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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

復讐シリーズ「復讐」

作者: 菅谷欣一

笑っている、元気に笑顔で、私の娘は笑っている。うす暗い部屋の中でビデオカメラで撮影した娘のホームビデオの映像を静かに座って見つめる中年の男性。河本(山城新伍)は映像に映る少女は康子、この時は6歳のお祝いのビデオだ。隣には妻がいて、娘と笑い合っている。滑り台を笑顔で滑る娘の映像が映り、撮っている自分の前に走って来た途中で妻と交代して彼は娘と追いかけっこをする。そんな楽しいかった思い出だ。河本はテレビを消すと、彼の眼鏡越しの目には涙がにじんでいた。このホームビデオを撮影した後、彼の1人娘は学校の帰りに誘拐されて、脅迫も来ないうちに5週間後、絞殺死体であの公園のベンチで発見された。その後犯人は逮捕されたがたったの12年の刑で済んだ。それが娘を奪った犯人の代償だった。

河本はよれよれのスーツ姿でマンションを出て行き、いつものように、いつもの時間に、娘の公園のベンチに行く。

公園は夕暮れの頃で人はあまり少なかったが、まだ7歳や6歳の子供が遊んでいたりしている。彼はベンチに行き前に立つと目をつぶり手を合わせる。しばらくして目を開け帰ろうとした時、彼の隣に男が同じように手を合わせていた。彼は男に少しびっくりした。男は彼に気付くと軽く頭を下げて言う「河本さん…河本教授ですか?」と聞く。河本は男に「教授は辞めました。あなたは?」と名を聞く。

その男は髪は角刈りで目には黒レンズのサングラスをかけて、ワイシャツとグレーのズボンを覆うようにブラウンのジャケットを着て、身長は大柄だった。

男は「私は徳松と言う者です」と徳松(菅原文太)は自己紹介をする。徳松は河本に「河本さん、あなた復讐したいですか?」とふいに言う。「え…」と彼の言葉に困惑すると、徳松は「わたしも大切な人を失いました。あなたはもし、仇を獲れるなら復讐したいですか?」と言い、脇から名刺を出すと「答えが決まったら電話をください」と言い挨拶して帰って行く。彼がいなくなった後河本は名刺を持ちながら1人たたずんでいた。


河本はその後マンションの自宅に帰ってきた。かつては妻と娘がいたが、今は2人はいない、妻とは5年前に離婚したのだ。彼は大学で教授をしていた。誰からにも慕われていたがあの悲劇の後から、河本は仕事にも支障をきたすようになり、辞めて部屋にこもるようになった。立ち直れない彼を支えることに疲れた妻は家を出た。

スーツを脱ぎシャツ姿になると彼はいつものように部屋の中でビデオテープを再生する。彼は映像の中の娘を静かに観ていた。同じところで涙腺が流れて河本は泣き崩れる。目をつぶるとその時が蘇る。楽しかったあの頃の思い出が。河本は泣き続けた。だが、今度はそんな彼の中に言葉が投げかけられた「復讐したいですか?」あの時、徳松と名乗る男の言葉だ。復讐…復讐なんて…できない…できないさ。あの時は真剣に受け止めなかったが、今彼は映像を観て娘の笑顔の顔を見て、置いているスーツのジャケットのポケットから名刺を出す。それは徳松の渡してくれた名刺だ。名刺には電話番号が載っていた。もし、本当にできるなら…復讐が…。そう思った彼は電話機に番号を打ち込む。しばらくして電話が繋がる「もしもし、徳松さんですか?河本です、あの、徳松さん本当ですか」と言うと「徳松です。河本さん…決断できましたか」と河本はこういう「復讐できますか?」と。あの時の徳松の言った「復讐したいですか?」に返すように出た「復讐できますか?」の言葉には河本の一筋の希望があった。すると彼からは「明日、衣服を入れたカバンや娘さんのビデオや思い出の品を持って、名刺の住所に来てください。お待ちしてます」と言われて電話は切れた。電話が終わり受話器を戻し河本はしばらく何も言わずその場に立っていた。その日は何故かぐっすりと眠れた。


