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ギルドにて


 世界最大の迷宮都市ドライク。

 ここには様々な者達が日々集い、暮らしている。

 迷宮から採取される天然資源や希少品を世界へ流通させる商人。美味い食事を提供する大衆食堂や料亭。流行に沿った服を売る服屋。

 その中でも代表的なのはやはり迷宮に関わる者達だろう。迷宮へ潜り、踏破を目指すハンターやその者達の装備を作り出す鍛治職人、この都市の行政を司り運営するハンターギルド本部。


 数多の種族、多くの者が行き交うこの都市は世界で最も活気に溢れると言われている。

 そんな都市へ今日もまた一人の少年が訪れた。


◇◇◇◆◆◆


「新規にハンター登録をする方でよろしいでしょうか?」


「そうだ」


 都市の中心に白の建築石材で建てられているハンターギルド本部。

 都市へたどり着いたリオは、ハンターになるべく早速ギルドに登録をしようとしていた。


「かしこまりました。ではこの書類に記入をお願いします」


 ギルド本部の窓口を担当する受付嬢は書類を取り出し、リオへ手渡す。

 受け取ったリオは中身を素早く確認する。


 (記入必須の欄は、名前、性別、年齢、迷宮に潜る際の自己責任の同意ぐらいか)


 リオは手早く書類の欄を埋め、受付嬢に返す。書類の欄が埋まっているか確認した受付嬢はある欄で目が止まった。


 (年齢が15歳か。若いな〜、少し心配。名前はリオ・イグルドね、ふ〜ん。・・・・・・イグルドぉぉ!?)


 目の前の少年の姓にとても聞き覚えがある受付嬢は顔の筋肉を総動員してなんとか微笑を維持する。

 そうして表情を保ったまま、受付嬢はリオに出身地を尋ねた。


「イグルド様ですね?失礼ですがご出身はどちらなのかお伺いしてもよろしいでしょか?」


「東のガラド帝国だよ。まことに遺憾ながら」


 予想通りの返答を聞いて、ついに受付嬢は背中まで伸ばしたストレートの茶髪を揺らしながら天を仰いだ。


 (やっぱりか!イグルドといえば東の帝国きっての武闘派である将軍と同じ姓!どう判断すればいいのこれ!?私なんかじゃ手に余る。ギルドマスターへ報告しないと)


 なぜガラド帝国出身だと問題なのか?ガラド帝国、通称東の帝国と呼ばれている国は、迷宮都市ドライクと非常に敵対的な関係であるからだ。


 彼の国では人族以外に人権というものがない。国内にいる亜人は全て奴隷にされており、奴隷を調達するために非合法な組織とも繋がりを噂されているほどだ。


 様々な種族の者がいるこの都市は当然その様なことを認めるわけがない。東の帝国の身勝手な行いのせいで、都市内の人族と亜人の関係まで悪い影響を受ける可能性も考えられるのだ。


 そんな全ての亜人から敵意を向けられている東の帝国からやってきた者を疑わない方が問題である。

 受付嬢は頭を元の位置に戻し、リオへ顔を向けた。


「申し訳ありませんが少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」


「わかった」


 リオが素直に頷いてくれたことへ安心し、すぐさまギルドマスターへ報告に向かう。


 足早に移動する彼女を見てギルド職員の同僚達が珍しそうに眺めてくるが彼女に気にする余裕はない。

 階段を駆け足で登り、二階に着くとギルドマスターの執務室へ直行する。

 執務室の前に立ち、息を整えてから彼女はドアをノックした。


 ーーコン、コン。


「失礼します。ギルドマスター。緊急のお知らせがあるのですが、お時間いただけますでしょうか?」


 受付嬢が執務室の中へ声を掛けると、ドタドタッとした音が響き何かを急いで片付ける音が外まで聞こえてきた。


 (・・・・・・また仕事サボってたな、あの人)


 室内から音が収まったから少しするとようやく返事が返ってきた。


「な、なんじゃ〜、とりあえず入っていいぞ〜」


 すぐさまドアを開け室内に入室すると、執務室のイスへ腰掛けて、いかにも『さっきまで、仕事してましたよ?』といったオーラを醸している子供にしか見えない姿の女性が受付嬢の目に入ってきた。


「ギルドマスター。仕事をサボるのもほどほどにしないとまた書類が溜まりますよ?」


 受付嬢はまず初めに日頃から行なっている、釘刺しもとい先制口撃を発した。

 少女にしか見えないギルドマスターは、わかりやすく動揺し、必死に誤魔化そうとする。


「な、なにを言うか、アテル!机の上をよく見てみろ!しっかり書類とペンが置いてあるじゃろ!これは儂がしっかり仕事をしていたという確固たる証拠じゃ!」


「ええ、本来ならギルドマスターが記入すべきはずの欄が全然埋まっていない書類の束ですね。仕事をサボっていた確固たる証拠。確かに確認しました」


「こ、これは違う!なにかの陰謀じゃ〜!誰かが儂を嵌めようとしたんじゃ、そうに違いない!」


「はいはい」


 ギルドマスターの相手をマトモにしてはならない。ギルド職員がまず初めに先輩から教わることだ。適当に受け流すのが一番いい。真面目に相手をするとこっちが力つき、仕事をする体力がなくなる。

 金髪の受付嬢、アテルもそれを心得ており、サッサと本題へ移った。


◇◇◇◆◆◆


 リオは窓口の前で待ち続けていると、何故か隣に少女を連れているアテルが戻ってきた。

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