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7話「精霊と王族の血」

「それじゃ、用も済んだようだし私はそろそろいくわね。何かあったら呼んでちょうだい、風があるところなら聞こえるから」

「あ、いやちょっと待ってくれ」

「何?まだ何か?」


早々に立ち去ろうとすると、再び引き止められた。


「一応、今後の予定とか最低限の決まりを伝えておこうと思ってな」

「あぁ……確かにそれはありがたいわね、また追われては敵わないし」

「それは……すまない……」

「別にあなたは悪くないでしょう?」


自分の先祖がしたわけでも、ましては自分でしたわけでもないのに申し訳なさそうに頭を下げる第一王子。


「いや、だが……まぁいい、君にとっては意味のないもののようだしな」

「察してくれて助かるわ。それじゃあ教えてくれる?」

「もちろんだ。じゃあまずは……予定から伝えたほうがいいか。多分今夜、日が沈んだ頃くらいから君のお披露目があるはずだ。君が聖女と呼ばれるのが嫌だと言っていたことはおそらく先に知らされるはずだから安心していい。父と結んだ条約もだ」

「あらそう、それは助かるわね」

「それから、あとは服装だな。普段は今君が着ているような服装でも問題ないが、流石にパーティの最中はドレスを着てもらうことになるだろう」

「正装ってことよね。他の時……客が来た時や王様の前でも着替えたほうがいいかしら」

「そこは聖女……いや魔女様だということで許されるだろう」

「わかったわ」

「ドレスは基本的にはこちらで準備できるから、要望があれば言ってくれ」

「そうねぇ……それなら黒っぽいのがいいわ。あまり目立つ色は好きじゃないの」


それに黒いほうが魔女っぽいじゃない?と微笑むと、彼は大きく頷いた。


「魔女っぽいかどうかはおいておいても、君にはよく似合いそうだ」

「そういえば、それどうにかならない?」

「それ?」

「呼び方よ。君っていうの」

「あぁ……」


彼は申し訳なさそうに頭をかき、少し考えて口を開いた。


「その、どう呼ぶのがいいかと思ってな…先ほどの広間で聞いていた感じだとあまり魔女様と呼ばれたりするのもあまり好きそうでないように感じたが、だからと言って馴れ馴れしく名前で呼ぶのもなと……」

「……あなた、さっき私のこと風音殿って呼んでたじゃない、それじゃダメなの?」

「いいのか……?」


どうにも人の名前にこだわる人間だ。


「……あなた、名前なんだったかしら」

「は……?さっきも名乗ったが……アルフォート・ガーランドだ」

「そ、なら私はあなたをアルと呼ぶわ。だからあなたも私のことは春と呼びなさい。それともエアルの方が呼びやすい?」

「……!あぁ、わかった……これからよろしく頼む、春」

「えぇ、こちらこそ」


軽く手を握り、微笑み合う。

とそこで何かを思い出したようにアルが問いかけてきた。


「あ、なぁ、ここにいるのって精霊……だよな?精霊って目に見えるものなのか?」

「え?まぁそうね、魔力の量とか質にもよるけど……」

「春様春様、ここでの精霊は私たちとはちょっと違いますよ」

「あぁ、そういえばそうだったわね」

「ど、どういうことだ……?」


私とシルフィの話に追いつけなかったアルが疑問を口にする。


「簡単にいえば、この世界の精霊は基本的にこの子のように人型をしていないのよ。アルが聞いてきたのは今まで見えなかったことについてでしょう?この世界にいる多くの精霊はこの子…シルフィの半分もいかないくらいに力が弱いの、人型を取れないくらい。そして精霊の力が弱ければ弱いほど、人間には感じ取れなくなる」

「多分私が力をおさえたらアルフォートさんにも見えなくなりますよー」


ほら、とシルフィは形をと留めたまま力を半分くらいに抑える。


「なるほど……」

「私の精霊の中ではこの子が一番力を持っているから、もしかしたらアルにも見えない精霊もいるかもしれないわね」

「そうなのか……あ、春、」

「まだ何かあるの?」

「精霊を見るにはどのくらいの魔力がいるんだ?俺は正直魔法を使えるくらいの力すら持っていないんだが」

「でしょうね。あなたの魔力は他とは違うもの」

「違う?」

「王族特有の魔力ね。神から少しだけ血を引いている、血筋から本当に尊い人特有の魔力だわ」


王族には基本的に2種類いる。

まずは何かしらの功績を残したり、奪ったりして王族として成り上がった者。

そして、もう一つが私の2つ目の世界……日本にもいた、成る可くして成った神の血を引く王族だ。

日本の天皇やアルは後者に当たる。


「その、王族特有の魔力って他の魔力とどう違うんだ?」

「そうねぇ、あなたにもわかるように説明するなら、普通の魔力というのは粘土のようなものよ。自由に形を変えられるし、特性も研究次第で変えることができる。逆に王族の魔力はただのレンズ。様子を見るだけのものなのよ。あくまで神からの贈り物……というより残り香のようなものだからね」

「つまり俺はどう頑張っても魔法は使えないのか……」


目に見えて落ち込むアル。

もしかしたら魔法というものに憧れていたのかもしれない。


「そんなに落ち込まなくてもいいわよ。だってここには精霊使いの魔女がいるじゃない」

「は……?」

「さぁて、あなたは空の旅はお好きかしら?」


そう彼に笑いかけると、私は戸惑っている彼の手を掴み、空いた手で箒を取り出した。


ここまで読んでくださってありがとうございました。

今回から少し文字数を増やしていますので、読みにくかったり量が多いと感じた方は申し訳ありません。

よければ次回も読んでいただけると嬉しいです。

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