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023 入学1

 


 最近、母上が体調が優れないと寝込むことが多かった。

 俺は王立魔法学校の入試や商会を立ち上げたりで忙しく、あまり顔を会わせていなかったので久し振りにゆっくりと母上と会っている。


「商会の方はどうです?」


「はい、思わぬ反響で忙しすぎてしまい、母上にあまり会いに来られず申し訳ありません」


「クリストフは体が丈夫ではないのですから無理をしないでね」


 体調が悪く寝込んでいる母上に言われては素直に頷くしか無い。


「母上も早く良くなってくださいね」


「うふふふ、私は病気ではないのよ」


「へ?」


 母上は可笑しそうにクスクスと笑い、侍女たちも微笑ましい光景を見ているという感じで和んでいる。

 いったい、何なんだ?


「クリストフ様、奥様は御懐妊されているのです」


「・・・かいにん?」


 ほへ? かいにん・・・解任?・・・えっ!? 懐妊!


 俺の驚いた顔が面白かったのか母上は声を大きくして笑っている。


「この歳なので少し恥ずかしいですが、クリストフに弟か妹ができたのですよ」


 おおおおおおおおおお!

 俺に弟か妹ができるのか!? 嬉しいじゃないか! めでたい!


「母上、おめでとうございます」


「ありがとうねクリストフ」


「でも父上は何もおっしゃってくれなかったです。酷いです」


「クリストフには私から伝えたくてアーネストには私から口止めをしておいたの。ごめんなさいね」


「・・・忙しさにかまけて母上に会いに来なかった私が悪いのです」


 しかし母上の歳だと高齢出産だろ?

 この世界の出産事情はよく分らないが、大丈夫なのだろうか?


「大丈夫ですよ、私を始め皆で万全な体制をとりますし、侍医もおりますので」


 俺の考えを読み取るとはハンナ恐るべし!


「ハンナ、それに皆も母上を頼んだよ」


「「「はい!」」」


 しかし、父上も未だ現役ですね。

 確かに母上の見た目は20代だからね。

 夫婦の仲が良いのは良いことだ。


 あれ?そうすると、入学式には母上は来られないのか?

 無理をして流産でもしたら大変だし仕方ないな。


 そんなこんなで入学式の日になった。

 え? 展開が早いって?

 そんなことは知らんっ!


 2日前に入寮しているので、寮という名の一軒家から校舎に向かう。

 俺は首席合格者で一軒家を与えられているため、従者を5人まで連れて入寮できる。

 勿論、校内で5人の従者をゾロゾロ連れて歩くのは禁止されており、あくまでも寮という名の一軒家の管理や俺の身の回りの世話をする従者だ。


 俺は誰も連れてくる気は無かったが、予想通り父上から厳命されてしまった。

 一応、大貴族なので従者を揃えていないと面子にかかわるらしく、俺の専属侍女であるルーナと護衛騎士のプリメラ、ラース、ベンの3人に料理人のジョンが俺のハウスに住み込みで入ることになった。


 入学式の前に先ずは教室に入る。俺は1回生1組だ。

 各組には30人ずつ1組から10組まであり、1回生で300人の生徒が存在する。

 1組は入試で優秀な成績を取った30人が集められており、殆どは貴族だが10人に満たないものの平民階級の生徒もいるらしい。


 まぁ、貴族のように教育に金や時間を費やせる方が有利なので仕方が無いのだろうが、2回生になると1組の平民階級の比率が上がるらしい。

 平民階級の優秀な者が下剋上を起こして愚かにも努力を怠った貴族はランクダウンというわけだ。

 俺も気をつけなければ。


 因みに2組から10組は成績順ではない。

 あくまでも1組だけ成績上位を集めているらしい。


「僕はペロン・クックと言うんだ。よろしくね」


 俺の横に座ったほっそりとした赤毛の男子生徒が俺に挨拶をしてきた。


「私はクリストフ・フォン・ブリュトゼルスです。よろしく」


「え、貴族様?」


 俺の見た目は庶民なので貴族とは思わなかったようだ。

 貴族の服なんてヒラヒラが一杯ついていてウザイから学校の中ではできるだけ質素な庶民的な服を好んで着ている。

 普段でもできるだけ質素で貴族貴族していない服を着るようにしているのだが、父上にはよく注意される。

 でも趣味が合わないのだからせめて学校内だけでもと思い庶民的な服を着ている。

 まぁ、ローブを纏うと服はあまり見えなくなるしね。

 貴族としては駄目なんだろうけど、少しぐらい良いじゃないか。


「一応ですが、貴族ですね」


「話しかけて、すみません」


「構わないよ。私は貴族だからって威張り散らす者を軽蔑しているからね。気兼ねなく接してよね。そうだ、君のことをペロンと呼んでもいいかな? 私のことはクリスって呼んでほしいな」


「ペロンで構いません。それとさすがに貴族様をそのように呼ぶのは・・・」


「じゃ、クリストフでいいよ。よろしくねペロン」


「はい、よろしくお願いします。クリストフ君」


 そうしてこの世界で初めてできた友達と親交を深めていると、教室の中が騒がしくなる。

 従者を4人もゾロゾロ連れてきた馬鹿が居る。

 どこかで見た記憶があるが、思い出せない。

 俺も歳をとってボケ始めたかな・・・ってまだ13歳だった。


 因みにこの王立魔法学校は12歳から入学が許されており、貴族は通常12歳で入学する。

 俺は生まれてからずっと体を患っていたこともあり、領都ブリュンヒルで静養をしてから王都に上京してきたので1年遅れで入学したし、当初はいつまで生きられるか分らなかったので父上も王立魔法学校への入校など考えていなかったらしい。


 話は戻すが従者を4人も連れてくるのは校則違反だ。

 俺は特に何かをする気は無いが教師の対応を見るのに丁度良いだろう。

 もし貴族だからということで校則を破っていても何も言わないのであれば、この学校の評価はマイナスとなるし、毅然とした態度を取るのであればプラスだ。


 

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