翌日、河本は徳松に言われた通り衣服とビデオをカバンに詰め込んでタクシーで徳松の名刺の住所に向かう。タクシーは住宅地を進み、その内街に入る。しばらくしてビルの前に留まる。運転手に勘定をして河本はカバンを持ちながら、ビルに入って行く。ビルのインターホンを押して「河本です。来ました」と言うと「徳松です。入ったら、エレベーターで4階の事務所に来てください。鍵は開いてます」と言い終わると、閉まっていた自動ドアが開く。河本は中に入りエレベーターで4階に上がり、事務所の前に行くと鍵はかかってなかった。そのまま入ると、徳松が座っていた。部屋は静かだ。徳松は河本に挨拶して「徳松です。私の指示にしたえますか?河本さん」と徳松は河本が自分の指示を従って行動できるかどうか聞くと、彼は頷き「従う」と言う。徳松は「準備は出来ていますか河本さん?」と聞くと「出来ている。始めよう」と言う。河本は徳松の言う事なら何でも聞きどんな事でもやろうと覚悟を決めていた。


河本はその後、徳松の持っている車に乗り込む。河本は後ろの席に荷物をのせて、助手席に乗り、車は出発する。車は走る中で運転をしている徳松に河本は「いつ始めるんだ?」と聞くと前を見ながら徳松は「これから、私の倉庫に行きます。話はまたそこでします」と言う。徳松はサングラスをしていて表情はわからない。車は道路を走り、トンネルを抜けて山道を上がって行く。山道を走り、次第に街が見えなくなるぐらい山奥の奥の中を走って行く。しばらくすると車は山奥の中に到着する。

2人は車から降りる、徳松は河本に車のトランクの鍵を渡して「トランクを開けてください」と言う。河本は鍵でトランクを開けると中には両手と両足を縛られたやくざ者な男が口も縛られて鼻で息ができる状態でいた。男(川谷拓三)は何か言いたげだ。徳松はナイフを取り出すと男の足の縄を切り、トランクから出させ背中にナイフを突きつけ「歩け」と冷たく言い、男を倉庫まで歩かせる。河本は困惑しながらついて行く。倉庫の中に入ると徳松は男の右足に手錠をかけて両手の縄を切り、ガムテープをはがすと男は彼らに「なにすんなら!わしは天政会の者やぞ!こんな事して、組が黙ってないぞ!今すぐ解放せえ!」と怒鳴るが徳松は脇からリボルバーを出すと上に向かって発砲する。パンッ!と銃声がなり徳松は男に向け「騒ぎたいなら、騒げ。だがここには誰も来ない」と言いリボルバーのシリンダーを回転させて弾を装填し直して銃を河本に渡すと「河本さん。いまからこいつを殺してください」と言う。「なに…何言うてんな!なんじゃいおまえら!?」と男が唸る中、河本は「なんで…」と徳松に聞く。徳松は「河本さん。あんたは本当に復讐がしたいのですか?」と言い「復讐する覚悟がある、私の指示は聞くと頷きましたね」と言い「では、撃ってください。あの的を」と男を指さして冷たく言う。河本は「なんで、どうして…どうして殺さないといけない」と言うが、徳松は「出来ないのですか?あいつはあなたの娘を殺した男ですよ」と言う。これに河本は反応し「本当か、本当か今の言葉」と聞くと徳松は「信用できないなら、私をここで殺してください」と言う。河本は黙って徳松から銃を右手で受け取ると、片手で銃を男に向ける。「わあ…ああああ!なにすんない!やめや!」と男がビビりわめく。河本が片目を閉じると、視界に娘の顔が蘇る。指に少しずつ体重をかけて引き金を引く。男は「ああああああ!」と絶叫すると、その瞬間、ドキュン!ドキュン!ドキュン!ドンッ!ドンッ!ドキュン!と河本は6発を発射させて6発中4発は外したが、2発は男の体と脚に当たり、男は倒れ込み痛みでのたうち回る。後にはカチッカチッカチッと弾切れの銃の音が聞こえている。涙を流している河本に「おめでとう…あんたは人が殺せる」と言い、男に近づくと銃を取り出して、男の頭に当て殺す。河本は自分の手が揺れていることに気が付くと徳松に銃を返して外に出て行きその辺の木の前で嘔吐した。手は痺れて、少し視界がぼやけ息が荒げていたが少しずつ呼吸を落ち着かせて抑える。


