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神殺しの龍拳  作者: キト
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1話

聖遺物戦争。

それは神の死後。世界各国が聖遺物を巡って争った世界規模の大戦争。

聖遺物とは、


・世界を脅かす禁忌の魔法


が封印されている危険物である。

それらを巡って世界は軍拡競争へ突入。

東国は特殊工作・暗殺・潜入によって対抗する...










幻暦2044年7月20日(大領帝国都市部)




通勤時間の跡音に重なって蝉の音が聞こえる

駅の入り口近く


暑さのせいか、いつものまっすぐ続く石のタイルの道が無限に続くように見えてしまう

通りには店と並ぶように木々が植えられている

すぐ上を見渡せば企業のビル群が見える


クーラーの効いた店の前を通り過ぎ、一瞬だけ涼しさと暑さが交わった時


ふと、青空を見上げる

飛行機が一機空を飛んでいる。

まぶしくてよく見えないが

飛行機から何かが落ちてゆくのが見えた

その時点で


逃げるべきだったのだ。






++++++++++++++++++++






とある旅客機のメインドアをこじ開けようとする狂った白髪の少女と客室乗務員が言いあう

奥まで座席が続き、そこにぽつぽつと人が座りザワザワと話し声が聞こえる

その話し声は不安にあふれていた。


客室乗務員が金切声をあげる


「お客様落ち着いてください!!どうされましたか?!」


乗客たちのどこか不安げな空気が流れる


少女は己の拳を強く握りなおし、再び客室乗務員の静止を無視して歩み出す


待て

焦っていけない。

ここを突破する方法はひとつ...


力だっっっ!!


客室乗務員がパタンと気絶する


慣れた手つきで少女は飛行機のドアを開ける


ドアを開ける時のわずかな隙間から空気が漏れてくる

そうすると勢いよく青空へと吸い込まれる

頭を下にして

重力に身を任せる

巨大な入道雲の上

明るい太陽がこむぎを照らす


少女が地平線と垂直になったその瞬間

一気空を突き抜ける。


この世界では雨が降るというが


違う


私が雨に降るのだ。


雲を通り抜け街が見えてきたと思うと

熱い空気が彼女に触れた瞬間





会議中のビル目掛けて高速で降下し、ビルを貫通。

窓ガラスが割れ

ビルは粉々に

割れた窓ガラスは太陽を反射してキラキラと舞い落ちる

直後ビルは大きく揺れ、街を1つ揺らすような衝撃が走る

まるで隕石が落ちてきたかのように


なんと粉砕されたビルの下では落下した少女が金のリングを手にし、着地していた。

金のリングが輝き、太陽光を反射する

少女が脚に力を入れる


足首。ふくらはぎ。太もも。腹筋。必要な筋肉を全て駆動させる。


重力は彼女に答える


YESだ。と


一瞬で少女はすぐに見えない程遠くへ移動しまるで消滅したかのよう。

飛行機から落下し、逃走するまで


この間《《わずか7秒》》。


++++++++++++++++++


大領帝国特殊部隊員はその姿に呆気を取られていた

かつて会議をしていたはずだった場所はただの風穴に....

壁沿いに立っていた特殊部隊員達は刹那にして消えた護衛対象の行方を探る

エアコンの効いていた会議室の空気を窓ガラスが割れ、熱い空気が侵食する


「は...はぁ....!?」


「何...今の....」


「あのばっけもん!!」


「あれは《禁忌の魔法》が封印されてる聖遺物だぞ...!?」


特殊部隊員達が少女を目で追いながら壁に腰掛けている


こいつら見えてないみたいだなー....あいつ

護衛対象を持った要人を殺して、その瞬間にポケットから護衛対象を盗った...

