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零章Ⅰ 魔術師の何度目かのプロローグ

更新は週末まとめてやります。てか平日パソコンに触れないので放置になります。すいません!


で、後何話かこんな感じですのでご了承をば…

 


 しとしとと鬱陶しい雨が降る夜。自分的にはシュギゼラクスの夜。

 全く、これじゃあ台無しじゃないか。

 天気予報くらい見れば良かったと、黒衣の人間は自嘲の笑みを浮かべた。珍しくこちらに来てみれば、唯一の月もすっかり黒い雲に覆われて、その光を拝むこともできない。

 女性にしては高く、男としては平均。そんな背丈の黒坊主は暗い夜闇を周りに従え、眼下に広がる目に痛いネオンの光を背景に置き、神秘的な雰囲気で辺りの空間を支配していた。今、この雨に曝されている、通称〝幽霊ビル〟の屋上に人気は皆無だった。もしここに人がいれば、その空気に触れただけで固まってしまうだろうが。

「折角の引退式に、〝あいつ〟も無粋な事をする」

 ―――――なぁ、少年。


「知るかっ、さっさと〝解除コード〟とやらを渡せっ!」

 

 息を切らして呼吸を乱した、まだ小学2、3年、まだランドセルの方が大きいのではと思われる少年。その少年に黒坊主はにやにやと実に楽しげに声を掛ける。

 そう、この場には〝普通の人間〟なら〝思考もできずに硬直するか近寄れない〟という情報を書き込んであるのだ。

 つまり、このまだ幼い、少女と言った方が適切な容姿を持つ少年は〝人間ではない〟か〝普通ではない〟のだ。

「いや、実に早かったじゃないか。後365日は掛かると思ってほれ。洗いざらい本屋とTU●AYAに強襲を掛けてきたのに」

「やっぱりあんたかっ、変態本ばっか買占めやがって! この変態! 俺を舐めるなよっ、あんだけ痕跡を残して、遊んでんだろっ」

 突如黒坊主の背後に現れた如何わしい本の山とDVDに軽蔑の視線を向けつつ、全身ぐっしょりと雨に濡れた少年は「やれやれ」のポーズをする馬鹿に小石を投げ付ける。これまた桁外れの威力とスピードなのだが、黒坊主は器用に本で弾く。これまた人外のスピードである。

 黒坊主は思う。

 遊ぶ? とんでもない。本当に〝この世界から消失〟するつもりでこの場にいるのである。至って入念に、しかも≪深淵の魔導師≫と名高いこの自分が、この幼い少年に対して本気になったのである。しかもこの少年は本気の自分を遊んでいるという。

 多分気づいていないのだ。

 この少年は、己の非凡さを認識してはいない。そしてまた、その片割れの危うさも。

「いいから早く寄こせっ、あいつが…また暴走する!」

 〝暴走〟という単語に、どれだけの意味が含まれているのか。この少年は知らないのだろう。

 だから無邪気に接することができるのだ。あの、〝最強〟の名を欲しいままにした狂戦士を、意図的にでは無いにしろ、一撃で葬った片割れに。そう、口元に笑みさえ浮かべて罪を犯した者に。


 「力が欲しいか、少年」


 その片割れの、背中を見失わないだけの力が。

 あの〝化け物〟に、呑み込まれないだけの力が。

 そしてまた、その片割れの少年は言うのだろう。悩む余地すら無く、彼からすれば片割れを守ることが最優先事項なのだから。

「くれるなら貰ってやるさ。でも、それよりコードを渡せっ」

 ほら、最強の力より片割れを取る。だからこそこの少年は受け継がねばならない。それが過酷な使命を継ぐことになろうとも。

「欲しいのならばくれてやろう。〝最強のケータイ魔導師〟の称号と共に」

「はぁっ!? 何いって――」

 精神深層世界よりデバイス端末との通信機能を放棄、破棄。継承者の精神情報とデバイス番号の融合。完全な形での継承を認定、許可。

 〝実行〟の二文字を黒い携帯電話に打ち込むと同時に、黒い雨雲が、世界が灰色に染まっていく。金色のオーロラが灰色の空に掛かり、それがどんどん広がっていくのが分かる。あまりに巨大。あまりに強い。黒坊主は心の中でほくそ笑む。あぁ、これだから傍観者はやめられないのだ。

 心底恐ろしい存在も、目の前の不可思議な存在も。全部特等の観客席から見ることができるのだ。こんなに楽しいことはないだろう? 少年。

「暴走……今回、でかくないか…」

「さぁな。ほれ、持ってけ少年。お前の力だ」

 雨粒までもが律儀に動きを止める中、黒い携帯は重力に従い、少年の手の中に収まる。ピシッ、と空に切れ目ができる。

 少年はその様子を愕然と見つめた後、溜息をつくと画面を開いた。

「理由はわかんね―けど、どうせあんたの仕業だろ? 手伝えよな」

「無理だ」

「……等々ボケたか。よし、老人を労わってさっさと地獄なり冥府なり送ってやるからそこを動くなよこのボケ老人」

 こめかみを押さえる小学生に、黒坊主は冗談のように気軽に。しかしさらっと大変なことを口にする。

「あぁ、魔術師引退してちょっとばかし〝神様〟ってのに転職しようと思ってな。てことでここらの管理はお前の仕事になるのでそこんとこよろ」

「……とうとう頭沸いたかこのボケ」

「〝魔術師〟のお前が何を言うか。生まれてこのかた非日常の中心にいたくせに。神とも何人か知り合いいるんじゃないか?」

「中心はあいつだっ、つーかあんな狂人共なんか知らん!」

 知り合っているらしい。本当に非常識な交友関係を築いている少年である。これで悪魔やらドラゴンやらとも友達なのだから世話ない。くくっ、と可笑しそうににやける黒坊主に少年はまた小石を投げ付ける。何の動作もしない黒坊主を見て、少年は心中ガッツポーズを作る。

「残念賞~。だが的当てとしては100点だな。脳天。一般人なら死んどるぞ」

 霞のように薄らいだ黒坊主の影を見て、少年はやっと気づく。この馬鹿魔導師は、自らの〝存在消去〟をすでに〝入力済み〟なのだ。

「んなっ、アホかこの厨二病患者っ! 死ぬ気かよ!」

 画面の数式が青い光となって少年に纏わりつくが、やがて霧散して消える。

「無駄だ馬鹿弟子。神数人がかりで〝対お前用〟のロックを掛けている。後10秒じゃお前とて解けまい。」

 足元から空気に溶けていく黒坊主を、少年は茫然と見送る。こいつには人間らしい所もあるのだがなぁ。双子揃って厄介なもんだ。

「さらばだ弟子よ。赴任先から面白い奴らは任せてやるから頑張れよ」

「――――いるかぁぁあっ、この馬鹿師――!」

 最後に光の輪を残して消えた黒坊主と、少年は「とっととクタバレ――!!」という罵声で別れを交わす。最後までにやけ顔を崩さなかった師匠との思い出を振り返る暇はない。というかなんで二、三発殴らなかった後悔しそうなのでやめておく。

 師に贈られた黒一色の携帯電話と白いイヤホンを繋ぎ、一度目を閉じる。


 「さて、不本意だけど初仕事と行きますか…」


 次に目を開いた時少年の目に映ったのは、いつもより鮮明に見える、世界の血脈たちがドクドクと脈うっていた。



……駄文で失礼します。ごめんなさい。

文才欲しいなー。落ち着いたら改善します。

………たぶん。

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