しばらくして落ち着きを取り戻し倉庫に戻ると、徳松が男をジッパー付きのカバンに入れてジッパーを閉じていた。彼は河本に気付き「これから、死体を焼却します。重いので手伝ってください」と言うと河本は頷き、彼は足を持ち徳松は上半身を持つと、2人は倉庫の外の隣にある焼却所に運び火をつけて死体を燃やした。煙突から煙が出て、肉の焼ける臭いが経ちこむ。しばらくして、死体は骨になり、2人は骨を山の土の中に埋めた。倉庫に戻ると河本は徳松に「徳松さん。あんた…どうしてそこまでにして俺に…」と言うと徳松は「ただの善意ですよ」と言い「河本さん、これから5週間に訓練をします。復讐の準備です。できますか」と聞くと河本は彼の真剣な眼を見て頷き「やる、俺どんなことでもやってみせるよ」と言う。「わかりました。では明日から始めます。後で部屋に案内します。今日はゆっくりと休んでください」と徳松は彼を部屋に案内する。部屋の中は殺風景で布団とテレビと部屋の真ん中に机が置いている環境だ。河本は徳松と別れ、部屋に座り次第に疲れで布団に入り眠る。今日もよく眠れた。


翌日から朝の6時になると河本と徳松は山道を10分間ランニングする。7時にアジトに戻ると朝食を済ませて、銃の組み立てから外で射撃の練習をする。12時にお昼が終わると、また銃の練習に入りまた体を鍛える。夜になると河本は部屋で家族のビデオを見て、銃の手入れをしていた。鏡ように反射するように磨き、弾詰まりしないように油をさしたりしながら、河本は娘の顔や思い出が彼の燃料になっていた。そんな復讐の為の5週間は長くもなく遅くもなく進んで行く。

5週間後、朝食の席で、徳松は河本に男を隠し撮りした写真を複数見せる。「この男は」と聞かれ「彼は岩下です。家を持ち妻と5歳になる息子がいます」と徳松は岩下が家族といる姿を撮った写真を指差して説明して、「今はしがない工場の社員ですが、かれは5年前に刑務所を12年の刑期を終えて出所しました」と徳松が言った時、河本の表情が変わり「まさかこいつが…」と聞くと「はい岩下は嫁の名字でかつては早川でした。12年間服役して更生が認められ工場に就職が出来て5年前に結婚していました」と徳松の言葉を聞き。河本は岩下→早川の写真を見て「こいつが…こいつが康子を…」とつぶやき、「徳松さん、今こいつは」と聞くと徳松は頷き「今ものうのうと生活しています」と言い「河本さん今日街に行きます。来てくれますね」と言うと河本は岩下の写真を持ち「ああ、行こう」と言う。

朝食を済ませて片付けをして、徳松は河本を車に乗せて街に行く。街に入り、工場地帯に入る。工場に到着する頃は夕方で、社員たちが帰るところだ。徳松はカメラを河本に渡す。河本がのぞき込むと工場の入り口から大柄な男が仲間と楽しく会話しながら歩いている姿が見えた。「あれが岩下です」と河本は徳松に教えられてもう一度じっくりと覗く。早川(室田日出男)は彼らに気付かずまだ楽しく会話してそのままバス停に並ぶとバスがやってきてそのまま乗り込む。バスが走るのを見失わないように車は尾行する。車の中で徳松は「河本さんいつ始めます」と聞くと河本は「始められるか」と言うと「いつでも」と言われ「今夜はじめよう」

と決行をすると言う。


その夜、早川は夕食時のあまり人のいない道を1人で歩いていると、「すいませんが、住所はここであっていますか?」と男が声をかける。男(徳松)は地図を見せて「大丈夫でしょうか」と聞いてくる早川は地図を一緒に見て「ああ、ここなら方角が反対だ。むこうだよ」と後ろを向いて教えるといきなり、体中に痛みが電気のように走った。「うぅ…」と声を上げそうなところを徳松が口にガムテープをかけさらにスタンガンを体に当てて気絶させる。そこに車がやってきて河本が降りてトランクを開けて2人で早川を入れて、そのまま走り去る。

