名もなき島
「マヤ、行こう」
「・・・うん。」
真っ白い砂浜に2つの影がうつる。
私は今日、生まれ育ったこの島を出ていく。多分もう、ここに戻ってくることはないだろう。
「背中乗って。しっかり捕まって」
そう言うドラゴンの背中にゆっくりと乗り込んだ。
「ありがとうルナ。一緒にいてくれて、すごくうれしい。」
背中をなでて湖の方へ顔を上げた。
「うん、ルナもうれしい」
ルナは大きく翼をひろげ、一気に高度を上げていく。
見下ろせば小さくなった島が見えた。
(私、頑張ってみる)
マヤは心の中でつぶやくのだった。
この瘴気に満ちた島は、魔物さえも寄せ付けない特殊な生態系を保っている。
約200年前、瘴気の耐性を少なからず持っていたトルード族は、国を追われこの地に辿り着いた。
だが瘴気はやはり毒である。その上、以前よりもなぜか濃度が増してきていた。
耐性があるとはいえ体は徐々に蝕まれてく。
この島には瘴気の病を治す薬草も存在するが、薬草で治癒したとしても、この島に住み続けるのであれば結局は変わらない。
この島を出ていくことが一番の治療になるのは誰もが分かっていたのだが・・・
1人また1人と命を落としていく中、ついに生き残ったのはたった一人、マヤだけになってしまったのだった。