作戦会議
レオナードが来てから10日がたった。
彼はあっという間に完璧な従者となってみせた。両親も満足そう。
ベスターは…
「及第点といったところですかね。まだまだ、姿勢は甘いですし、ふとした瞬間に化けの皮が剥がれているようではいけません。姫様の従者として……」
って感じでレオに厳しいんだよね。
なんでだろ?
そんなレオは普段はあったときと同じように素で接してくれている。
私もレオには素で話してしまうようになった。
年の近い人が居なかったから余計にかな、楽しいんだよね…
ルル姉はインキュバスという種族について、レオに教えてくれた。
幼い頃に家族と離れてて、レオが知らないと言うので、博識のルル姉に聞いてみた。
ちなみに説明を私も聞こうとしたのに、「姫様にはまだ早いです!!」って追い出されてしまった。
…げせぬ。
一番の衝撃はモズじぃだった。
なんとモズじぃって、ローズ・マリーギルドの幹部の一人だったらしい。
二人が合うなり叫ぶから何事かと思ったら、モズじぃはレオの師匠に当たる人だって…。
ゲームでレオナードの過去は知ってたけど、本人から聴く過去話はより辛くて…大号泣。
そんな私にレオは珍しくあたふたしてた。
「お、おい!泣くなよ!?…何で姫さんが泣いてんだよ。」
私達二人を見たモズじぃは、笑いながら二人の頭を撫でた。
「はははっ!姫様は優しいからな、しょうがない。それにしても、あのガキがずいぶん大きくなったなぁ。…生きててくれてよかった。」
レオの目元が少し潤んでたのは見なかったことにして、私は泣いた。
それからモズじぃはレオに魔法の修行や暗殺技術を再度教えてくれてる。
正直、私に稽古つけてるときより厳しくて、見てるこっちとしては大丈夫?って心配になるけど…二人とも生き生きと楽しそうなのでいいかなと思える。
このまま何事もなく過ごせたらいいのに…やっぱり、そう上手くはいかないよね。
「姫さん。あいつら出てったぜ。みんなに声かけてきていいか?」
「うん、お願い。」
レオが部屋を出て三人を呼びに行く。
明日は私の十歳の誕生日。
今日は明日の対策について最終確認をするためにみんなに集まってもらう。
すぐにみんなが集い、作戦会議は始まった。
モズじぃには部屋の外で待機してもらい、他の人に話が漏れないよう警備をお願いした。
ベスターとルル姉が緊張した面持ちいる。
それもそうか、明日の結果次第でこの先が大きく変わるんだもん。
まず、はじめの報告はベスターからだった。
「アンから手紙の返信が来てます。ランス様が協力を承諾してくださったそうです。王様の方にも、お話を通してくれるとのことです。向こうも今は動くときではないだろうと、理解を示してくださっています。」
「そう。…アンも元気そうで良かった。」
ランス様と王様が味方についてくだされば、今後にはいいと思う。
上手く協力体制を築かなければ…
次はルル姉が一歩前に出て話し始めた。
「薬のことですが…飲んでから5時間以内に血を飲むと確実に操られてしまうみたいです。」
「ん?てことは、姫さんが5時間血を飲まなきゃ大丈夫ってことか?」
レオがそう聞くとルル姉は首を横に振った。
「そうなんだけど…、吸血衝動を強める作用も薬に入ってるから、姫様がどれだけ耐えられるか…。」
「大丈夫よ。ルル姉、耐えて見せるわ。」
「姫様…気休めになるかは分かりませんが、強い睡眠薬を作っておきました。これで5時間眠って過ごすことが出来れば一番良いんですけど…」
ルル姉はなおも顔を曇らせる。
「何をそんな心配してんだ?5時間くらい…」
「はぁ、吸血衝動はそんな簡単なものじゃないんですよ。吸血鬼にとって渇きは命に関わります。ましてや姫様は明日、吸血鬼へと成る。
一番エネルギーを使って弱ってしまうでしょう。その状態で薬も飲んでるとなると…」
ベスターが言った通り、吸血鬼にとって渇きは命取り。
「そうなのか…すまん。喉乾いたくらいの感覚かと思ってたわ。…それで、俺は明日どうしたらいい?」
別に謝ることではないのにね。レオの真っ直ぐな視線と目が合う。
「あの人達は私にレオの血を飲ませようとすると思う。 レオは私に血を飲まれないようにしてほしい。」
「それだけか?」
「うん。魔法でもなんでも使っていいから、お願い。」
「…あぁ、わかった。」
私達二人の会話を聞いてたベスターがいつの間にかレオの後ろに立って、何かを話している。
私はルル姉と向かい合い話す。
「姫様、お願い…無理だけはしないでね。」
「…わかってるよ。大丈夫。私は負けないから!」
そのおねがいは叶えられない。
無理でも何でもしないといけない。
それでも安心させるように私はルル姉の手を取って握った。
作戦会議が終わって私はベッドへつく。
あれこれ考えつつも、眠りにつけた。
夢をみた気がするけど…おぼえてないや。




