔法陣組が試行錯誤する会場に向かう。

 俺が1人姿を現したことで会場内はザワつくが教師の一喝で魔法陣作りに意識を戻す。


「おい、クリストフ、こっちに来い」


 監督をしていたブルーム先生が俺を教師陣の席に連れていく。

 カルラが何やらゼスチャーをしている。

 恐らく俺の勝敗が気になっているのだと思うので勝利のVサインを送っておいた。


「先ほどジング先生から聞いたが、瞬殺したそうだな」


 ブルーム先生は生徒に聞こえないように小声で話しかけてくる。

 でも瞬殺じゃないから!殺してないからね!


「1人1人だと手加減が難しいので・・・」


 事実だよ。

 大神殿でステータスカードを作ってから魔法の威力が半端無く上がった気がするんだよ。

 だから単体用のスタンでも個人に向けて放ったら感電死するレベルになってしまっている。

 威力を極限まで落としてもそんなレベルの魔法になっている。

 恐らくだけど、隠しステータスを見てしまったのが影響しているのではないかと俺は思っている。

 確信は無いけど、間違いないと思う。


 バカボンとの決闘でファイアランスを放った時に確信したんだけどね。

 俺がイメージした威力より遥かに高い威力でバカボンの足首から下を消失させてしまったしね。


 だからスタンは広範囲を対象にすることで個に対する威力を分散させた。

 だから今回のバトルロイヤルの敵は俺自身だった・・・手加減ができないチート君ですよ。


「30人以上を瞬殺しておいて手加減が難しいとは・・・お前に聞きたいのだが俺たち教師に教わる必要があるのか?」


「・・・さぁ? どうなんですかね?」


 それについては俺も考えなくもなかった。

 魔法については魔導書があればそれで事足りる・・・

 俺に不足しているのは経験と常識なので経験であれば冒険者をした方が積めるだろうし、常識は王立魔法学校に通わなくても学ぶことはできるだろう。


 ん? 常識がないということはちゃんと自覚しているよ。

 だってこの世界に来てまだ2年しか経ってないし、1年半は領都ブリュンヒルの屋敷の中から出ることも無かったからね。

 今はリハビリ中ってことで許してよ。


「ははは、正直な奴だ・・・」


 ブルーム先生は疲れた顔で俺を見てくる。


 あ、マジックアイテム製造については色々と有意義な時間を得ていますよ!

 魔法陣についてはあまり教わることはないけど、アイテム自体の素材とか精錬や生成方法はとても勉強になっております!


 そんな感じで教師の控えエリアに留め置かれた俺は色々と考えを巡らせていたら魔法陣作成の時間が終了した。


 魔法陣を提出したカルラたちに捕まるまで俺は生徒たちの殺気の篭った視線を受け続けたがどうでもいいや。


「クリストフ、何をしたのよ?」


「何って、スタンを広範囲で放っただけだよ」


「・・・だけだよって、アンタねぇ~」


「クリストフ君らしいね、ははは」


 ペロン君、その渇いた笑いは何でしょうか?


「それより魔法陣の出来はどうだったの?」


「・・・今の私たちにできることはしたわ」


「そうね、結果がどうあれ、あれが今の私たちの力ね」


 カルラ、クララは全力を尽くしたという感じだが、ペロンとプリッツは無言だ。

 何となく2人が暴走気味だったんだと思う雰囲気だ。

 苦労したんだな・・・

 俺はペロンとプリッツの控えめ男性陣の肩に手を置き、慰めの視線を2人に送る。


「「何なのよ、あんたたち!」」


 活発?・・・快活?・・・元気な女性陣が控えめ男性陣に抗議の声を上げるが、恐らく抗議したいのは男性陣の方だろ。


 午後3時、魔法陣の書類審査?が済み実際に発動させることになる。

 書類審査?ではデザイン、構成、オリジナル要素・創意工夫が審査され、300点満点で採点される。

 その後、実際に発動させてその出来で200点満点の採点がされる。

 つまり魔法陣の作成は合計で500点満点となる。


 そして、俺たち『MIツクール』チームはこの採点を待たずに二次予選の突破がほぼ確定している。

 だって、バトルロイヤルで点数を稼いだのは俺だけだし、しかも500点を稼いでいるので、他のクランが魔法陣の最高得点の500点を取っても『MIツクール』チームの魔法陣に1点でも入ればトップ通過は確定ですよ。

 まさか、1点も取れないなんてことはないだろう・・・そう願いたい。


 

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