Chapter 18 王族
吹き飛ばされ、地面に倒れるアネモネ。
「バッカ、アイツ何考えてんだ!?」
ディーアは焦ってスピナーの元へ駆け出す。それを追いかけるようにガーネットも走り出す。
拳を振り切ったスピナー。一瞬にしてルードの瞳に血走る――
「言葉は要らん! キサマは極刑だ!」
その心臓に狙いをつけ、レイピアを突き出す。その一撃は空を斬った。レイピアの軌道から消えたスピナー。その身体は地面に強く叩きつけられていた。ディーアがスピナーを地面に押し付けて、拘束したのだ。馬乗りになって、頭をがっしり掴むディーア。激しく藻掻くスピナーを制していた。
「離せ馬鹿!」
「バカはオマエだ! 相手は王族だぞ!?」
「王族だから殴ってんだ! あと2、3発殴らせろ!」
怒号が響く。その声で目が覚めたアネモネが殴られた顔面を押さえながら、倒れた身体を起こす。すぐに声をかけるカトレア。
「御無事ですか? 今回復魔法かけますさかい――」
「いえ、自分でかけるので大丈夫です。それより……」
のしかかられ、地面に伏せながらも、物凄い形相でアネモネを睨むスピナー。
「何が王族だ。人手不足? 後回し? お前等の怠惰で何人死ぬと思ってるんだ!? てめぇの仕事も満足にせず、ふんぞり返っている糞野郎なんか殴り飛ばしてやる」
声を荒げ、張り上げる。見たこともない怒りっぷりに、スピナーをよく知るパーティメンバーは愕然としていた。
スピナーに匹敵する形相で拘束された男を見下す者が1人――
「遺言はそれで充分か?」
ドスの効いた声。スピナーの脳天にレイピアを突き立てる――
金属音が響く。放たれた突きをエルさんの大剣が弾いた。
「おっと……。どんな刑も受けさせるが、殺すのだけは勘弁してもらえねぇか?」
「フザけるな。キサマも不敬罪で極刑だ!」
目にも留まらぬ素早い突きを連続でエルさんに放つ。それを全て盾で受けきった後、反撃に大剣を叩きつける。避けるルード。流れるように、一直線にレイピアを鎧の隙間に差し込む――
「”ファイア”!」
鎧の中に放たれた魔法。鎧のありとあらゆる隙間から炎が吹き出す。火炎の中でも意にも介さないエルさん。叩きつけた大剣を水平に薙ぎ、ルードを吹き飛ばした。
一定の距離を保ち、睨み合うエルさんとルード。一触即発の空気が漂っていた。
その時――
「空駆」
二人の身体が無防備に宙へ浮く。空中で藻掻いても身動き一つとれるはずがなかった。
「お二人さん、そこまでや」
カトレアの言葉。それに従い、二人とも渋々、剣を収めた。カトレアはそれを見て、軽くうなずき、指先を少し下げて、二人を宙から降ろした。
真っすぐスピナーの元へと歩くアネモネ。スピナーの目の前で停止した。
「先ほどの件は不問とします。……確かにあなたの意見はもっともです。地方が税を納める、国が地方を守る。それが国の在り方です。私は本件で初めて、一軍を指揮することを許された身。あなたの言葉を胸に精進していきます」
深々と頭を下げた。
幼い見た目とは対象に立派な態度を示すアネモネに、全員驚く。
「どーすんだ、スピナー。初陣じゃ、さっきの八つ当たりみたいなモンじゃねーか……」
「と、とりあえず謝罪なさい!」