あの一瞬で要人を殺して、聖遺物を奪い去る。

恐らくできるのだろう。《《あいつ》》であれば。


++++++++++++++++++


逃走した少女は森の深くに入り、小さな洞窟の入口へと来た

洞窟の入り口にはうっすらコケが生えており、木々の間から風が通る比較的涼しい環境のようだ

木陰の下には二人の少女たちが彼女の帰りを待ていたようだ。


「おかえり~♡こむぎちゃ~ん♡」


甘いピンク色の長髪と瞳の少女が少し弾むようなしぐさでこむぎを待ち構える

こむぎの頭にタオルをかけながら言う


「便利だね~身体強化魔法♡」


こむぎがクタクタに疲れ、渡されたタオルで額の汗を拭きながら言う。

そのタオルは少し冷たく、こんな蒸し暑い日には十分だ。

あふれる太陽の光が岩肌に木々の葉の影を落とす


「はぁ...疲れた...ねぇりんな...?飲み物なぁい?」


りんなが水の入ったペットボトルを渡しながら言う


「あるよ~♡今回大手柄だね♡」


優しく微笑みかけるりんなの笑顔にはこむぎへの心配と気遣いであふれていた。

こむぎが折りたたみ式の小さな椅子に座り扇風機を顔から浴びる

扇風機の意味があんまりないくらい少し蒸し暑い


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛......」


こむぎの小さな口から発せられるささやかなデスボイスは

扇風機の羽の回転によって、風の抵抗を受ける

もう一人の少女は眉をひそめながらいう

「それ...16にもなってやってる人いるんだ...w」(ニヤニヤ)


こむぎが恥ずかしそうにしながらつぶやく

「はぁ...まあ、悪くはなかったでしょ?(しょう)


翔が言う

「あい。これ。」


折りたたまれた紙を差し出される

翔とこむぎと紙の間に割り込み

りんなが不思議そうな顔で覗き込む

「ん~...?次の任務...?」


こむぎが折りたたまれた紙を開くと、任務内容が書かれている

折りたたまれた紙の見出しには「東国特殊部隊任務要項」と書かれている

内容を要約すると

「大領帝国内の館に侵入し、

令嬢のメイドとしてパーティーに侵入。

パーティー会場にて要人を暗殺」


りんなが汗を拭きながら言う

「ん~...それだけなの?」


翔がハキハキと言う

「まあ、それだけだね。

でも何より難しいのは館のメイドになることよりも、

信頼を築いてパーティーに参加することだよ。」


こむぎが虚ろな目で言う

「まぁーた...任務かよ...」


翔が荷物を片付けながら言う

どうしてわざわざ持ってきたのかわからない大荷物だが、正直今はそんなことどうでもいい、


「それじゃあ帰りますか」

「だね~♡」


こうして一行は東国内の軍事施設へと帰還し、今回の任務は終了する


+++++++++++++++++


国境沿いの軍施設にて

部屋に入ると涼しい空気に触れて汗ばんだ肌が冷える

生体認証ゲートが開き三人組が入ってくる


こむぎが暑そうに服をヒラヒラとふる

「ふあぁぁぁぁ....涼しい...」


りんながこむぎの替えの服を持ってきて座り込んだこむぎの顔を覗き込みながら言う

「大丈夫??こむぎちゃん1人で着替えれるかなぁ...?」

「着替えれるわ!!」


こむぎが間髪入れずに反応するとりんなが残念そうにする

そうしているうちに翔は上着を着たまま足を組んで椅子座りながらスマホを見ていた

軍服姿の軍人や看護師が忙しく動き回る


こむぎが不思議そうに質問する

「翔...汗かかないの?」


翔がスマホから目を離さずに言う

「そう...私あんまり汗かかないの...」


こむぎが着替え終えると部屋に戻ろうと歩く


りんなが口角をあげて話かける

「明日の任務の潜入方法。いいこと思いついたの♡」


こむぎが無表情で振り向かずに言う

「分かった...じゃあ頼むね....」


「あ、失敗したら死ぬよ。」




......あぁそう。



「私、16年間死んだことないから。」

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