溢れる怒り
父と母は、追加の買い物をすると言って牢を出ていってしまった。
今、この空間にいるのはオーナー、レオナード、私の三人だけ。
「そうしましたら…姫様は奴隷契約をやったことはありますかね?」
「いいえ。まだやったことなくて…教えていただけますか?」
オーナーはじ~っと私を見てはにたにたしている。…気持ち悪い、ロリコン趣味か?
「もちろんですとも!なーに、簡単な作業です。昔は奴隷に魔力を込めた焼印を押していたんですがね…手間もかかるし、バレやすいんで今はこれですな!」
そう言って取り出したのはシンプルな黒いブレスレット。真ん中には丸くて白い水晶のようなものがついている。
「手順としては、まずこの腕輪に魔力で契約内容を書き込んでくだせぇ。契約内容は(絶対服従)と、追加で何か入れたいのを書き込む感じですな。
書き込みができたら、ついている魔水晶の色が変わるはず、これは契約者の…つまり、姫様の魔力によって色が変わるんでっせ。色が変わったら、奴隷の血を魔水晶に垂らして吸い込ませ、
その腕輪を奴隷に付けさせれば契約完了ってわけです。」
私は腕輪を受け取った。
見た目はきれいなブレスレットなのに…外面が良くても中身が腐ってる。この洋館や両親と一緒ね…。
「ここにいる奴隷たちには従属の首輪をつけていますんで、こちらが命令すれば逆らうことはできませんのでご安心を。
ぐふふ、それだけでなく逆らうものにはこのようなこともできます…」
「ぐぁっ、うぐ。…!!」
オーナーが語り終えると同時にレオナードが首元を押さえて苦しみ始めた。
「このように首輪が閉まるんでっせ!電流を流したりもできやすし、この苦しむ顔がたまらな…」
「今すぐ!止めなさい。」
私は自身の魔力を乗せてオーナーを睨みつけた。
魔力操作の基本はモズじぃに教わってる。
私の魔力は吸血鬼であり豊富。ただの人間が直接浴びたらひとたまりもないでしょうね。
本来ならこんなことせず、大人しくしてようと思っていた…無理だった。
どうしょうもない怒りが収まらなかった。
しょうがない…作戦変更だ。
オーナーは力なくその場に座り込んだ。顔は青白く息も荒い。
レオナードの方は首輪が緩んだとわいえ、むせこんでいる。
「っ…!…も、もうしわけございません!姫様…ただ、私は…!!」
私は必死に弁解しようとするオーナーを冷たく見下ろす。
「ねぇ。これは私のものになるのよ?それなのに許可もなくこんなことをしていいと思っているの?
ましてや、今の説明だけで良かったわよね?
自分の欲のために、そんなことをするなんて…
私はね、私のものに手を出されるのが嫌いなの。不愉快。」
オーナーが私の足元に土下座する。体が小刻みに震えていた。
「大変申し訳ございません、ひめさま!どうか…お許しください!!」
自分は奴隷たちにもっと酷いことをしてきたくせに…魔力を当てられたくらいでみっともない。
自分より弱いものにしか強く出れないただのクズ。
「…ふん。今回は許してあげる。説明はわかりやすかったし、何よりもレオナードを紹介していただけたからね。でも…次は無いわ。」
私は魔力をひっこめ、ニッコリと微笑む。
悪女口調もだいぶ慣れたなぁ…と心のなかで思いながら。
「はい!ありがとうございます!!」
「じゃあ、さっさと出て行ってちょうだい?」
「へ?」
涙でぐちゃぐちゃの顔が間抜けにポカン。
「もう契約の仕方はわかったわ。後は一人でやるわ。わざわざ貴方に見守っていただく必要はないし、今あなたといても気分が悪いもの。
…うっかり、殺してしまってもいいなら…」
「あーー!かしこまりました、姫様!
私めは失礼いたします!!」
オーナーが慌てて立ち上がり牢を出ていく。あっちこっちにその体をぶつけながら去っていく姿には少しスカッとした。
私って演技の才能があったのかな?なんて馬鹿なことを考えていると、レオナードと視線が合う。
先程よりも警戒心が強くなっている気がする。
それもそっか、自分よりも幼い少女が今まで大人しそうだったのに、急にあんなに魔力ぶっぱなして偉そうに喋ってんだもんね…
ちょっと恥ずかしくなってきた。
「さてと…命令すれば何でもやってくれるのよね?牢の中についている監視カメラ2つを、貴方の闇魔法で覆って映像を見えなくして欲しいの。お願い。」
彼は怪訝そうな顔をしつつも、あっという間にカメラの周りを闇で覆った。
すごいなぁ。
邪魔者も居なくなったし、準備もできた。
私はレオナードに向けて微笑む。
「それじゃあ、二人だけで話し合いをはじめしましょうか?」




