約束
いろんな夢を見た。
美利杏としての記憶、ミリアーナの想い、何かから逃げるように走り続ける夢…。
寒くて独りで悲しくて…そんな時、誰かの声が聞こえたの。
その声で夢から覚めれた。
右手が温かい。
目を向けるとレオが私の手を握り、こちらを見ていた。
「姫さん?姫さん!!よかった…。水飲めるか?」
私はレオに促されるまま、起き上がり水を飲みながら、今の状況について考えてみた。
昨日の夜のことを思い出していくうちに、思い出してしまった。
そうだ…昨日わたし、レオとキスしちゃった。
ファーストキスだったのに…。
レオが嫌ってわけではないんだけど…でも、まさかの出来事に戸惑ってしまう。
あ、でも、あれは人命救助的なのだからノーカンか?!うんうん!
それにいくら中身18でも見た目は10歳…レオもこんなの相手にしないよね…
言ってて悲しくなってきた。
「ん?大丈夫か?顔があかいし…熱でもあんのか?!」
レオが心配して私に詰め寄る。
っ!ちかい!これ以上はキャパオーバーだ!
自分がイケメンである自覚を持って欲しい。
ふと、レオの首元に目が行った。血がシャツに滲んでいる…?
慌ててレオのシャツをめくる。レオの戸惑う声は無視。
そこにはまるで吸血した跡みたいな傷。
「この傷…私?」
体が震える。冷たい。
「あぁ。これはちげぇよ。勘違いさせてごめんな。」
レオの手が私の頭を撫でる。少しずつ震えが収まってきた。
でも、じゃあそれは?
「姫さんが眠ってる間に、母親のほうが来たんだよ。傷跡が無いと怪しまれるだろう?だから、自分で傷つけたんだよ。」
自分が吸ってしまったわけではないということにホッとした。
でも、その傷はやっぱり私のせい…
レオは黙り込んでしまった私に思い出したように尋ねる。
「てか、姫さん。もう五時間たったから大丈夫だろう。血飲みな?」
そう言ってレオが反対側のシャツをめくって、私の前にさらした。
確かに、喉の乾きはなくならない。水を飲んでも満たされない。体はだるい。
でも…血を飲むのが怖い。
私が動けないでいると、レオが眉をひそめこちらを向いた。
「どうしたんだ?」
「血を飲むことが怖いの。私もあの人達と同じになるかもって…。人をまるで食糧のように扱う…そんなの嫌だ。それに、無理やり血を吸うのも、もしも吸いすぎて殺してしまったら?」
理由もわからず涙が流れる。
やっぱり、おかしい。
私ってこんなんだっけ?美利杏とミリアーナが混ざって、自分でわからない。
本当はずっと不安だった。
自分がミリアーナとして正しい判断を出来ているのかわからなくて。
それに…私の、美利杏を知る人はいない。
あたりまえだ。
美利杏の味方は居ないんだ。
ミリアーナとして味方がいてくれるのは、心強い。嬉しいのに…
欲張ってしまう、美利杏としての意識が想いが隠れてくれない。
もし、血を飲んで嫌われたら?殺してしまったら?…私には、耐えられない。
「あのよ、姫さん。」
顔を上げるとレオが頭をかきながら、少し困った顔をして言う。
「姫さんと出会って、まだ少しの俺が言うのも変だがな…姫さんは姫さんだろう?
てか、彼奴等と姫さんでは全然似てねぇし。
姫さんはたまに、こいつ年齢偽ってんだろ?!ってくらいしっかりしてるし、大人びてる。
でも、甘いのや可愛いのが好きでほんとは甘えたがりだよなぁ。ちゃんとこっちが見守ってないと、平気ですぐ無理するし…
そんな姫さんが、ここの使用人たちは好きなんだろうな。」
でも…私は…
「それになー!俺だってお前じゃなきゃ、血を飲ませようとはしない。
…俺は人生諦めてた。でもこの数日で思い出した、思い知っちまった。
俺だって、まだ生きてるんだなって。
姫さんがどういうつもりで俺をここに連れてきたかは知らないが、感謝してる。」
まさか、レオからそんな言葉を言ってもらえると思わなかった。
そういえば、姫さん…この呼び方はミリアーナでは呼ばれてたことはない。私だけの呼び方なのかな?
そんな事も考える余裕が出てくる、さっきまでのくよくよした考えが薄まっていく。
「そっか…レオありがとう。」
「おう。…そうだ、俺の血を姫さんにあげるかわりに一つ約束してくれないか?」
「約束?」
「絶対に死なないこと。それと…あいつらを倒したあとは自由にしていいって言ってたろ?
なら、俺を正式に従者にしてくれないか?」
「え?」
「今さら他の仕事を探すほうがめんどいんだよ。それに…まぁ、あれだな姫さん一人にしたら何しでかすかわかんねぇしな〜。」
「いいの?それは私に得しかないけど…」
「いいの!!じゃ、約束な!」
そう言い切るとレオが小指を出して私の小指に絡める。
「約束!」
そう言って無邪気に笑うレオ。なんだかその姿がおかしくて、嬉しくて…私も笑いながら頷いた。