「やったな!徳松さん、とうとうやったよ!」と喜ぶ河本に運転する、徳松は喜ばずに「いや、まだですよ」と言うと河本は「そうだった…これからだな」と言うがやはり喜ばずにはいられなかった。


あれからどれぐらいが経ったのか、早川はあの時、突然後ろから強いショックを与えられた記憶が新しかった。彼がうすぼんやりと眼を覚ますと、そこはどこか分からない倉庫の中だ。すぐに立ち上がろうとすると両手が手錠で抑えられていた。足は靴を脱がされていた為裸足でコンクリートの地面が冷たかった。じゃらじゃらと手錠の鎖が音が鳴る中で彼は必死に暴れ「おい!誰か!助けて、助けてくれ!」と助けを呼ぶが誰も来なかった。また叫んでいると「目覚めたか」と2人組の男達がやって来る。1人はわからないが、隣の男には記憶がある。あの時に道を聞いてきたあいつだ。「お前…なんでだ…なんでこんなことをする。なんでだ!」と早川は今にも男に詰め寄ろうとするが、両手の手錠が彼の動きを止める。するともう1人の男が近づいて来て1枚の少女の写真を見せて言う「思い出したか、俺の娘だ。お前が殺した」と言われるが早川は「そんな子供は知らない!誰だ!」と言い怒鳴ると、河本は写真をしまうと、突然早川に詰め寄り殴ろうとする。それを徳松を抑えて「落ち着け河本、落ち着くんだ。落ち着け!」と落ち着かせると、早川に対して「これから、お前は河本さんが味わった5年間を味わってもらう。今日は休め明日から始めよう」と言うと徳松は河本を連れて去って行く。「ふざけるな!おい!待てよ、出せよ!ここから出せ!」と叫ぶ早川を無視して2人は出て行く。河本は徳松に「徳松さん、さっきはごめん。あれは少し相手にはっぱかけただけ、演技だよ」と言うと徳松は「河本さん、相手は逃げない、いつでも殺せるでもそれじゃ娘さんが浮かばれん。少しずつだ。少しずつ相手に味わってもらうんだ。いいか?」と言うと河本は頷き「わかった」と言う。その後、早川は苦しそうに「なあ、トイレ…トイレに連れてってくれよ…トイレだよ!大だよ!」とトイレに行きたいと叫び「河本…さんだっけ?あんたの気持ちはわかるよ、でも勘違いだよ。頼む我慢できないよ」と言いしばらくして「あ…ああああ…」と声をか細く漏らす。それを監視カメラで見ている河本は隣で家族のビデオを再生しながら、苦しむ相手の声を聞きながら、自分の声を殺しながら笑っていた。

翌日、ぐったりしている早川の元に徳松と河本がやってきて「おはよう」と声をかける。気づいた早川は2人を睨んでいる。徳松は「臭いな…部屋の匂いか?」と河本に聞くと河本は「違うよ。こいつだよ」と早川を笑いながら指さして言うと徳松は「じゃあ、洗ってやるか」と言う。

ホースから大量の水がもうスピードで早川にぶつかる。早川は目をつぶり苦しんでいる。その表情を徳松は冷静にホースのスピードを止める事もなく浴びせる。横で河本が笑顔で「おい、脇だよ、脇。お前臭いから体全部洗い流さなきゃ病気になるぞ」と言う。早川は容赦のない放水に泣きそうな顔で苦しそうにいた。「しかしお前の臭いにおいが移りそうだから、俺朝風呂浴びてくるわ」と河本は笑い徳松に別れて去って行く。

河本が風呂上りに戻ると台所で徳松が3つのプレートにサラダ、スクランブルエッグ、ベーコン、そしてロールパンを綺麗にのせていた。「あいつにも食べさせるの?」と河本は徳松に聞き「喜ぶだろうな」と言う。

