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フィーカスのショートショートストーリー

腐敗牛乳消費への死闘

作者: フィーカス

 ゴールデンウィークの前半戦。とはいえ、やることはいつもと同じである。

 土曜日はいつもの場所に出かけ、子供達と戯れ、適当な時間に昼食とも夕食ともとれない食事を取った後、疲労した上体で家へと帰る。おそらく日曜日は無為に時間を過ごし、あっという間に夜になることだろう。

 だが、連休後半には実家に帰るため、その前にやっておかなければならないことがある。食料の処分である。

 日持ちがするものもあるが、肉や野菜といったほとんどのものは4日間の連休中に腐敗し、食べられなくなる可能性が高い。さっさと処分しておかなければ、帰ってきたときに悲惨な状態が待ち受けることになる。


 さて、ここに一つの腐敗しかけた……といっても既に腐敗しているといってもいい食材がある。牛乳である。

 今日は28日。賞味期限は23日。しかも、開封済みである。

 中をあけると、液体から固形物が分離しており、なにやら怪しいにおいがする。

 通常なら飲めたものではなく、さっさと捨ててしまうレベルなのだろうが、何を思ったか、これを何とか消費してやろうと思ってしまった。

 こうして、この恐らく腐敗しているであろう牛乳を処分する闘いが始まったのだ。


 まず、牛乳を鍋に入れ、火をかける。腐敗しているものに火を通したからといって食べられるようになるわけではなるが、これはほぼ気分の問題だ。生では無理でも、火を通せばなんとなく飲める気がする。

 こうしてある程度加熱した後砂糖を多めにいれ、冷却し、氷を張ったコップに注いでインスタントコーヒーを加える。後はゆっくりとコーヒーが溶けるように撹拌するだけだ。

 単純な消費方法としてできた飲み物。そのまま飲むとひどい味がして消費しきれないような気がしたため、砂糖を多めに入れることによって甘さを強調したコーヒー牛乳の出来上がりだ。

 早速試飲。するとどうだろう。不思議なことに妙な味がする。何かこう、牛乳が腐りかけた味だ。砂糖の甘味はせず、何故か苦い。一口飲むと、それ以上飲むことを体が拒む。つまり、失敗ということだ。


 さすがに、きっちり消費するためにはさらなる加工が必要だったか。そのまま飲む以外に、牛乳を大量消費するのはなかなか骨が折れる。

 が、牛乳を大量消費する方法を、私は知っている。

 クリームシチューだ。水の代わりに牛乳を使うことで、牛乳を大量に消費することが出来る。水も加えれば、まずい味も水増しされて薄くなるだろう。

 早速調理開始。先ほど失敗したまずいコーヒー牛乳を鍋に戻し、加熱。味をごまかすために、具はそれぞれ甘味を持ったものを使う。にんじんにたまねぎ、かぼちゃといった具合だ。

 それらの具を、ほぼ沸騰している牛乳に投入。加熱、過熱、そして火熱である。気分的に、これでなんとなく消毒された気になる。においは多少気になるが。

 塩を少々いれ、コンソメスープを入れて味付け。そこに、ホワイトソースのルーを少しずつ溶かしいれればよい。

 大抵、ここで失敗する。ルーが完全に溶けていないうちからどんどんルーを追加していくため、そろそろちょうどいいだろうと溶かしてみると、すごい塊になったりする。そういった場合は水を追加して、濃度を調整する。

 軽く味見。何故か苦い。一応ホワイトソースの味はするが、なんか苦い。一体どうすればいいのだろうか。

 ここでふと別の案が浮かぶ。牛乳と同じ乳製品、チーズと組み合わせたらどうだろう。そうだ、これだけ濃いシチューなら、いっそのことグラタンにしてみよう。


 先ほど作った濃度が高いクリームシチューをグラタン皿に移し、チーズをかけてまずはレンジで3分ほど加熱。まだ野菜が煮えてない可能性があるため、ここで完全に火を通してしまう。

 加熱終了の合図がなったら、レンジの扉を開ける。するとどうだろう。驚いたことに、グラタンが爆発している。ブラウン色のルーが、レンジの皿や壁に飛び散っている。一体グラタンに何があったのだろう。

 そのグラタン皿を、トースターという名のオーブンに入れて焼く。一応、グラタンにも対応しているようだ。

 しばらくすると、中がふつふつといい感じに仕上がっているのが見えてきた。見ただけでは、これがほぼ腐敗した牛乳から作られたグラタンだとは気が付かないだろう。


 焼きあがったグラタンを皿に取る。とりあえず、処分料理第1号、完成。


 パソコンでいろいろ作業しながら、まずは一口。

 ……クリームシチューの味と大して変わらない気がする。しかもチーズがガムのようになかなか飲み込めない。

 ちまちまとパソコンをいじっては、時々思い出したようにグラタンに口をつける。具と一緒に食べているときはまだいい。かぼちゃやにんじんの甘さに、味がいろいろごまかされるからだ。

 だが、ひとたびソースの部分だけを食べると、何か苦い気がする。多分、他人が食べたらもう口をつけないだろう。


 なんだかんだでこの腐敗しかけ牛乳プロデュースのグラタンを一皿食べ終えた。が、まだまだたくさんあるからお替りしなさい、とばかりに鍋にはベースとなったクリームシチューが残っている。

 こいつを消費しきらなければ、次の料理に進めない。さてどうしたものか。

 ここでもう一つ、様々な味を隠す料理を思い出す。カレーだ。だが、クリームシチューからカレーに転向するのは少々危険な気がする。とりあえず、少量作ってみるか。






 そして、ふと不安なことを思い出した。思ったより牛乳を消費するので、もう一本牛乳を買っていたのだ。

 未開封だが、消費期限は23日。私はそっと冷蔵庫を閉じた。

ちなみに、今日の出来事そのままなのです。

さて、残った1Lの牛乳は消費することができるのだろうか……


何か、いい消費方法とかありましたら、コメントいただければと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 私も経験ある!と共感できるポイントがあって、頭に場面が想像できて苦戦しながらも挑戦し続ける展開が面白かったです。 [一言] 続きが読みたいです(笑)
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