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ボス戦。

「ははは。見ろよ、あいつぶっ倒れてるぜ」


「あらあらこんなところで寝てたら風邪引くわよ?」


通路で倒れたマサトを発見した3人組。目が虚ろのままなのを確認し、再び催眠をかけた。


「それにしてもこいつもなかなか可哀想だよなぁ」


「ええ、あの足とここまで辿りついた豪運があれば将来、いい冒険家になれるんじゃないかしら?」


「でもぉここで囮にするから死ぬんじゃない?この子」


「間違いねぇ!ハハハ!」


男は面白そうに膝を叩くが、すぐにやめた。そして真剣な顔で他の2人に向かって言った。


「ここのボスを倒したらさ、俺たち。その…結婚、しないか?」


マサトは殴り殺したい気持ちを抑えた。


「「…!!!」」


女達は恥ずかしそうに顔を伏せ、体をくねくねさせた。マサトは舌を噛んでなんとか理性を保った。





そして彼らはボス部屋まで来た。


「よし。しっかり休憩を取ってから挑もう。幸いここは魔物も入ってこないセーフティゾーンだ」


「…ねぇ。ひとついいかしら?」


「なんだい?」


「その…ま、前祝い!前祝いしない?」


「あ!先越された!私が言いたかったのに!!!」


マサトを壁裏に押し込んで、3人はゴソゴソし始めた。時折聞こえる微かな嬌声にマサトから立ち上る殺気は留まることを知らない。


(クソッタレが…絶対ぶち殺すからな…)




数十分後、ツヤツヤした2人とちょっと痩せた男がボス部屋の扉を開けた。

中には動く鎧がビシッと整列していて、奥にはいかにも王様です、と言った鎧が豪華な椅子に座っていた。


「囮、なるべく掻き乱す感じで死んできて♡」


女が命令すると、マサトは走り出した。目にも止まらぬ速度で鎧たちの中を駆け巡った。


「ひゅーなかなかやるじゃん、アイツ。敵の攻撃結構避けてんじゃん」


「感心するのはいいけど、囮がスタミナ切れする前にさっさと倒すわよ」


そう言って女が鎧の1匹に向かって火炎玉を飛ばした。それに続くように男も剣を抜いて走り出した。


「ハハハ!こんな動く粗大ゴミ、俺様の敵じゃねぇ!!!」


男は剣を振り回し、次々に鎧を砕いて回った。


(よし、その調子だ…そのまま前に進め…)




そして遂に残った鎧が3体ほどになった時、王様鎧が立ち上がった。


「くくく。ついにボスのお出ましか!全部俺がぶっ壊してやるよ!」


「油断はしちゃダメよ!囮くんがへばって使い物にならないわ!」


囮ことマサトは出口付近で倒れていた。


「あぁ!援護は頼んだ!行くぞ!」


男が駆け出そうとした時、後ろから強烈な衝撃を受けた。


「んなっ!?」


「キャッ!」


よく見ると女2人だった。


「な、なにやってんだ!?」


「し、知らないわよ!!なんか急に押されて…」


「どうしたんだ?ユリ。真っ青な顔して?」


「あ、あ、あ…」


女が前を指すので見てみると、王様鎧が目の前にいた。彼らはヒモで拘束され、団子状態にされていた。


「よかったよかった。うまくひとまとめになるかどうか心配だったんだよね」


声の主はヒモの先端を持つマサトだった。


「なっ!?てめぇ!なにしてくれてんだ!?」


「さぁ?君たちが気に食わなくてさ。ちょっと始末しちゃいたい気分なんだよね」


「はぁ!?ふざけんな!コラ!俺たちを解放しろ!!」


ヒモをちぎろうとするがちぎれない。むしろますます拘束が強くなった。


「なんだよこのヒモ!なんでこんな安っぽいヒモがちぎれないんだ!?」


「それは僕特製のエンチャント済みのヒモだからだよ」


信じられない様な目を向ける男。


「うそつけ!エンチャントなんてそれこそ超一流の魔術師とか勇者とかしか出来ないと聞いたぞ!!!」


「僕がその勇者…いや、元勇者だと言ったらどうする?」


「は!てめぇが勇者なわけがないだろ!ヒョロガリで辛気臭い顔してる奴が勇者なわけがねぇ!嘘をつくのも大概にしろ!」


「あ゛ぁ゛?誰の顔がブサイクでのっぺらぼうだぁ?」


顔について触れられてブチ切れた。マサトにとって、勇者を無理やりやめさせられたあの王の言葉がまだ地雷なようだ。


「だ、誰もそんなこと言ってねぇよ!」


「そうか。それが遺言なんだな」


「え?」


赤熱爆破(パーナムブラスト)


魔法によって予め仕込んでおいた火薬に引火し、轟音と共に天井が崩れ落ちた。もちろんその下にいた3人組と罪なき王様鎧その他鎧達も巻き込まれた。


「別に直接殺せねぇってのなら他の手段を使うまでだ。これが俺の、王国への反逆の第1歩だ」




その後、クリア報酬である宝箱を瓦礫の中から掘り出し、開けようとした。そのときだった。


「お兄さんが、勇者?」


急に声をかけられ驚いて振り向くと、そこには可憐な少女が立っていた。ただその頭には異形のツノが生えていた。

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