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Chapter 19  協力

 スピナーはガーネットとディーアによって地面にめり込むほど頭を下げさせられた。スピナーによって引き起こされた事件はアネモネ王女の寛大な処遇で、お咎めなしとなった。

 アネモネは話を元の軍派遣の件に戻した。


「エル、といいましたね? 先代町長ジョゼが出した軍派遣要請の理由に『盗賊団の討伐』と書かれていました。その盗賊団の場所、ご存じですか?」

「ああ、知っているぜ。6年前から近隣の村々でやりたい放題だ。オレ1人で潰しに行こうとしたこともあったがな、雑魚でも数が多くてどうしようもなかった」


 エルさんは頭を抱えて、ため息をつく。


「ありゃ、複数の盗賊団が手を組んでいやがる」

「盗賊団同士で同盟……。盗品の取り合いが頻繁に起きて、同盟どころではないと思うのですが……」

「その通り、てめぇの利益しか考えねぇ集団同士が仲良しこよしなんて絶対ありえねぇ。裏に何かがいると見て間違いない。例えば、魔王軍とかな」


 魔王軍。その言葉に兵がざわつく。


「今から行けば日が沈む頃には着くが……どうする?」


 アネモネは力強くうなづく――


「行きましょう。一刻も早く障害を退けて、民に安泰をもたらすのが私の役目ですから」


 その視線をスピナーに向けるアネモネ。スピナーは不機嫌そうに目を逸らし、舌打ちをした。その不遜な態度を見てルードがレイピアに手をかける――


「ああ、もう……。ディー坊、ガーネットちゃん! スピ坊を連れて、タマが牽く車でも買ってこい!」


 厄介払い同然の指示を出すエルさん。妥当な判断である。ディーアとガーネットはそれぞれ片腕ずつスピナーの腕をがっしりと抱えて連行していった。それを見送った後、アネモネがアルマたちが隠れている岩の方を指さした。


「ところで……あれは何でしょうか?」


 指の先に見えたのは、ファーローズ城の玉座だった。畑に置きっぱなしにしていた玉座を取りに行ったプラムはもう戻ってきていた。しかし、ファーローズの玉座のあまりの大きさに、岩陰から背もたれの上部がはみ出ていたのだ。


「おーい、プラムちゃん。今それ渡してしまうのはどうだー?」

「うん、そうする」


 声が聞こえると同時に、巨大な玉座が動く。岩陰から現れたプラム。体格に見合わないサイズを軽々持ち上げて運ぶその姿に、アネモネたちは呆気に取られていた。

 岩裏、ライムがアルマに耳打ちをする。


「キミも行った方がいいんじゃない? グリムフォードを倒した当事者がいた方が何かと都合がいいでしょ。タマはボクが見ているからさ」


 ――確かにそうだ。相性の悪いライムにタマを預けるのは不安だが。ふとライムの方に目をやると、既にタマに頭を兜越しに齧られていた。

 岩陰にライムとタマを残し、プラムと共に、アネモネの前に謁見する。プラムは玉座を地面に置き、そして名乗った。

 次いで、プラムが報告内容を口にする前に、カトレアが巨大な椅子を指さして尋ねた。


「どこかで見覚えある思うたら……。それ、ファーローズ城の玉座とちゃいますか?」

「違うだろう。旧ファーローズ城には魔王軍幹部のグリムフォードが居座っているハズ。グリムフォードを倒さずして、取ってくるなんて不可能だ」

「ディーアとスピナー、あとここにいるアルマが倒したよ?」


 あどけない、きょとんとした表情で言い放った幹部討伐成功報告。デタラメな発言をしているようにしか見えないプラムにルードが迫る。


「ウソを付くな! あのグリムフォードをどこの馬の骨とも分からんヤツ等に倒せるわけないだろ!」

「……倒さずしてこれ取ってくるのは不可能だって、君が言ってなかった?」


 自身が言ったセリフによって口籠ってしまうルード。「本当か?」「マジで?」と、アリウィン軍の兵士たちのざわめきが強くなっていった。

 アネモネは凛とした態度で答えた。


「ご報告感謝します。後日確認させていただきますが、あなたの様子とその玉座から、おそらく真実で間違いないでしょう。アリウィン王国の王女として、1人の人間として、深く感謝申し上げます」


 深く頭を下げるアネモネ。それに合わせてルード、カトレア、兵士達も頭を下げる。

 顔を上げた後、アネモネは兵に命じて、玉座を回収し、大量に引き連れている馬車の一つに積んだ。アネモネの父、アリウィン王に報告するためだそうだ。

 この後、アリウィン軍は盗賊団の討伐に向かう。アルマには一つの考えがあった。相談しなくてもディーア達はこれと同じことを考えているだろう。

 その意見を申し上げた――


「アネモネ様。僕たちもその盗賊団の討伐に協力させてください。魔王軍が関わっているなら、見過ごすことはできません」

「ぜひ、お願いします。魔王軍幹部を倒した戦士が一緒とは心強いです」


 二つ返事で承諾するアネモネ。戦う同士が増えたことに軍の兵士たちは歓喜していた。


「味方は多い方がいいが、あの愚か者は要らんな。いつまたアネモネ様が襲われるか……」

「ふふ、別にいいんとちゃいます? 何かあればウチらで取り押さえればいいだけの話や」


 活気にあふれるアリウィン軍の騒がしさの中でエルさんが口を開く。

「スピ坊達が戻って来次第討伐に向かうが……。アル坊と、あと今回が初陣だと言っていたアネモネちゃん」


 普段の態度とはまるで違う神妙な面持ちで話す――


「今から獲りに行くのは魔族の命でも獣の命でもねぇ。腐っても同族、人間の命だ。それだけは覚悟しとけ」


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