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C破滅1

C破滅


 回る回る貴女は回る

 僕の周りを笑顔が回る

 あまりに踊って回り疲れて

 僕は貴方を立たせて消えた


 

 女はやはり一糸纏わぬ姿が美しい。その女の一番は肌が露わになっている瞬間だ。これはもちろん当たり前だが、顔も良くてスタイルも良いならそれ以上美しいものはない。故に人はそれを絵に描き石に掘るのだ。個人が特定されないように大事なところを隠して。


 「次は八十八番だ、花」


「はい、マスター」


 ふっふっふっふっ、はっはっはっはっ。遂に手に入った。遂にあの花が手に入った。もうあの花は俺の操り人形だ。


 花が来てからもう一週間か。すっかり馴染んでしまってよー。くっくっく、はっはっはっ。元あった花びらが散って新しい花びらを埋えるまではもうすぐだ。立派な奴隷娼婦になるんだぞ、

花。俺が散々弄んでから高値で売り飛ばしてやるから安心しろ。


 ふっふっふっふっ、はっはっはっはっは。


「兄貴ぃー。外でうろうろしてたんで簡単に捕まりましたぜ」


「よくやった。別室で待機させておけ。ああ、遊ぶのはまだほどほどにな」


 言っておくが、俺だってこんな卑劣なやり方を最初からしようなんて思ってない。花が俺の好意を受け取らなかったのがいけないんだ。ああ、懐かしき思い出。その話をしようか。


 俺がこの大学に入ったのは約半年前。他の学生に埋もれていくように俺はサークルを探していた。自分が輝けるようなサークルを。そこで見つけたのが軽スポーツサークルだった。表向きは色々なスポーツを楽しむサークルだが、裏を返せば毎回ある飲みや男女の品定めをするようなサークルだった。ここでなら輝ける。俺は確信した。自慢じゃないが、スポーツ万能、美形な顔立ちには自信がある方だ。


 俺はすぐに頭角を現した。とはいえ、面倒臭い場所だ。仮にも体育会のノリがあるスポーツ系のサークルだ。上下関係にも気を付けなければいけない。ま、外面にも自信はあったから基本的には問題なかったが……。


 それでも看破する奴ってのはいるものだ。それが年齢によるものなのか、母数によるものなのかはわからないが、さすが、と言うべきか。



 「単刀直入に聞く。ここに何しに来たんだ」


 名前なんて覚えてないから、暫定的にプー太郎と呼ぼう。


「何って、先輩に呼ばれたからここに来たんでしょ」


「変な問答はやめろ。俺の前ではてめぇの素顔で話していい」


 はぁ……。熱血系は嫌いなんだよな俺。


「はい……、そうですね……、別に何も。自分の好きな場所で活動する。それがサークルですよね。ここだと輝ける。そんな気がしたので」


「はぁ、じゃあ聞くがてめぇの好きってのはなんだ。活動ってのは何をしている」


 おっ、鋭いねぇ、プー太郎。


「スポーツですけど何か」


「ちっ、輝けるってのは何のことだ」


「見たまんまですよ。スポーツにちょっと自信があったので、ちょっとしたスターになれた。先輩を差し置いて申し訳ないですけど。そのこと怒ってます」


 俺の仮面は鉄仮面―。


「……。俺の幼馴染がてめぇに惚れた」


 ああ、そういうこと。


「ぷぷっ、何ですかそれ。先輩がバラしていいことなんですか」


 プー太郎ちゃん、笑いが止まらないよー。


「そしていなくなった」


 その言葉を聞いた瞬間、カッと瞳孔が開かれる。


 そうか、サークル入会してそこそこの頃、そういえばそんなハエいたっけかな。記念にプー子と名付けてやろう。


「そうなんですか。知らなかったです。心配ですね」


 一連の過程を経て、見事三千万で売れたっけっかな。ふふっ。


「しらばっくれてんじゃねえ。てめぇが隠したのはわかってんだ。さっさと返しやがれ」

プー太郎に胸倉を掴まれながらそう言われる。唾が汚いっての。


「そんな。知らないですよそんなの。今どこにいるかなんか知りませんよ」


 そう、「今は」、ね。


「ちょっとそこ何してんの」


 そこに現れたのが我が天使、花である。プー太郎の手が離れる。


「いえ、何も」


「鹿島君とプー太郎君ね。喧嘩、じゃないよね」


 なにぶんプー太郎の名前は憶えていないから勘弁してくれ。


「ええ、全然違います。ね、先輩」



「ああ、ちょっと話してただけだ」


「話してただけで、胸倉掴むんだ」


 花もだいぶ鋭いんだ。そこが良いんだが。


「胸倉ってどうやって掴むのか教えてもらっていたんです。俺経験無かったんで」


「ほんと」


「ああ……」


 花はしばらく二人の表情を交互に見て、一息つく。


「まあいいや。喧嘩はしないでね」



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