Chapter 2 魔力過剰症
「魔法理論はスピナーに任せるとして、他どうしますの?」
「剣、オレ。食材、ライム。その他全部、オマエ」
「殴りますわよ?」
誰が何を教えるか、押し付け合……決め合うスピナー、ガーネット、ライム、そしてディーア。話し合いはしばらく続いていた。
その横でアルマは魔法大全をペラペラと捲り、流し読みをしていた。
『魔法とは、体内の魔力を様々に変換して顕現させる事象であり、戦うための術である。』
『基礎五属性"ファイア"、"ブリザード"、"ウィンド"、"グランド"、"サンダー"。それに光属性"シャイン"と闇属性"レイヴン"、無属性の"ソルセル"を加えて基礎魔法とする。』
身に覚えのある言葉に着目しながら、飛ばし読みをしていると、1つ気になる魔法が目についた。
魔力授与 対象に自身の魔力を一部分け与える魔法。
この魔法をガーネットに使えば、魔力が回復してこの怪我した左腕を治してくれるのではないだろうか。使い方も記載されている。イメージや感覚を言葉で綴ってある。
一通り読み、イメージを自分の中に作った。あとは試すだけ。
「ガーネット」
「なんですの?」
アルマはガーネットの手を優しく握って呟く。
「魔力授与」
包帯越しにほのかに光る指輪。体内を流れる魔力に意識を向けると、その指輪から左腕、身体、右腕と伝わっていくのを感じた。そして、ガーネットへと流れ込んでいくのを感じ取った。
そう。感じ取った。感じ取ってしまった。この魔法は成功させてはいけなかったのだ。
突如として口を押さえ、倒れるガーネット。目を閉じ、荒々しい呼吸をしていた。
目の前で起きた異常事態。すぐさまディーアとプラムが駆け寄り、容態を確認する。
「脈……よし。呼吸……不自然。意識……不明」
「おい! コイツ息はあるけど、意識ねーぞ!」
アルマの胸ぐらを掴み、問い詰めるスピナー。
「何した!?」
「そ、その魔法を試したんだ……」
アルマは開きっぱなしにしていた魔法大全を指差した。そのページに目を通すライム。
「なになに……、魔力授与……? 相手に魔力を分け与える魔法みたい」
「じゃあ何だ? ガーネットは魔力過剰症か? 普通ならないぞ」
魔力過剰症。名前からして魔力が多すぎて体調を崩す、的な症状だろう。おそらくアルマの膨大な魔力を流し込んだために引き起こしてしまったのだろう。
プラム先生が真面目なまなざしでアルマを見つめる。
「指輪の勇者の魔力はとっても多い。そのほんのわずか0.1%の魔力だけでも普通の人の許容量を超えちゃう。アルマ、約束して。魔力授与は使わないことを」
アルマは黙って首を縦に振った。
魔力過剰症は2〜3日魔法が使えなくなるだけで、体調自体はすぐ治るらしい。ガーネットを安静にして寝かせた後、一同も眠ることにした。アルマは眠りに入る前に指輪に願った。「シトリーに会いたい」と。




