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言ってなかったけど、俺の元カノ魔王なんだよね  作者: 桜枕
円満に、解決できそ?

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第25話 勇者パーティーと魔王の脅威

 国王陛下から依頼された討伐対象が、パーティーメンバーの元恋人だということが発覚した。


 ゴーシュは未だに口をパクパクして、レイヴは何度も僕とリタを見比べた。

 僕は気まずくて下を向くことしかできない。

 そんな情けない有様の男性陣とは違い、イリスだけは魔王に杖を向けて叫んだ。


「新たなワレンチュール王国の魔王よ! 我々が貴様を倒す!」


 それはレイヴのセリフのはずなのに。


「そうだ。魔王が誰であろうと躊躇しない。ユーキ、そうだろ?」


 レイヴからの一声は確認ではなく、命令だった。


「……みんなの夢も叶えないといけないし。覚悟はできてる」


「おい、待てよ! ユーキッド! お前はあの人が魔王だって知ってたのかよ!?」


「それは今はどうでもいいことです。ゴーシュさん、前衛をお願いします」


 レイヴとイリスの言う通りだ。

 レイヴたちは魔王を討伐するために来た。

 相手が僕の元恋人だからといって、「じゃあ、帰ります」とはならないことは百も承知している。


「アタックフォーメーション!」


 レイヴの掛け声に合わせて、全員が動き出す。

 1対4の盤面だけど、誰一人として余裕の表情は見せなかった。


 リタが繰り出す爪の攻撃はゴーシュの盾にヒビを入れ、風圧でレイヴと僕を吹き飛ばした。


「ゴーシュ、これを。使えるよね?」


 僕はダガーをゴーシュに渡して、前衛と後衛を入れ替える提案をした。

 リタの爪と僕の影の爪がぶつかり合い、拮抗し、初めてリタが足を止めた。


「レイヴ、ゴーシュ! 今しかない! イリス、2人に強化魔法を!」


 完璧な連携だった。

 これ以上はないはずだった。

 それなのに、リタにはかすり傷一つ付けられなかった。


「……うそ、だ」


 誰がつぶやいたのかも分からないほどにレイヴたちは愕然としていた。


 それは僕も同じだ。この中で一番、魔王のことを知っているはずなのに。知っていないといけないのに。


 僕は奥歯を噛みしめ、回避行動を取った。


 黒い雷、黒い炎、黒い風、黒い濁流、黒い氷柱、それらが一度に僕たちを襲ったのだ。

 回復役のイリスだけを狙わなかったのはリタの優しさか、それとも遊んでいるだけなのか。


「おい、ユーキッド! 元彼氏なら弱点とか知らないのかよ!?」


「知らないよ! そんなものがあるなら僕が教えて欲しいくらいだよ」


「どれだけ薄情な関係なんだ。一週間ほどで別れたのか?」


「まさか。しっかりと在学中は付き合ったよ。でも知らない。というか、弱点なんかない」


「それでも使用する魔法くらいは教えてくださってもよいのでは?」


 イリスのごもっともな指摘に返答するべきか悩んだ。

 だって、戦闘中に仲間の心をへし折るような真似はしたくないんだ。


「答えていいの?」


「むしろ、答えて欲しいです」


 床に寝そべりながら作戦会議する間、リタは攻撃せずに待ってくれていた。

 僕の元カノは優しいのだ。


 多分、リタにとって僕たちは敵とは認識されていない。

 野良犬や野良猫と遊んでいるような感覚だろう。


「リタは時空間魔法の使い手だ。あんな一般的な攻撃魔法を使っているところなんて見たことがない」


「「「……は?」」」


 3人は間抜けな顔で間の抜けた声をそろえた。


 リタが一度たりとも得意な魔法を発動していないなんて、僕だって認めたくなかったよ。


「リタは未来とか過去への行き来はできないけど、時間を止めたり、速めたりすることは可能なんだ」


「あー、聞きたくなかったわ」


「だから言ったじゃないか。僕だって言いたくなかったよ」


「ユーキの影魔法は?」


「あれはリタの魔法をベースに仕上げているから、良くても拮抗しかできない。そもそも、リタの時空間魔法があったから僕は影魔法を習得できたんだ」


 何言ってんだ、こいつ。みたいな目で見られているけど、事実なんだよ。

 これも伝えない方がいいと思う。でも、彼らが知りたいのなら仕方がない。


「北の大魔王が180年かけて開発した魔法をたったの3年で習得できたのは、リタが時間を止めた空間で特訓したからなんだ。だから、僕とリタが付き合っていた期間はたった3年なんかじゃ済まない」


「プロじゃん! プロの熟年夫婦じゃねぇか!」


 確かにそう言われると、あんなに長い時間を一緒に過ごしても飽きることがなかったのは奇跡かもしれない。


「つまり……勝ち目がないってこと?」


 レイヴの悲壮感が漂う声にゴーシュも黙り込んでしまった。


 正直、勝算はない。

 ただ、リタの戦い方を見るに何かを待っているような気がしてならなかった。


 恐らく、影魔法の中でもトップクラスの破壊力を誇る攻撃魔法を待っている。

 それを反射させて僕たちを仕留めるつもりなのか、別の意図があるのか。


 僕個人としては使いたくない。あれを使うとリタでもただでは済まないと思うし、跳ね返されたら僕たちは確実に死ぬ。


 レイヴたちは魔王を討伐するためにこの場にいるが、僕は彼女を捕縛するつもりだった。


 当初の予定ではレイヴたちがこの部屋に入ってくるまでにリタを気絶もしくは話し合いを経て、死体を偽装するつもりだった。

 首を持ち帰って、王様を騙して全員がハッピーエンドを目論んでいた。


 ぶっつけ本番でどうにかなると思っていたが甘かった。

 結婚式後の宿屋でリタに計画を話そびれた僕が悪い。


 レイヴたちには魔王の正体がバレてしまったし、これ以上はごまかせない。

 手を抜かず、何が何でもリタを討伐しないといけなくなった。


「あとはわたくしに任せてください」


 イリスがゆらりと不気味に立ちあがる。

 彼女がこれまでに聞いたことのない呪文の詠唱を終えた瞬間、レイヴとゴーシュは同時に脱力した。


 唯一、僕だけが何が起っているのか直視していた。

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