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Chapter 20  実は実は

 タマに牽かせる車を買って戻ってきたディーアとガーネット、スピナー。馬車のように、ようやくタマに車を装着したのだった。

 盗賊団の根城となっている洞窟へと出発する。エルさんは道案内のため、アネモネの馬車に乗ることとなった。そのため、ジャイアントタイガーが牽く車、言うならば『虎車』にアルマ、ディーア、スピナー、ガーネット、ライム、プラムの計6人で乗り込んだ。虎車を操縦する御者はガーネットとディーアのジャンケンの末、ガーネットが担当することになった。

 無数の馬車と1つの虎車が群れを成して同じ方向に広い平原を駆け抜ける。

 最後の最後まで乗車を徹底的に拒んでいたスピナー。その理由は走り出してすぐに分かった。


「……やべぇ……吐く……」

「さっきの報いってコトだ! なぁ、スピナー?」


 腹の立つ顔で、体調の悪いスピナーの肩に手を回すディーア。その背中をパンパンと叩いて、わざと身体を揺らした。


「揺らすな話しかけんな……殺すぞ……ウッ」


 素早く虎車の外に顔だけ出すスピナー。何をしていたかは察するまでもない。どうやら、スピナーは乗り物に弱いらしい。

 ――この先、大丈夫なんだろうか……?


 





 一方、アネモネ、ルード、カトレア、そしてエルさんが乗る馬車では、一触即発の空気が漂っていた。


「オイオイ、いつまで睨んでいる気だ? オレは野郎に見つめられる趣味はねぇんだが?」

「キサマこそ戦う意思がないなら、兜の1つぐらい外したらどうだ?」

「フッ、オレの素顔はトップシークレットなのさ。ミステリアスな奴はモテるんだぜ?」

「……意味が分からん」


 呆れ果ててそっぽを向くルード。エルさんは次にカトレアに狙いを定める。優雅に読書を嗜むカトレアの側に近寄った。


「カトレアちゃん、今ここにそこのツンツン頭からくすねたクッキーがあるんだが、一緒にどうかな?」

「ふーん、そうなんやぁ」


 本から目を離さず、関心のない様子。関心があるのはむしろ、ルードの方だった――


「は!? ……ない! キサマいつの間に……!?」

「馬車に乗る前にこっそりとな。実は手癖の悪いエルさんなんだぜ? ……って、カトレアちゃ~ん、少ーしくらいオレを見てくれないかな」

「……だって野郎に見られたくないんやろ?」


 その発言に戸惑うエルさん。カトレアは読んでいた本を閉じ、馬車に乗って初めて目を合わせた――


「ウチ、男やで?」


 ポトリ


 手に持っていたルード印のクッキーが震える手から零れ落ちる。


「そんな……。金髪長身のお姉さん的レディかと思ったら、ただの美形野郎だったとでもいうのか……。レディ二人に常に囲まれるツンツン男マジfuckyouと思ったら、アネモネちゃんが野郎二人に囲まれていたとでもいうのか……」


 兜の隙間から滝のように涙を流しながら、馬車の床を叩いて悔しがる。

 アネモネただ1人が優しく声をかけた。


「何をおっしゃっているかは分かりませんが、私の臣下は素晴らしい紳士淑女ですよ」

「……どこに淑女がいるんだ……」


 紳士淑女、つまり男女のペア。カトレアが男と判明した今、「淑女」に当たる臣下は1人しか考えられない。


「……まさか」


 顔を上げるエルさん。アネモネの目線の先にいたのは、ルードだった。

 フンッ、と顔を背けるルード。エルさんは咳払いをして声を整えた――


「ルードちゃん、この件が終わったら一緒にお茶でもどう?」

「見境なしかキサマァァァァ!!!」


 目を思い切り吊り上げて、エルさんに飛び掛かる。無理やり兜を脱がそうとするルードと、必死に守るエルさんとで、狭い馬車内は大騒ぎとなった。

 巻き込まれないように隅によっていたアネモネとカトレア。騒動の中、馬車外の「何か」を感じ取っていた。

 アネモネとカトレアは馬車から顔を出し、空のある一点をじっと見つめる。その直後、アネモネが高らかに声を上げた――


「全軍止まってください!」


 かかった号令に従い、虎車を含む、全ての馬車が急停止した。


「……誰か来ます。全軍、戦闘準備!」


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