魔物うじゃうじゃ
「こんなに沢山いるなんて!聞いてないわ!」
マヤは叫んだ。
湖を超え東側の森の上空から飛び降り、ルナと別れたマヤは地上の魔物と対峙していた。
ルナの空中戦にマヤがいると邪魔になってしまうからだ。
南にいた巨大ドラゴンといい、東にいる魔物・・・これは何?!!
文献で見たケルベロス?でも、角が生えてて何か模様も入ってるし!
全身に印を現せたマヤは気を纏い、決死の覚悟で戦う。実戦で魔物と闘うのは初めてのこと。
しかし、ルナとともに小さいころから鍛錬を積んできた。その成果は十分に発揮できている。
対してルナの方は・・・ワイバーン?!!なんで頭が2つ??
おかしい・・・ここの魔物、文献の挿絵と違う!!!
文献に描かれていたのは、一般的な魔物。勿論それでも十分強力なのだが、この森の魔物はさらに強力だ。
森の瘴気の濃度は年々増し、それに伴って魔物も独自に進化していったのだ。
そう、トルード族が進化したように魔物も・・・そしてより環境に適応できた遺伝子を持ったものが生き残っていく。
「「はぁ、はぁ・・・」」
森の中、1本の木を背にもたれて座り込む2人。その周りには希少種の名だたる魔物達が息絶えている。ケルベロス、ワイバーン、キマイラ、コカトリス・・・全てに?がついてしまうくらい形態が怪しい。
「今日はここで休もう。」
マヤは結界を張る。そしてその周囲2mを周辺より濃い瘴気で包むために、とある小石を1つ結界の外に置いておく。これで魔物は近づくことさえできない。遠隔攻撃は・・・ちょっと不安だが、瘴気が散ると多少は被害が出るので、多分大丈夫!
この小石は瘴気を発生させることが出来、結界の外側を瘴気で包むように魔法陣が付与されている。
島の北側にそびえる山は、瘴気石の宝庫だった。島民は瘴気の源であるその山を恐れ、なるべく離れて暮らすよう南へと居を構えていた。
瘴気の耐性があるマヤはこの島を出るにあたり、その山へ向かい瘴気石を数個、拾い集めて持ち出すことにした。小石でも十分脅威になる。勿論結界付きの箱に厳重に仕舞ってある。
「ルナ、はいこれ、薬飲んでおいた方がいいわよ。」
マヤは、ストレージから薬を出す。
瘴気の影響を和らげる作用のある薬である。
「・・・いらない。ここは大丈夫」
島の瘴気は濃いけど森は大したことはないので断った。
ルナは手のひらをマヤに向けて断った。
そう、人間の手のひらである。ルナはドラゴンから人間の少女へと変身していた。