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Chapter 9  極秘任務

 夜更け、パーティメンバーが全員夢の中にいる頃――


 とある洞窟の最深部。拘束した青年を連れ、そこへ向かう男が1人。手にしたナイフを青年に突きつけながら、暗黒の道を歩く。2人の足音だけが洞穴に反響する。

 自然の洞窟には似つかわしくない、怪しげで大きい扉が最深部にはあった。その扉を男がノックする。


「オフィーディア様! 洞窟前をウロついていた怪しいヤツを捕まえやした!」

「……入りなさいな」


 扉の向こうから聞こえる妖艶な声。男は勢いよく扉を開いて中に入った。

 部屋の中央にとぐろを巻いて陣取る何十メートルもある巨大な黒い蛇。それに腰掛けた桃色の髪をしたグラマラスな女性の魔族が眠そうにそこに佇んでいた。


「それで、どんな子かしら?」

「はい! コイツでございやす!」


 男は青年を突き出す。黒い外套を纏い、金色の瞳をした燃えるような赤髪の青年を。

 みるみる青ざめていくオフィーディア。


「レヴィ! この愚か者を喰らいなさい!」


 シャーッと哮りたつ大蛇。とぐろは崩さずに、頭部だけで素早く襲い掛かる。一瞬にしてその男の上半身を喰い千切った。その場に落ちた下半身を、青年はゴミを見るような目で見下していた。


「あーあ、死ンじまった」

「私の可愛いペットが失礼な真似を……」

「いや、構わねェ。テメェの隠れ家、無駄に複雑だから案内させただけだ。それよりコイツ、例の情報持ってねェだろうなァ?」

「ご心配には及ばないわ。既に尋問済み。彼は何も知らなかったわ、魔王様」


 合図をするオフィーディア。レヴィと呼ばれる大蛇は、尻尾で魔王の前に手すりのついた立派な椅子を差し出した。魔王は脚を組み、手すりに肘をついてその椅子に座った。


「相変わらず、人間を飼ってるンだな。だから、あの任務をテメェに送ったわけだが」

「だって、可愛いんだもの。みぃんな私を慕っちゃって。それに私が自ら戦うより、人間同士で戦わせた方が合理的と思わない? あ、魔王様、紅茶いるかしら?」

「いらねェよ。飲めねェし」

「ふふ、そうでしたわね」


 レヴィは尻尾を器用にポッドの取っ手に引っ掛け、オフィーディアが手にしているティーカップに紅茶を注いだ。


「それで魔王様、こんな夜更けにわざわざいらっしゃるなんて、どんな急用なのかしら? 先日受けた任務なら滞りなく進んでいるわよ」

「その任務なンだが、わりィが事情が変わった」

「事情が変わった?」


 オフィーディアの紅茶を飲む手が止まる。


「伝えることが3つある。まず1つ、指輪の勇者が現れた。名前はアルマ。ツラはさっき通信水晶で送った」


 オフィーディアは自身の胸の谷間から通信水晶を取り出す。その水晶には勇者の顔が浮かび上がっていた。それを見ながら、紅茶を飲む手を再度動かし始めた。

 

「ふぅん。私の好みじゃないわね。適当に他の幹部にあげちゃっていいわ」

「2つ目、その勇者アルマにグリムがやられた。本気を出したグリムがな」


 紅茶を噴き出し、咽るオフィーディア。レヴィがすぐに差し出したハンカチで、口元を拭いた。


「グリムフォード君がやられたの!? それもう私の手に負える相手じゃないわよ!?」

「落ち着け。最後3つ目。オレの読み通りなら、数日以内にここに攻め込んでくる。オマケを大量に引き連れてな。多めに見積もって3日以内ってトコかァ?」


 崩れるようにへたり込むオフィーディア。懐から紙と筆記具を取り出し、何かを書き始めた。


「……何やってンの?」

「遺書よ。任務も果たせず、勇者も討てない私は死ぬしかないわ……」

「はァ……。あのなァ、策略と事前準備で敵を嵌めるのが得意なテメェに、こンなゲリラ勇者の首取ってこいなンていう訳ねェだろ。これでも適材適所は理解しているつもりだ」


 「ホント?」と綴る手を止め、今にも泣きだしそうな顔をゆっくり上げる。


「テメェに言いてェ事はこうだ。『例の任務を指輪の勇者が来る前に終わらせろ。終わり次第、魔王城に撤退しろ』。……可能か?」


 すぐさま涙を拭い、元の自信に溢れた表情で姿勢を正す。


「ええ。もちろん可能よ」

「確実に成功させるために必要なモンは?」

「そうね……。私の代わりにあの子たちの指揮を取る人と、足止め用の兵力が少し欲しいわね」


 ニヤリと不敵に笑うネーヴ。身体を大きく動かし、勢いよく立ち上がった。


「オーケー。後で『ソラス』を送ってやる。あと『ルーシャ』が試作した人形がムダに余ってるからソイツも使え」

「ソラス様にルーシャ様の例の……。私に戦力を裂き過ぎではないかしら……!?」

「オレが今まで戦力の運用をミスった事あったかァ?」

「ふふ、ないわね。あなたが魔王を名乗った700年前からずっと……。だから私はあなたにこの命全てを捧げているの。……あなたの本当の目的を知ってもね」

「ハッ、精々オレに使いつぶされて、悔いなく死ね。……じゃあな。いい報告を期待しているぜェ」


 最後に言葉を残して、一瞬で姿を消した。

 

「さて……。私のペット達だし、できれば『お願い』で聞き出したかったけど、時間がないから仕方ないわね。アレを使いましょ」


 すっと立ち上がり、レヴィと共に別の部屋へ移動する。

 そこは書斎。こじんまりとした机とそれを囲うように設置された本棚。その見上げるような巨大な本棚にギッシリと書物が並べられていた。

 レヴィに最上部のとある本を取るように命じる。長い身体を起こし、鋭いキバの生えた口を使って器用に優しく本棚からその本を引き抜き、手渡した。

 「ありがと」と頭をなでるオフィーディア。レヴィを連れてさらに別の場所へと移った。

 そこは何もない薄暗い空間。何十メートルもあるレヴィが自由に動き回れるほどの広さを持った部屋だった。

 その部屋の中央に立つオフィーディア。目的のページを探して、手元の本をめくる。


「本当にあるのかしら……、各国を繋ぐ巨大な転送魔法陣なんて。全く信じられないわ。……でも、ソラス様を動かすという事は魔王様は本気ということ。なら私は身を粉にして従うのみ」


 目当てのページを開き、本を持つ手を真っすぐ闇に差し出す――


黒白分明こくびゃくぶんめいの儀。円環に踏み込みし、群生ぐんじょうの深淵を示せ。 真炎クリアフレイム!」


 照らされる空間。壁で踊る無数の影。純白、漆黒、どちらとも付かない灰色の炎がオフィーディアを囲うように燃え盛る。


「さぁ、レヴィ。私の可愛い子達を1人ずつ連れてきなさい。楽しい尋問の時間の始まりよ!」


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