徳松は食事を持って早川の所にやって来る。早川は徳松に気付き「ありがと…」と両手を伸ばした瞬間、徳松は食事を地べたに落とす。これに早川は涙を笑っているのか泣いているのかわからない声を出すと。徳松はそのままそこのテーブルに置いているポッドにコーヒーを注ぎ「いただきます」と言うと食事を食べ始めている。早川は何とか落ちている中でもきれいな物を探してパンに手を伸ばすとそこに河本が近づき「おい、コーヒーやるよ」と言いそのパン拾い泥水に浸し早川に投げつけて笑う。早川にそれに対して「なんでだ…どうして俺なんだよ!俺が何をした!」とまた怒鳴ると、河本は写真を見せて「思い出した?」と言うが早川は「だから…謝らせてくれて言ってるだろ!頼みます!解放してください!」と頭を下げるが、河本は冷たく笑うと、徳松の座っているテーブルの椅子に座り徳松と食事をしに戻る。早川はこれにただ呆然としてしまう。

食事が終わると、河本は早川の前にテレビを置き、ビデオを再生する。映像には河本の娘が失踪したニュースが報道されていた。早川はこれに気付くと「まさか、あんた娘って…」とつぶやくと河本は「思い出したか」と言うと、いきなりネイルハンマーで早川の左足の親指に振り落とす。突然の痛みに早川は叫ぶと、河本は「苦しいか?岩下さん?ああ、たしか17年前は早川だったね。早川君」と言いまた振り落とす。痛みに早川は叫び、息を荒げながら「待ってくれ、俺は殺したが刑期はしっかりと服役したんだ。反省したんだ…それにもうあれから5年は経ったんだ。止めてくれ」と言うと、河本は「5週間だ…俺の娘は5週間お前に虐待された後で絞殺されたんだ」と言い今度はライターを出すと血が出ている指を炙る。早川はこれに苦しむと河本は「これから、お前は5週間過ごすんだ。よく自分のしたことを考えろ」と言いライターをわざと近づける。火が軽く傷口に当たり、早川は叫ぶ。それをサングラスをかけた徳松は台所で食器を洗い終わり、椅子に座り静かに眺めている。


それから、早川は地獄の日々が始まる。いつもの時間に突然ホースの水を浴びせられ、飯は地べたに落とされ、また河本の家族のビデオを見せられながら、痛んでない指をハンマーで潰されて、出血しないよう火であぶられる。そんな日々が続く。だが、彼の中では“何故”がいつも頭の中によぎる。何故だ、何故俺がこんな目に。同じ穴のムジナはいくらでもいる。俺は12年間罪を償ったんだ。償いはしたんだ。反省したんだ。それなのに、何故と。しばらくして徳松はテレビをつけて早川に見せるそこには自分が行方不明になっているニュースだった。早川はこれに喜び河本と徳松に言う「見ろ!警察が捜査している。今も俺を探しているんだ。ここが見つかるとお前らは終わるんだ。お前達2人供俺よりもっとくらうぞ」と言うと徳松はテレビを切り「そうだな」と言い「2週間前のニュースではあんたを報道したが、今はどこの局のチャンネルにも載ってないぞ」と言うと早川は「これって…2週…2週間前の映像…」とつぶやきへたり込んでしまう。河本は「新聞読むか?今日の新聞買ったんだ」と言い早川に新聞を読ませるがどこにも自分の調査は載っていない。そんな彼の表情を河本は笑っている。徳松は「お昼に弁当作ったんだ。食えよ」と言い握り飯2つののった皿を早川の前に優しく置いてやると「毒だろ…毒でも入れてんだろ!このクズ共、死ね!死ね死んじまえ!」と怒鳴る。徳松は皿の握り飯を1つ取ると口に入れるよく噛み飲み込み「毒は入ってないが、いらないならそれで構わん」と言いそのまま持って行ってしまう。それに早川はまたへたり込んで泣き出す。その夜、河本は部屋の中で家族のビデオを再生して映る娘にこう言う「康子…もうすぐだ…もうすぐだから…もうすぐだから」と銃を握りながらそう言う。


あれから5週間が経過して、早川は突然、起こされる。徳松が目の前に食事を置いて自分の手錠の鎖を開けてくれていた。「おめでとう、あんたは5週間耐えた。さあ、食べろ。食べたら安全な場所まで逃がしてやる。後はお前次第で河本から逃げきるんだ」と言う。早川は徳松の言葉に何も言わなかったが、救いの手の如く、置かれていた食事に無我夢中にほおばる。食事が終わると、徳松は早川の手を引き倉庫を出て行き、安全な場所まで案内する。しばらくすると徳松は早川を止めるとそこに河本がスコップを持ってやって来て。スコップを地面に刺す。早川が徳松を見ると徳松は銃を彼に突きつけ「あれで穴を掘るんだ」と命令する。

