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Chapter 12  ジャイアントタイガー

「よし、着いたぜ」


 町から少し離れた場所にある小さな丘の上。それがエルさんに連れてこられた場所だった。

 そこから見えるのは地を埋め尽くす程の一面の野菜畑に麦畑。麦が金色に染まる季節、彼らは収穫されるのを心待ちにしていた。


「目の前にあるのがファーローズ大平野。見ての通り、馬鹿広い農地だ」


 生い茂る植物や低木の隙間に複数の大きな影がちらちら見える。


「何か……いる?」

「ジャイアントタイガーだ。群れで点々と移動して、そこを縄張りにする遊牧の習性を持つ巨大な動物だ。厄介なことに収穫前の畑を縄張りにされちまった」

「なるほど。つまり、俺等にこのジャイアントタイガーの駆除を手伝えって事か」

「さすが、スピ坊。察しがいいな。できれば追い払うだけで済ませたいんだが、ジャイアントタイガーは群れの子供を守るために縄張りに入ってきた外敵と死ぬまで戦う性質を持つ。だから、アイツらには悪いが『殺処分』だ」


 ――殺処分。害をなすなら倒さねばならない。魔王軍と同じだ。まだ慣れないけど、心の準備はできている。

 微妙に強張ったアルマの顔。エルさんは兜の隙間からその表情と包帯巻きの左腕をしっかり見ていた。


「ディー坊、スピ坊、ライ坊とオレで討伐する。アル坊はここで待機だ。魔法が使えないガーネットちゃんをお守りするんだ」


 丘を下るエルさん。それに続くディーア、スピナー、ライム。


「情報だと親8匹ガキ3匹らしい。間違っても死ぬなよ!」


 それぞれ別れて、緑の中へと消えていく。しばらく後、けたたましい雄叫びがいくつも響き渡り、戦塵が舞い上がった。


「始まりましたわね」


 ガーネットとアルマは丘の上からその様子を眺めていた。

 その時――、


「ガルァァア!!!」


 砂塵を巻き上げながら、一直線に丘を駆けのぼる影が1つ。それは5mは優に超え、鋭い牙と爪を携えた猛獣だった――


「高い位置にいるのが指示役だとでも考えたか!? 無駄に頭のいいヤツだ」


 別のジャイアントタイガーと交戦中のエルさん。振り下ろされた爪を盾で防ぎつつも、丘の状況に気づいていた。

 背中の巨大な剣、ではなく腰に差していた剣を真紅の鞘ごと引き抜き、アルマたちの元へと投げつける――


「アル坊! コイツを使え!」


 真っすぐ飛翔する剣。あと少しまで迫ったジャイアントタイガーの目の前に突き刺さる。驚いて飛び跳ねるジャイアントタイガー。剣から少し離れた位置で、止まって威嚇し始めた。

 

 剣を収めた鞘が地面に突き刺さっている。その剣へと近づくアルマ。鞘と同じ真紅の布が何重にも巻かれた柄を握り、そして、引き抜いた――


 吸い込まれるような深い青色の剣身。欠け1つない完璧な直線を描く両刃。天に掲げたその剣は太陽に照らされ、光り輝く。


「ファーローズの山の地下深くで獲れる紺碧の金属『インディギウム』。それをオックスの鍛冶屋の大将が三徹して打った一品だ。その名も『青紅あおべに』」

青紅あおべに……」

「ソイツはお前にくれてやるよ!」

「いやいや、返しますよ! 受け取れませんって!」

「『インディギウム』が掘れる場所は普段、グリムフォードの部下が徘徊してやがる。だがしかし、この前大将が行った時には部下がいなかったらしい。あっち行ってろ、どら猫!」


 盾に爪を立てるジャイアントタイガーを、大剣を振るって追い払う。


「それって……!」

「そうだ! お前達が倒したからだ! その剣がお前の物になるなら、大将も本望だろうよ!」


 ――自分のおかげで作ることのできた剣。誰かのためにと思って、戦っていたけど、自分のためになるとは。


「……ありがとうございます」


 真っすぐジャイアントタイガーへと切先を向ける――


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