ミリアーナの最期
「その後は皆様の知ってるとおりです。姫様は薬と血の呪縛によって操られていただけなのです!!どうかっ!どうか…御慈悲を…」
誰もが半信半疑だった。
今まで見てきた悪女と、彼女が語るミリアーナとでは別人だった。
「きっとあの二人が討たれたいま、洗脳が解けているはずです。姫様に会わせてください。」
その後、全員でミリアーナの牢へ向かうことになった。
アン以外は隠れて様子を見守ることにして…
牢に入ってみるとミリアーナは目覚めていて、ベッドに静かに腰掛けて窓の外を眺めていた。
血が足りてないのだろう。
青白くやつれて、弱っていた。
髪もただおろしているだけでボサボサだ。
けれども、姫は今までとはどこか違う美しさをしていた。
「姫様…」
「…久しぶりね、アン。もう私なんかに関わっちゃだめといったのに…」
アンは大粒の涙をこぼしながら、どうにか言葉を絞り出していた。
「あの時、姫様が逃してくださらなかったら、私は死んでおりました。もう一度、貴方にお会いしたかった。ずっとお礼がしたかった。」
「私は礼を言われるようなことをしてないわ。私は結局、闇に抗えなかった…。でも、そうね。貴方が生きててくれて、幸せそうで良かった。」
今まで見たことのないふわりと笑う姫。
「姫様!貴方は操られていただけです!どうか、私と一緒に静かに余生を過ごしましょう?王様方へ私も説得します!」
「…」
「今のは本当ですか?ミリアーナ様。」
ヒロインが姿を見せると、他の人も続いた。
「なぜ、貴方がたが…?」
元婚約者であった、第一王子が苦しそうに言う。
「…長年、傍で見てきたつもりだ。だからわかる。今の貴方と前の貴方では別人だ。父上にもこのことを伝えれば、貴方の罪は…」
「それはできません。…操られていたといえ私の罪は消えません。奪った命は戻りません。
なにより、あの二人は私を使ってなにかしようとしていた…。きっとまだ何かがあります。私が生きていてはいけません。どうかこのまま裁いてください。」
全員で説得するもミリアーナは決して揺るがなかった。
「やっぱり、貴方たちは優しい。優しすぎる。だからこそ…全ては私の手で終わらせます。」
「何を…?」
ミリアーナはどこからか十字架のついた短剣を取り出した。
普通なら刺したくらいで吸血鬼である彼女が死ぬことはないが、ここまで弱っていたいたら?
「これは私の最初で最後の決断です。私を悪女として死なせてください。生き方は選べなかった。死に方くらい…私が選びます。」
「早く!牢を…!!」
すぐに止めたくても、強力な結界の牢は開かない。
「私はミリアーナ・ディアローズ。これは私の自由です!!」
胸に短剣が突き刺さるのと、牢が開いたのは同時だった。
「ミリアーナ様!!」
ヒロインがミリアーナのもとに駆け寄ると、ミリアーナは言葉を紡いだ。
「ごめんなさい。…ごめんなさい。ありがとう。どうか幸せになって…私を救けてくれてありがとう。」
無邪気な笑顔を浮かべながら、彼女は眠りについた。
…
これが悲劇の悪役令嬢と呼ばれる、彼女の真実だった。
はじめてこのストーリーを見たときは、舞と号泣した。
「ミリアーナ様〜!!今まで悪女だ!最低だ!とか言ってすみませんでした!!めっちゃいい人だ。ってか親二人が最低、クズ!!人でなし〜!ミリアーナ様儚すぎ!美しい、尊い!!幸せになって欲しいのは貴方だよー!!
なんか今までのこと納得いくよね…人形みたいに感情を感じないのは、実際にそうだったからなんだよね。この友情ルートってヒロインとミリアーナ様のってことかな?あぁ~考察が!はずむ!辛い、尊い!!」
舞が限界オタク化してた。
私もミリアーナの境遇には共感できたし、最期には自らの手で、親に縛られていた鎖を断ち切る姿に憧れた。
私にとって一推しのキャラだった。