1-1、落下物
周りに触発されて何か出力してみる事にしました。
右も左もわからないズブの素人ですが生暖かく見守って頂けると幸いです。
「お嬢様、どちらに行かれるのですか!?」
いかにも執事風の黒髪の青年が家を飛び出した少女に叫んだ。
「んー、また森の中をぶらぶらとねー、それと「お嬢様」はやめてって言ってるでしょー、そんな柄じゃ無い、しー……」
白いウサミミカチューシャの様なリボンを付けた長い黒髪の少女が少し膨れっ面で答えた。
「おじょ……アリシア様、今日は貴女様のお誕生日なのですよ? サリア様もご心配なされます」
「お母さんにはそんなに遅くならないから大丈夫って言っといてー!」
「だいじょ……お伝えは致しておきますがくれぐれもお気をつけて!
「もー、ヴェリオンったらいつまで経っても私の事子供扱いなんだからー!」
アリシアと呼ばれた少女は愚痴を溢しつつも止まる事は無い。
子供扱いと言ってもアリシアは今日で12。実際まだまだ子供である。
アリシア達は森の中の少し開けた土地にある小さな家に住んでいるが、アリシアには森の散策が面白くてしょうがないのだ。
物心ついた時からここで暮らしているが、森は行く度に違う顔を見せてくれる。
歩く度に足元の落ち葉がしゃくしゃくと音を立てる。
鬱蒼と生い茂る、しかし陰鬱さは無く、むしろ爽やかさすら感じる森の中、緑色を帯びた柔らかな木漏れ日が静かにアリシアに降り注いでいた。
と、突然アリシアの視界が塞がれた。
「こぉ~らぁ~?」
白衣に眼鏡の黒髪の女性が両手でアリシアの目元を遮っていた。
「お、お母さん!?」
アリシアの母、サリアである。
「元気なのは実に結構だけどあまり心配かけんじゃないわよー?」
「は、はぁい……」
「ま、今日は大目に見てあげる。その代わり、はい、これ。」
若干シュンとしたアリシアの首に何かが巻かれた。
「……? これ……マフラー……?」
「誕生日プレゼントにと思って作ってたんだけどね、ウチのお嬢様は何処行くかわかんないから今渡しておくわ、言っとくけどただのマフラーじゃないからね、危なっかしいアリシア用のお守りよ」
「おまもり……?」
「詳しい説明は省くけど、あなたなら大丈夫」
サリアはアリシアに優しく微笑みかけながらそう言った。)
「……?」
色々と腑に落ちない点はあったが、話が一段落したのを察するとアリシアの顔に再び活気が戻ってきた。
「よくわかんないけどありがとー! 大事にするね!」
「大事にされるのはあなたの方だけどねー
「?」
「ま、いいわ、気をつけていってらっしゃい」
「はーい!」
アリシアはサリアにぶんぶんと元気良く手を振りながら森の奥へと消えて行った。
「さて、と。これで下準備は一通り出来たかしらね。…万全に出来れば良いのだけれど…」
サリアは誰に言うでもなく独りごちた。
「なにせ私の可愛い可愛い娘だからね!」
そう言ってフフッと笑みを溢した。が、何故かすぐにその表情が曇る。
「アリシア……本当に気を付けてね……私は……」
その目は何処か遠くを見つめている様でもあった。
――――――ナルズバルトの森。
都市部からも遠く離れ、付近に町や村もない辺境のど田舎である。森の中に家が一軒だけって時点でお察し下さい。
そんな場所にアリシアの誕生日の朝方、何か大きな物が落ちた様な轟音が響き、家の窓からは煙が上がっているのが見えた。
「何か……落下物の様ですね……」
「……何かしら。あ、近付くんじゃないわよ? 危ない物だったらマズいし」
ヴェリオンもサリアも大して興味を示さなかった。
が、アリシアは別であった。
「離れた所から眺めるくらいなら大丈夫でしょ。多分。」
適当な見通しであった。
煙が見えた方角に向かってアリシアは歩を進める。
森の中はいつも通りであった。所々地下に樹木の根がある為か、地面に緩やかに波の様な凸凹があるが、慣れている為、大した問題では無い。
しばらく歩いていると、木々の密度が低くなっている場所に抜けた。
その向こうに、大分収まってはいるが、煙を上げている物体が見えた。
「見つけた! ……何だろう? 大きな……箱……?」
それは所々ひしゃげてはいるが、大雑把に見て長方形の箱形をしている様に見えた。
よく見ると側面の一部が剥がれ……いや、開いているのが見えた。
そうなると中が見たくなるもの。
アリシアは少しずつ「箱」に近付いて行った。
「……中で何か小さくピカピカ光って……?今までこんなの見た事もないなぁ……ッッ!?」
その時である。
背後から衝撃と共に爆発音が聞こえた。
「!???」
丁度アリシア達の家のある方である。木々の隙間から火の手が上がっているのが見えた。
「え…ちょっ…何…!? 何か今日は騒がしいなあ…。」
騒がしいとかいう話だろうか。
「…じゃなくて、…ウチ!?ウチに何かあったの!?」
たちまち朝のそれとは比べ物にならない程煙が立ち上り、森の中に焦げ臭い匂いが立ち込め始めた。
「…あなたなら大丈夫」
先程の母の顔が脳裏をよぎる。
「お母さん…! ヴェリオン……!」
アリシアは無意識のうちに自宅へ向かって駆け出していた。
不安感からか、家までの道のりが何処までも続いている様に思えた。しかし、のんびりしているわけにもいかない。
家は、家族は無事だろうか。…「箱」の事は頭の中からすっかり消え失せていた。首に巻かれたマフラーをぎゅっと握り締める。
「っは……、はっ……、はっ……!」
アリシアは息を切らせて森の中を進む。
もう幾つか木々の濃い所を抜ければ家が見える…!
不安と焦りから、更に足を早めた。
もう少し…! もう少し……!
「ッ!?」
その時、不意に足元から踏み締める感覚が無くなり、アリシアは地面にぽっかりと開いた穴の中へと落下した。
落ちるのがオチってね。ってそうではなく(無くも無い)
病気の関係で次回更新は未定ですがよろしければお付き合い頂けると幸いです。
前書きと似た様な事言ってんな……芸が無いとも言う。