それから早川は穴を掘り続けていた。小さい穴がその内大きく深い穴になると、徳松は「もういいかこのぐらいで」と河本に聞くと彼は頷き「ああ」と言う。これに早川「あああ、謝る。康子…康子さんに手をかけたことは反省している。今度こそ全身全霊で償う。だから頼む。助けて…助けてください!河本さん!徳松さん!」と穴の中で早川は必死に頭を下げて許しをこうが次の瞬間、河本は銃を発射し、彼の肩に銃弾を当てる。早川はそのまま倒れると、それを徳松が彼の体に向かって土をスコップで投げつける。「待ってくれ、ゴメン…なさい…ごめんなさい!許してください!許してください!」と叫ぶ彼を無視して徳松はひたすら土をかぶせる。しばらくすると土は彼を覆い被さり、そこには彼の姿も声も聞こえずただの地面になっていた。早川はかつて河本の娘の首を絞め殺した時の娘の痛みや苦しみを味わい死んだ。


早川を殺した後、倉庫に戻る際に河本は徳松に「徳松さん。本当にいままでありがとう、やっと復讐が果たせたよ。これで康子の死が報われる。ありがとう」と言い頭を下げると。徳松は「いや、まだだ。まだ終わってない」と言うと突然銃を抜き、銃を河本の体に発砲する。それは注射器が発射され、彼の体に当たり河本は注射でそのまま眠りに堕ちてしまう。


しばらくして河本は目を覚ますと、そこは倉庫の中で自分は早川が手錠をかけられていた場所に同じように手錠で身動きをとれない状態だ。そこに徳松は食事を持ってやって来て、河本の前に置き「最後の晩餐だ。味わって食べるんだ」と言う。それに河本は「なんで…なんでだ?徳松さん…あんたどうして」と言うと徳松は目の前のテレビにテープを入れて電源を入れる。砂嵐の後に映像が映るそこには徳松の妻と制服姿の少女が高校の前でカメラに映っていた。「俺の娘だ。名前は聖子」と徳松は言う。「娘は1人の教師のレイプされた。理由は大学の推薦だ。その後、娘はその男と愛人契約で肉体関係をし、最後には男に120万の金で手を切られ。自殺した。たったの120万が娘の価値か?河本さん。いや河本先生」と徳松は河本に言う。河本はこれに思い出す。高校時代の彼はまじめだったが以外にも結婚前は女癖が悪かった。彼はかつて女子生徒から誘惑されて、肉体関係の契約を結びその後、結婚を機にその子とは金で話をつけた。その後、その子が自殺するなんてことは知らなかった。これを思い出した河本に徳松は「思い出したか」と冷たく聞く。これに河本は恐怖し「違う、あれは話をつけたんだ。ましてや自殺なんて知らなかった。本当だ、徳松さん信じてくれ!本当だ!」と言い「それに俺だってその後あんたと同じく苦しんだんだ、康子を失い絶望を味わったんだ。なんでだ。どうして俺だけに…」と言う河本に徳松は「その顔だ」と言う。「顔…」と言うと「絶望のあんたに5年間の苦しみを味わせても楽しくない。ならいっその事、復讐でかつてのあんたに戻らせる方がいいと思った。それだけさ」と言い。「俺は5年間を味わった。5年の苦しみをあんたにも味わせてやる」と徳松はサングラスを外して、河本に言い「あんたは幸運だ。今は警察も誰も俺達の事を知らない。好きなだけ叫べるんだぞ」と言うと立ち上がるとそのまま去って行く。河本はそんな彼に「なあ冗談だろ…徳松さん…何かの冗談だろ?徳松さん!徳松!」と叫ぶ彼を無視して徳松は部屋の電気を消して消える。

徳松の復讐はいつから始まったのか…あの時の出会いかそれともその前かそれはわからない。テレビは砂嵐をひたすら流れ流れ流れ続けるのだった。


「復讐」 終


キャスト


徳松 菅原文太


河本 山城新伍


早川 室田日出男

西条チンピラ川谷拓三


監督・深作欣二








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