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Chapter 34  脱出

 安らかに横たわる男。僅かな呼吸音すら聞こえない。

 

「クソッ、なんで回復しないんだ! 傷は塞がっているのに……!」

「死因があなたの斬り傷ではない、とかでしょうか? ろくな扱いを受けていなかったから、餓死とかありえますわ」


 別の死因。その言葉にに何か引っかかったスピナー。おもむろに脚で仰向けの遺体をひっくり返した。


「おい、キサマ!」


 うつ伏せにさせられた男。その背中に小さな傷が見えた。


「あのババアやりやがったな……」

「刺し傷……、針か何かか……?」

「多分、毒針だ。ババアが去り際に刺しやがったんだ。クソが」


 側に落ちていた本を乱雑に蹴飛ばす。


「……とりあえず、外に出ましょうか」


 今いるオフィーディアの部屋を出て、来た道を戻る一同。出口は道中で伸びていた賊を捕らえて吐かせた。

 男の遺体を置いてはいけない。落ちていた板に乗せて、丁重に運んでいる。


「ファーローズ……ファーローズ……」


 気がかりなことがあるのか、遺体の顔をじっと見つめるカトレア。急に目を見開いた。


「この人、ファーローズの軍隊長さんと違いますか!?」

「マジか!?」


 過去に存在していた国『ファーローズ』。アルマがこの世界に来た時には、そんな国はなく、かつての城は魔王軍幹部グリムフォードの居城となっていた。


「10年前、ファーローズが滅んだ理由は未だ不明。ファーローズの軍隊長である彼なら何か知っていた可能性が高いです。惜しい方を亡くしました……」


 うつむくアネモネ。その言葉にアルマが疑問を呈す。


「滅んだ理由が不明って、理由は魔王軍の侵攻ではないのですか?」


 カトレアが口を開く。


「ファーローズの国力は『後ろ盾』と呼ばれるぐらい、対魔王軍には欠かせない存在だったんやで。そんな国がどれくらいで滅んだと思う? ……たった一夜や。」

「援軍の要請すら来ず、朝日とともに滅亡の知らせが来たそうです。魔王軍といえど、強国ファーローズを一夜で滅ぼすことはできません。仮に滅ぼせるだけの戦力が動けば、我が国アリウィンや他国が気付きます」

「そういうことですか……」

 

 魔王軍でなければ、なぜ滅んだのだろうか。一夜で、となると天災だろうか? あれこれ試行していると、橙色の光が正面から差し込んできた。


「やっほー! 出口だ!」


 駆け出すディーア。後を歩く一同。一目で森の中と分かる木々の群れ。外はすっかり夕方だった。


「アネモネ王女! ご無事でしたか」


 洞窟の周りでは、アリウィンの兵士たちがバラバラに逃げてきた多数の賊たちを捕らえて待っていた。


「みなさんも無事でしたか。賊の確保、ありがとうございます。それにしても、この場所がよく分かりましたね」

「はっ! いち早く洞窟から脱出したあの者に案内していただきました」


 兵が示す方向。そこには焼いた骨付き肉にかぶりつくライムがいた。


「ライム!?」

「やっと出てきた」


 骨付き肉を持ったまま、ディーア達へ近づくライム。


「先に出てたんなら、オレらのこと探しに来いよ!」

「運よく出れただけで、次出てこれる自信がなかったからね。だったら洞窟前で兵士たちと待ってるのが正しいかなって。もぐもぐ。結果として、賊たちを一網打尽にできた」

「話しながら飯食うなよ……」

 

 



 時刻は夕方。オフィーディアの洞窟にたむろする賊達はことごとく捕らえられ、壊滅した。目的は達成したことになる。しかし、肝心の魔王軍幹部オフィーディア、そして四護ソラスには逃げられた。特に、オフィーディアには『とある情報』を持ち帰られてしまった。その情報を渡した元ファーローズの軍隊長は、治療の甲斐なく、亡くなってしまい、情報は聞けずじまいに終わってしまった。


「ところで……、なーんでルードちゃんがスピ坊のローブを着ているんだ? そういう関係だっけ?」

「この男に暗闇でひん剥かれたから、代わりに着ている」

「……スピ坊……お前……」

「おい待てふざけんな」

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