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Chapter 30  四護 軍師ソラス

 魔王軍最高幹部を前に、武器を構えるアルマ、アネモネ、カトレアの3人。


「魔王軍四護、軍師ソラス! アリウィン王国第一王女アネモネと頼れる臣下、そして勇者アルマが相手いたします!」

「……私が最後に地上で名乗ったのは100年以上前のはず。なぜ、あの騎士は私の事を知っていたのか。……今考えても答えは出る訳なしか……。ああ、これは失礼。アリウィンの姫君に名前を憶えていただけていたとは恐悦至極ですな。……ですが、刻下の目的はアネモネ殿ではありません」


 金色の杖の先で軽く地面を突くソラス。アルマの足元が怪しく紫に輝きだす。目を落とすと、そこにはみんなを転移させた、あの魔法陣が描かれていた。

 早く移動しなければ。そう思った時にはもう、遅かった。

 猛烈に強まる光。それに完全に包まれたアルマ。光はピークを迎えると徐々に弱まっていった。光が収まった頃には、アルマの姿はどこにもなかった。


「どこに転移させたのですか!?」

「ご安心くだされ。行き先はこの洞窟内ですぞ。少々、勇者をお借りするだけ。しかし、その間、あなた方は暇でしょう? こやつらとでも遊んでいてくだされ」


 横の岩壁に黄金の杖を向けるソラス。壁に正円の魔法陣が浮かび上がる。魔法陣がかっと光った直後、その洞窟の壁は粉々に崩れ、大きな風穴が開いた。


崩壊コラプション……。ずいぶんと珍しい魔法を使いはりますなぁ」

「ホッホッホッ。対象の強度に関わらず、魔法陣を刻んだ物体を消滅させる魔法、崩壊コラプション。私の好きな魔法の1つですな」


 崩れた壁の向こうから、5匹ほどの人型の何かがのそりのそりと顔を出す。


「な、なんや、あれ!?」

「名称は『ゾンビ』といったところですかな。ちょっとやそっとでは壊れないので、長く遊べますぞ。それでは、私はこれでおいとまさせていただきます」

「ちょ、待ちいな!」


 カトレアが呼び止めるもむなしく、ソラスの姿は忽然と消えてしまった。

 残されたアネモネとカトレア。うめき声を上げるゾンビたちを前に愕然とする。


「どうします、アネモネ様?」

「決まっています。早急に倒して、アルマを探しに行きます!」









 気が付くアルマ。辺りは何も変哲もないただの洞窟。おそらく同じ洞窟内だ。

 しばらくすると、飛ばした張本人が突然、姿を現した。


「あなたとは、ゆっくり交えたいと思いましてな。指輪の勇者アルマ」


 モノクルを外して磨いているソラスに対し、アルマが剣を抜く。


「四護ソラス! 何が目的だ」

「いや、そんな身構えなくても結構。ただの手合わせですよ」


 磨き終わったモノクルをかけるソラス。


「私は軍師と呼ばれている通り、魔王軍の指揮や作戦立案を担当する身。任務を全うするには敵である勇者の力の程度を知っておく必要がありましてな。しばらく、この老骨に付き合って貰いますぞ」

「洞窟内の指揮を取らなくていいのか? 僕の仲間たちが次々合流して、好き放題されてしまうんじゃないか?」


 全員一緒だと都合が悪いから、ソラスは自分たちをバラバラにして洞窟内に配置したはず。それを放置するのはどう考えても悪手だ。

 アルマの指摘を聞き、ソラスは高らかに笑い声をあげた。


「ホッホッホッ。今現在、あなたの仲間全員には足止め用の兵器をぶつけております。想定外に隠し通路を発見した組がおりましたが、仲間割れを起こしたおかげで兵器の配備が間に合いました。いやぁ私は運がいいですな」


 ほくそ笑みながら、黄金の杖を両手……両翼で握り、杖の先の宝玉をアルマに向ける。輝く宝玉。杖の先に生成される魔力の刃。それはまるで一本の槍のよう――


「それでは、行きますぞ」


 距離を詰め、その魔力の刃を叩きつける。受け流すアルマ。槍の間合いの内側に入り込み、斬りかかる。空振りする剣。敵が消えたことに気付くアルマ。

 突如、背後からの一撃。それを剣身で受けるアルマ。鳴り響く金属音。魔力の刃に押され、軽く地面を滑る。


瞬間移動テレポートか……」

「良く反応しましたな。さすが、グリムフォードを下しただけのことはありますな」


 杖を持つ手に力を込めるソラス。魔力の刃がさらに大きく、長く、鋭く――


「ですが、勇者の力はその剣ではないはず。早めに出した方が互いのためですぞ」


 ついに十数mにもなる魔力の刃。その場で薙ぎ払うだけで、アルマを軽く両断できるほどとなった。

 巨大な刃を前に目を閉じるアルマ。

 ――伸縮自在で強力な魔力の刃。それを実在の刃と合わせたらどれほど強いだろうか。


 左手に”ファイア”を握りしめるアルマ。右手の剣『青紅』の刃をその左手で、柄から先端までゆっくりと撫でるように触れていく――

 鮮やかな青い刀身を燃え盛る火炎が包む。それはまるで――


「炎の剣……。珍しいものではないですが、勇者の魔力となると話が変わりますな」

 

 剣を持つ手に力を込めるアルマ。燃え盛る炎が落ち着いてゆく。決して火力が弱まっているのではない。炎は剣身に厚く巻きついているのだ。

 揺らめく焔を纏う剣ではなく、赤燈に輝く剣。無駄に熱量を放出せず、ただ破壊力を求めた姿だ。アルマが無我夢中で、できることを突き詰めた結果だ。


「行くぞ……!」


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