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安楽死

作者: 咲乃
掲載日:2026/01/15

皆さんに考えて頂きたいことがある。

「安楽死」についてだ。

 楽に死ねる。そう書いて安楽死。

だが実際に楽なんだろうか?

自分が死ぬってわかっているのは

実は1番恐怖なのではないか。

この街では、半年に1度人を8人殺す。

なぜかって?人口が急激に増えすぎたためだ。

だれもこのような事を望んでいない。

国の決まり。だれも逆らえない。

これは仕方ない。仕方ないんだ。

この街では半年に1度、8人を殺す。

まぁ一種の儀式みたいなものだ。

殺し方は安楽死。

毎回くじ引きで人が決まるため、

街の人は恐怖に怯えている。

しかし、私はこの方法が大嫌いだ。

いや、好きな人もいないだろうけど。

私はこの制度のせいで苦しんだ。

よくお菓子をくれた隣の家のおじいちゃんも、

友達が少なかった私に話しかけてくれたあの子も、

みんなこの制度のせいで死んだんだ。

老若男女関係ない制度のせいで

産まれたばかりの赤子が殺される日もある。

そして明日はその儀式の日だ。

殺される人々はその日の朝8時、

みんなの前で発表されていく。

"その日"が近づくにつれて、

街の人は恐怖に呑まれていく。

死ぬことが決まった8人はより怯えだすんだ。

そりゃそうだ。

自分が死ぬって知ってしまったんだから。

発表されるのは朝8時

殺されるのは夜の8時

この12時間。

殺される人達は自由に過ごせる。

家族に最後の手紙を一生懸命書く人、

好きな人と好きな場所に行く人、

とにかく絶望して何も手につかない人、

この12時間彼らはどれほどの恐怖に怯えているのか。

案外、自分が死ぬって分かってるから

心の準備が出来ているのだろうか。

半年に1度私は考える。

「私が選ばれたらどう過ごすのかな」って。


当日が来た。

朝8時、街の人は全員が広場に集まっていた。

緊張が張り詰めたこの空気の中では

息をすることだけで精一杯だった。

しばらくすると市長が来て話し始めた。

「これから87回目の人口調整を行います。」

87回目…これまでに何人の人が殺されたんだ?

国の勝手で殺された人達は

何を思っていたのだろうか。

考えるだけで胸が痛くなった。

選ばれたくない、いや誰も選ばれて欲しくない。

きっと街の人も同じことを考えているはずだ。

そんな事も気にせずに市長が冷淡に話していく。

表情1つも変えずに1人目を発表していった。

いつも挨拶してくれた近所のおばさん、

笑顔で接客してくれたスーパーの店員さん、

注射の時に泣いてる私を励ましてくれた看護師さん、

同級生、国語の先生、産まれたばかりの赤ちゃん、

大好きな幼なじみ、そして、私。

私が選ばれた。いや、選ばれてしまった。

この12時間どう過ごせばいいのか??

急すぎて何も考えていなかった。

正確には考えていたけど、答えを出したくなかった。

だって答えを出したら、

自分が死ぬって認めたことになるから。

まだ、認めたくなかった。

でもその間にも時間は過ぎていく。

自分で何をするか決めなくてはいけなかった。

だって残り"12時間"の人生だから。

一日の半分。こんなに大切に感じたことはなかった。

後悔ないように急いで行動に移すことにした。

まず最初に家族全員と友達に手紙を書いた。

自分が今まで思ってたけど

恥ずかしてく言えなかったこと、

感謝の思い、思いつくこと全てを必死にまとめた。

こんなに書くのが大変なら、

もっと言葉で伝えておけばよかった。

次に泣いてる幼なじみを連れて遊園地に行った。

ずっと行きたいね、って話してたのに、

なんで行かなかったんだろうか。

行動に移せば移すほど、後悔しか出てこない。

だけど、最後だから楽しまなくちゃ。

楽しもうにも楽しめない状況で無理に笑いながら

気がつくと夜の7時になっていた。

もう1時間後にはこの世にいないのか。

行き先は天国と地獄どっちかな。

そんな馬鹿なことを考えながら

人生を振り返ることにした。

あまり喋らないけど子供思いなお父さん。

心配性だけど優しくて面白いお母さん。

昔から兄弟思いだったお兄ちゃん。

くだらない事で喧嘩をしたけど仲の良かった妹。

産まれた時から気づけば隣にいた幼なじみ。

些細な事で泣いて、笑って、反抗して。

周りから見たらつまらない人生かもしれないけど

私はそんな自分の人生が大好きでたまらなかった。

そんな事を考えていたら8時のチャイムが鳴った。

あぁ、もう死ぬのか。短かったな。楽しかったな。

私を含む8人は施設に運ばれる。

誰も立ち会えない。

最後は8人で円を作って一斉に殺される。

最後に家族と話したいなぁ。

そんなことを考えてたら自然に涙が出てきた。

あぁ、いやだ、やっぱり死にたくない。

どんなに反抗しても時間は待ってくれない。

もう行かなければならない。

家族と最後の挨拶を交わして施設へ足を向けた。

「行かないで。」

そんな声が聞こえた気がした。

誰が発したのか分からないか細い声。

自分の家族だったかもしれないし、

他の人だったのかもしれない。

振り向いて確認したいけど振り向けない。

家族の姿を見たら戻りたくなっちゃうから。

運命には逆らえない。これは街のためだから。

そう自分に言い聞かせて足を進めた。

施設に入り、8人で円を作った。

疲れてる顔の人もいたし、

諦めた顔をした人もいた。

幼なじみは施設の職員を睨むような

反抗した目つきだった。

自分は今どんな顔をしているのかな。

そんな事を考えていたら、注射が打たれた。

この中に薬が入っている。

そろそろ死ぬ。いや、殺される。

意識が朦朧とし始めた。

苦しい、悲しい、死にたくない、生きたい。

そんな想いも届かず視界は自由が効かなくなった。

視界が途切れる最後に見た職員の顔。

みんな泣いていた。

あぁ、やっぱり誰もこんな事したくないんじゃん。

そんな姿を脳裏に焼き付けていた。

もう一度家族に会いたい。

あの時振り返ってたら後悔しなかったのかな。

そんな余計な事を考えてしまう。

最後に願い事をした。


次生まれ変わるとしたら、

また大好きな家族の元へいきたいです。


私を愛してくれた人、

私が愛していた人たちに会いたいんです。


お願いします。どうかどうか。



視界が途切れ、意識が無くなった。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

読む前と呼んだ後で何か考えは変わりましたか??

最後にもう一度質問しておきます。

「安楽死」

楽に死ねるって書いて安楽死。

本当に楽なんでしょうか??

実は一番辛いんじゃないでしょうか??


私から言えることは一つだけ。


半年後にあなたが選ばれない事を願います。

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