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悲劇の悪役令嬢 ミリアーナ


そのエンディングは友情ルートでのみ、見ることができる。

攻略キャラ全員の好感度を最高の状態にし、誰も選ばないを選択すると友情ルートへ行くことができる。

このエンディングでは、一人の少女に起きた悲劇の真実が描かれていた。


平和になった街をヒロイン達が全員で歩いていると、修道女が声をかけてきた。


「光の聖女様!!どうか、私の話をお聞きください!姫様は!…ミリアーナ様は悪くないのです。どうか…どうか!御慈悲を!!」


その修道女はディアローズ家の元使用人で、姫様付きの侍女だったという女だった。


「姫様は本当は心優しいお方です。虫すらも殺さずに逃し、奴隷である使用人たちにも優しい…。姫様は操られていただけなのです!!」


誰もがこの侍女も悪女に騙されているだけだと疑う中、ヒロインはその修道女、アンに詳しく話すように求めた。


「ありがとうございます、聖女様!…あれは姫様の十歳の誕生日の数週間前のことです。私が屋敷を歩いていると奥様と旦那様が隠れ話しているところに出くわしました。」


そこで話してた内容は恐ろしいものだった。

元々、姫の両親は姫のことが気に入らなかったのだろう。

姫は優しすぎた。

吸血鬼でありながら…。

アンは姫を操るために二人が計画しているところを聞いてしまったのだ。


「吸血鬼が力に目覚めるのは十歳の誕生日の夜です。吸血鬼になると太陽に弱くなります。それを防ぐ為の太陽克服用の薬の中に、二人は操る薬と吸血衝動を増やす薬を混ぜて姫様に飲ませようとしていたのです!

もちろん操る薬だけでは姫を完璧に操ることはできません。そこで二人は吸血を利用しました。吸血の力を手に入れる夜に、自分より格が上の吸血鬼から授けられた血…正確には生贄の血を飲むということは吸血鬼にとって、意味があることらしく…。二人はその生贄に…私を姫様に殺させようとしていました。そうすることで、姫様の精神を弱め、より操りやすくするために。」


その話が聞き終わるとあわてて、姫様へ話を伝た。


「姫様!!私と一緒に逃げましょう!」

「…アン。お父様もお母様も、やはりそうだったのね。…私は駒でしかないってことでしょうね…」

「姫様…。」

「アン。貴方一人で逃げなさい。」


彼女は冷静にそして覚悟を決めて私に言った。


「そんなこと!できません!!」

「あの人達は私が逃げたら必ず捕まえに来るでしょう。操ってまで完璧に手に入れたい駒なのだから…貴方一人なら逃がせる。」

「なら、逃げた先で王城へ向かい、王様へ事の顛末を話せば…」


姫様は静かに首を振った。


「今の王家…この国にあの二人を倒せる人はいないわ。あの二人の悪事がいまだに裁かれていないのは、証拠がつかめないから。そしてあの二人を捕まえることができないから。

仮に王国とあの二人が戦えば大きな戦争になる。何千何万もの人が死ぬことになる。それは避けなければ…」

「でも、姫様は…?」

「私がすぐに殺されることはないわ。アンが情報も教えてくれたのだし、あらがってみせるわ!だから…大丈夫よ。」


話し合いは次の日まで続いたが、姫様の決意は固かった。


「アン。ここを出たらすぐにゼグルス教会に入って…そこで全てが終わるまで身を隠して。この話は誰にも話さないで…あの人達は少しの情報でも殺しに行く。ゼグルス教会ならランス様がいるわ。あの方は吸血鬼にとって天敵のような人だから、教会の中にさえいればあの二人も気づかない。下手には手出ししてこないわ。」

「私は姫様のために何もできないのですね…」

「違うわ、アン。今まで私に愛情をくれてありがとう。アンが、使用人のみんなが優しくしてくれなかったら、私はあの両親のようになっていたかもしれない…。本当にありがとう。アンは私にとって姉のような存在よ。大好き。」


その後すぐに私はゼグルス教会へと行き、修道女となりました。

ずっと姫様の無事をお祈りして…

姫様の誕生日から数日、手紙が届きました。


愛しのアンヘ

ごめんなさい。この手紙が届いているということは、私は操られてしまったのでしょう。

執事にベスターに私が操られてしまったなら、この手紙を届けるように伝えてたの。

アン。ごめんなさい。どうか自分を責めないで…

大丈夫よ。きっとあの二人を…吸血鬼を倒せる。

真実へ辿り着くものが現れるわ。

アン。貴方にもう一度会いたい。

でもね、それ以上に貴方の幸せを願ってる。

だからどうか、その日が来るまで待っていて。

貴方が幸せに生きてくれることを願っています。

もう、私なんかに関わっちゃだめよ。

さようなら。

            ミリアーナより



その手紙はところどころ滲んでいた。


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