魔物の卵
島の浜辺で大きな卵を見つけた島民は、何かしら魔物の卵であることは分かっていた。
この島は瘴気のおかげで、魔物の被害がない。実際、この卵が孵化し魔物が誕生したとしても、生存できる確率は低かった。
だが、もしものことを考えると、やはり卵はここで壊す方がいい。
島民が卵の周りに集まって、処理の方法を考えている。
「おばあ!あの卵に赤ちゃんいる?」
ある少女は祖母に聞いた。
「さあねぇ、いるのかね~」
祖母は、孫の顔を見て微笑んだ。
「マヤ、あの卵ほしい!」
島民は島の中で唯一の子供、マヤの願いを聞き入れることにした。
ただし孵化してどんな魔物が誕生するのか確認するまでという条件で・・・。
卵は80cm×60cmと大きく、とても4歳のマヤに世話は出来ないので、管理は島民全員ですることになった。
マヤは卵が孵ることを、心待ちにしていた。
来る日も来る日も・・・
マヤが4歳の頃、島民は全員で30人ほど、瘴気の影響で病気になったり、湖の猟に出て魔物にやられたりと、その数は減っていく一方だった。
島民の中には、島を出て行ったものもいる。無事に森を出て行ったのかは分からないが、戻ってきた者はいない。
マヤの両親はすでに他界していて、祖母に育てられているが祖母も瘴気による病気にかかっている。
瘴気の影響を和らげる薬を常時飲んで、症状を抑えてはいるが体調は良くはならない。
文献によると島の中にあるもの、特に薬草は貴重で森の外では高額で取引されるものもある。
瘴気の問題はあれど島は、とても豊かである。
動物や植物は瘴気によって影響を受けるものや受けないもの、それぞれではあるが少人数を賄うだけの供給量は十分あった。
そして、ついに卵が孵った!