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おこじん様

 とある田舎の集落で聞いた話。


 その集落では、多くの家の裏手に「おこじんさま」を祀る祠があった。

「おこじんさま」とは「荒神さま」の訛りらしい。その名のとおり、気性が荒くすぐ祟る神として、その集落では知られていた。

 ないがしろにしたり気に入らないことをすると、すぐに怒る。なので多くの家では仏壇にするのと同じように、毎朝簡単なお供えをしているそうだ。

 しかし困るのは、「おこじんさま」がどんなことで怒るのか、人間には分かりづらいことだった。

 こんな話を聞いた。

 隣県から嫁いできたある新妻は「おこじんさま」のことを知らなかったため、姑からお世話の仕方を教わった。毎朝祠の周囲を簡単に掃除し、その後水を一杯お供えする。姑から言われたことはそれだけだった。

 しかし新妻は、祠の裏にぼうぼうと生い茂るススキが気になった。これでは虫や蛇が湧くかもしれないし、なにより神さまに対して失礼だろう。そこで、気を利かせてそのススキをすべて刈り取った。したことをひけらかすつもりもなかったので、そのことは姑には知らせなかった。

 その晩、新妻は高熱を出し寝込んでしまった。熱は三日続いたが、四日目の朝にはピタリと下がった。姑が、怒りと安堵の入り混じった顔で言った。

「あんた、おこじんさまの裏のススキを刈ったやろ。あそこは、神様の遊び場やったんよ。余計なことをしたから、お怒りに触れたんよ」

 あんな草むらでいったいどんな遊びをするのか、と新妻は理不尽さに呆れたという。


 ・・・・・・・・・


「その出来事のあったせいで、勝手に物事を進めてはいけないと、肝に命じましたよ。なんでも姑にお伺いを立ててね。おかげさまで、まあまあ良好な嫁姑関係が築けたと思いますよ」

 元新妻は、ニコニコとそう話してくれた。

「おこじんさまの祠は、まだあるんですか?」

「もちろん。でも、掃除をして水をお供えしたら、あとはほったらかしです。近所の人は昔、屋根に生えた雑草を抜いたら、それが神様のお気に入りだったとかで、やっぱり祟られたそうですから。触らぬ神に祟りなし、ってね」

 わたしは苦笑しながら、「理不尽だなぁ」という言葉をなんとか飲み込んだ。


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