プロローグ「もう誰も知らない話」
これは、遠い遠い昔のこと。
無数にある世界の中のとある一つの星で、魔女狩りが行われていました。
その魔女狩りでは、多くの命が失われました。
不思議な力を持つものを恐れた人間によって行われたその魔女狩りは、人間に扮している悪魔などだけでなく、なんの罪もない人間をもたくさん殺してしまいました。
そんな中で起こったとある女神の追放。
人間を守るために禁忌を犯した女神は、現世に追放された果てに吸血鬼と恋に落ち、結ばれました。
森の中に小さな住居を構え、子供を産み、ひっそりと幸せに暮らすこととなりました。
しかし、魔女狩りの手は例外なく彼女たちの元へも伸びてきました。
父親である吸血鬼は妻と子供達を守るために戦い、元女神は子供達に手を出さないという約束で自ら処刑台に登りました。
残された四人の子供達は両親を失った悲しみを抱えながらも、母親が命と引き換えに贈ってくれた平穏を生きていくと決意しました。
けれども人間は、元女神との約束を破り、子供達を襲いました。
生き残ったのはたった一人だけ。
父を失い、母を失い、姉を失い、兄を失い、妹を失い、独りになってしまった少女。
彼女は嘆き、悲しみ、絶望し、そして……怒った。
魔法を使うだけでなく、精霊使いとしての力も持ったその魔女は、復讐ができるほどの力を持ちながらもその世界から姿を消しました。
亡き母親とした一つの約束、どんなことがあっても人間を傷つけてはいけないという約束を守って。
その後彼女がどこへ消えたのか、その行方を知るものは誰もいない。




