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チートあるけどまったり暮らしたい  作者: 大野半兵衛
4章

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126 貴族家に生まれた新米兵士の活動日記1

 


 私はデルバント・クド・ケルトン伯爵が三男、ベンドレイ・ケルトンだ。

 伯爵家の三男として生まれたは良いが、成人して世に出ると私は貴族という地位を奪われてしまった。

 まぁ、それについては予め分かっていたことなので特に何の感慨もないが、問題は貴族でなくなったということだ。

 今の私の地位は公民で準貴族的な地位だ。世の中では王国騎士団の見習い騎士や貴族家に仕える兵士など、そして村長のような貴族に代わって村を統治するものがこの公民という地位にある。


 私も以前は王国騎士団に入団したいと思い王立騎士学校に入学し、そして卒業したが平凡な成績で……下から数えた方が早い成績では王国騎士団に入団できるわけもなく、仕方なく他の貴族家に仕官しようと色々面接を受けたけど運悪く仕えるほどの家に巡り会えていない。

 そんなおり、新興貴族であるブリュトイース伯爵家が士官候補の募集を行っていると父上より勧められた。士官候補という言葉が聞き慣れないので募集要項を読んでみるとどうやら将来の将軍となる人材を募集しているようだ。

 しかし私は騎士を目指しているので軍ではなく騎士団に所属したいのだと父上にお答えしたのだが、父上に殴られ無理やりブリュトイース伯爵家の屋敷に連行された。


 ブリュトイース伯爵家の士官候補試験に集まった者たちは20人ほどで先ずは筆記試験を受けることになった。試験監督官に理由を聞いたら士官になるには報告書の作成が必須であり、物資の管理も行う能力が問われると返答があった。尤もだと思う。


 えーっと、何々……貴方の名前は?……馬鹿にしているのか?

 次は……貴方が指揮をするとして、敵は1万、味方は1千、貴方が立て篭もっている砦は堅牢で3ヶ月分の食料もあり、この砦を落とされると貴方の仕える家は滅ぶことになります。……ふむふむ……まともに戦えば玉砕は間違いないところですが、敵は貴方と貴方の部下1千の命を保障すると交渉してきました。貴方はどうしますか?……いきなり難問だな……主家が滅ぶのは武人として耐えがたきことだが……私なら………………よし、書けた。

 しかし次の問題もなかなかに重たい問題だな……


 2時間ほどで筆記問題と計算問題を解かなければならず、なかなか骨が折れたが何とか回答欄を埋めることができた。その後2時間もすると合格発表があり私は見事一次試験を合格した。

 一次試験なので二次試験もあるのだが、それはブリュトイース伯爵家の本拠地であるイーストウッドで行われるそうで、王都とイーストウッドの往復の旅費はブリュトイース伯爵家持ちでその間の日当も出ると言うのでイーストウッドに向かうことにした。


 遠い……こんなに遠いのかと言うほど遠かった。ブリュトイース伯爵家の輸送隊に便乗する形でイーストウッドに向かったのだが、1ヶ月もかかるとは思わなかった。

 そして1ヶ月の間は馬車に乗っているだけだったが、この馬車がヤバいのだ!

 何がヤバいって、輸送用の荷馬車なのにまったく揺れないのだ。どんな構造になっているのかと御者に聞いたが伯爵が作ったマジックアイテムだから分からないと言われた。こんなに揺れない馬車なんて貴族の乗車する馬車でもないはずだ。現に父上の乗る馬車は舗装されている王都の道を通行しているだけでも尻が痛くなるほどに揺れるのだ。


 イーストウッドに到着したらすぐに二次試験が始まった。私と共に輸送隊に同行した受験生は8人で早速着替えをして向かった訓練場で私たちは地獄を見ることになった。

 緑と茶が斑に配色された訓練着といわれる服に着替えた私たちに試験監督官はバックパックを渡してきた。このバックパックには何と30Kgもの重りが入っており、このバックパックを背負ったまま訓練場を100周しろと言うのだ。馬鹿じゃね?

