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Chapter 10  オックスの町

 次の日の朝。天気は快晴。目覚めるとなんとプラム先生の姿がどこにもなかった。プラムの寝床にあるのは一枚の紙だけ。そこには、黒い糸くずが取っ散らかったようにしか見えない、絵か字かすらも分からない何かが書かれていた。

 寝ぼけ眼をこすって、しっかり目を凝らしてみる。しかし、やはり糸くずか毟ったカツラにしか見えない。首をかしげていると、早朝の走り込みをしていたスピナーが帰ってきた。


「アルマ、朝から何見ているんだ?」

「いや……、朝起きたらプラム先生がいなくて。代わりにこれが――」

「『ちょっと寄り道してくる。先にオックスの町に行ってて』。先生の置手紙か」

「読めるの!? てかこれ字なの!?」

「……先生の字の下手さは常軌を逸してるからな。慣れと訓練は必須だ」


 ――なんでただの直筆を読むのに特別に慣れと訓練がいるのだ。仮にも先生だろうに。だがとりあえず、何事もないことにアルマは少し安心した。




 全員起きた後、朝食を取り、オックスの町へと向かう。スピナーによると正午までには着くらしい。青空の下、ゆっくりと歩いていた。その道中、アルマは『シトラス教』についてガーネットに説いてもらっていた――


「えーっと……。『不思議な力を持つ少女が、マデュラという町に降り立ち、突然現れた外敵をその身を犠牲に追い払った』。これがシトラス教の始まりで、その時の少女がシトラス教の主……てことであってる?」

「それであっていますわ。そうして長き眠りについた主は全ての魔を打ち払うことで目覚め、全てを光で照らすと言われていますわ」


 ――『シトラス教の主神が指輪の勇者を連れてくる』。クロニスの言葉だが、これが事実ならシトリーがシトラス教の主神という事になる。シトリー自身はクロニスの言葉は全て真実だと言っていたが、シトラス教についての言及は含まれているのだろうか。

 『光で照らす』という言葉にも違和感を感じる。シトリーは闇魔法の使い手だ。光魔法を使えないはず。そもそも、信徒は光魔法の使い手なのに主神が闇魔法の使い手とはどういうことなのか。

 アルマは何とも言えない妙な感覚に襲われていた。しかし、この件に関してはシトリー本人に問い詰めねば真実は分からない。アルマは一旦この違和感を置いておくことにした。


「そういえば、僕が元いた世界の宗教って、まぁ色々あるんだけど、宗教ごとにやっては駄目なことがあるんだよね。『肉を食べてはいけない』とか。シトラス教にも禁止されていることってあるの?」

「自殺、ピアスの穴あけやタトゥーを含む自傷行為、深酒、あと異種族との交流……だったか?」


 意外にも答えたのはスピナーだった。その顔は物凄くニヤついていた。


「ガーネットの口からだと言いにくいだろうからな」

「言いにくい……?」

「こいつこう見えて、酒はぶっ倒れるまで飲むし、太もものスカートでギリギリ隠れる位置にタトゥー掘っているしで、破戒も良いところなんだわ」

「ちょっ! なんでそれバラすんですの!? てか私のタトゥーのこと何で知ってるんですの!?」

「あれで隠してた、は冗談が過ぎるだろ」

「それ知らねーヤツ、修道院にいたっけ?」

 

 暴かれた真実に赤面し、両手で顔を覆って隠すガーネット。


「まさかみんなにバレてたなんて……」

「本音は?」

「とっても興奮しますわ!」


 ――ダメだこりゃ。敬虔なシスターかと思いきや、とんでもない癖を持っていた。普通禁止されていることを興奮目的で隠れて行う。感覚的には露出に近い物だろうか。どうであれ、ガーネットの知ってはいけない一面を知ってしまった気がしたアルマであった。

 こんなやり取りをしているとライムが声を上げた。


「オックスの町が見えてきたよ」


 森を抜け、開けた草原の向こうに広がる様々な色の家々。パーティは漸くオックスの町に着いたのだった。


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