4話「あの日、全てを失った」
ひっそりと裏口から逃げた私たちだったけれど、人間たちはすぐに見つけて追いかけてきた。
「いたぞ!あっちだ!」
いつまで経っても逃げきれない。
元女神として人間を愛しているお母様の願いで、殺して逃げることもできない。
お母様は命の危険を感じたら、やむを得ない場合はしょうがないといっていたけれど、望んでいないことは明らかだったから、私たちは絶対に手を出さない。
けれども、もう私たちの体力は限界だった。
休むことも許されず、増え続ける人間。
限界を感じた頃、動き出したのはお父様だった。
「……俺が時間を稼ぐ」
「シフロさん!?」
「お父様!?」
「……フティ、クリオ、エアル、ヒメリノ。アエラを頼む」
「……わかりました。絶対……後で追いついてくださいね、お父様」
「シフロさん……どうか……死なないで……」
「……あぁ」
そこからは、光などない生活だった。
途中で追いついたお父様は、吸血鬼の再生能力を阻害する聖器で傷を負い、お母様と最後の言葉を交わして眠りについた。
四人で逃げ続けるも、すぐに限界は訪れた。
そうして、お母様は私たちを生かすという約束のもと、自ら処刑台へと登り、殺された。
「ごめんね、最後まで一緒にいてあげられなくて……もっと魔法、教えてあげたかったわ……どうか、生きてね……」
お母様は、首を落とされ殺された。
しかも人間たちはそれだけでは飽き足らず、復活するかもしれないと頭と胴を燃え盛った日の中に放り込んだ。
死体すら残らなかったお母様の墓は、お姉様の提案でお父様を埋めたところに墓石を置くだけになってしまったけれど、たてた。
「……姉さん、これでもう……終わったんだよね……?これからはもう誰も死なないでみんなで暮らせるよね……?」
そう問いかけた妹に、私たちは何も答えられなかった。
そして、ヒメリノもそれ以上聞いてくることはなかった。
どこかできっと、気づいていたのだ。
人間が、魔女と呼んだお母様との約束を守るわけがない……と。
その予想は的中し、お母様の亡くなった翌日には私たちは再び追われることになった。
お姉様とお兄様が足止めをしてくれたけれど、逃げきれず、ヒメリノだけでも逃がそうと私も足止めをすることにした。
けれども人間を傷つけずに大勢の相手をすることは困難で、気づいた時には私の腹部には聖水の塗られた槍が貫通していた。
地に倒れ込み、私がこの世界で最後に目にしたのは力尽きたお兄様を庇い共に倒れ込んだお姉様と、逃げきれず捕まってしまった妹だった。
そしてどうしようもないほどの憎悪と怒りを抱き、私の意識はそこで途切れた。
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