 私を入れて8人の受験生が何を言っても取り付く島もない対応で、嫌なら帰って構わないと言うのだ。仕方なくバックパックを背負い走り出す。受験生8人にそれぞれ監督官が付き不正のできないように監視されての地獄の始まりだった。


 午前中に始まった地獄は夕暮れを迎えても終わることはなかった。そしていつしか周囲は暗闇に支配されていたが、私たちが走っている訓練場は煌々と昼間のように明るく照らされていた。

 本来ならそんなマジックアイテムを備えた訓練場なんて王国騎士団でも持ってないと思うだろうが、息も絶え絶えの今の私にはそのようなことを考える余裕なんてなかった。


 ……翌朝私は走り切った!

 監督官から何度も水を貰ったが、それ以外は全て自力で100周を走り切った。こんなに恐ろしい試験があるなんて思ってもいなかった。

 そして走り切った私はゴールと同時に意識を手放した。


 ……起きたのは2日後だと言う。

 私は合格でこのままブリュトイース伯爵家に仕官すると言うのであれば支度金として10万セムを、合格を辞退すると言うのであれば3日後に王都行きの輸送隊に同行ができると試験監督官の男性が話す。

 勿論、仕官した。こんな辛い思いをして合格したのにそれをふいにするなんて私にはできない。

 入隊手続きを終えると試験監督官から10万セムを貰い生活用品などをイーストウッドの町中で買いそろえる。発展目覚ましい町だけあって活気があり住民の顔には笑顔が絶えない。

 官舎にはベッドと作り付けの家具はあるし最低限の生活用品も支給品があるので買う物はそう多くはない。ハッキリ言って10万セムを使い切るどころか1万セムも必要ない。残った金はブリュト銀行本店に預けることにした。


 士官候補として入隊してひと月が経った。

 その間に父上や兄上たちに手紙を書きブリュトイース伯爵家に仕官できたことを知らせたし、ブリュトイース伯爵本人にも謁見して声を掛けてもらった。

 そして私は新兵小隊の隊長として10人の部下と引き合わされ訓練の毎日を送っている。階級は准尉だと辞令をうけた。

 下士官となった私は軍の組織編制や作戦行動のレクチャーを受けるために就寝前の貴重な自由時間を勉強にあてエグナシオ大尉の講義を受けている。

 エグナシオ大尉は王立騎士学校を首席で卒業し、ブリュトイース伯爵に直接請われているので既に大尉にまで出世している。しかも実力も兼ね備わっており文句がある先輩方は尽くエグナシオ大尉に完膚なきまでにぶちのめされたらしい。物理的にも論理的にもだ。


「今日は新兵訓練の月決め特練(とくれん)の日だ。第二種装備で30分後に倉庫前に集合だ」


 初めて聞く『月決め特練』とはなんなのか、と思いながらも中隊長殿の命令通り30分で第二種装備で倉庫前に集合する。1秒でも遅れると罰として地獄の訓練が待っているので私だけではなく皆が真剣だ。

 倉庫と言われる大きな建物。倉庫と言うくらいなので中には武器や防具が保管されているのだろうと思っていたが、倉庫に入ると中には武器や防具などなく代わりに数人の魔術師が居た。そして倉庫の奥には下に続く階段があった。

 ……階段?……下に行くための階段?……地下?


「これより月決め特練を行う! この階段はダンジョンの入り口である! 今から貴様らはこの階段を下りダンジョンの地下1層の最奥まで行ってもらう!」


 ダンジョンだって!? ダンジョンに潜ることが訓練っていうのか! 私たちは冒険者ではないのだぞ!


「ちゅ、中隊長殿、質問をしても宜しいでしょうか!?」

「何だ?」

「ダンジョン内には魔物が?」

「ダンジョンである以上、魔物が跋扈しているのは当然だ! だが心配するな、このダンジョン内では死ぬことはないから安心しろ」


 え? 死なない? どういうこと?

 中隊長殿はそこで質問することを禁止しダンジョンに潜れと尻を蹴飛ばしてきた。くそ、いつか出世してアンタの上司になって仕返ししてやる!


 

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