第05話 少女との出会い
久しぶり?……いや。気のせいさ!!
街を出てから3日後、俺たちはドルドの街に到着した。途中、狼や猪に追いかけられたりしたがまぁ、大きな問題はない。
「うわぁ、ここがドルドの街かぁ」
ジールが目を輝かせて言った。ドルドはかなり栄えた街だ、田舎育ちのジールが興奮するのも無理はない。
中央都セルリアはこんなもんじゃないぞ。と言いたいところだが、ジールと共に育った俺が言うと明らかにおかしいのである。
「取り敢えず、泊まるところを探そうぜ」
「うん」
俺たちはジールの両親から、2週間は暮らせるレベルのお金を貰っていた。本当にありがたい。
「お金を節約しなきゃいけないから一番安いところがいいな」
「えー、お金いっぱいあるんだからもっと高いところじゃダメなの?」
「ダメだ」
こう言うのはキッパリ断らないとな。ジールとて10歳だ。贅沢したい気持ちもわかる。
「そっかぁ」
まぁ、10歳にしては素直すぎかな。
数十分街を歩いていると、いかにも安そうな宿屋をみつけた。見た感じだと、建てられてから50年くらいは経過していてるだろう古い建物だ。
……ゴクッ
その外見から、思わず唾を飲む。
「い、行くぞ。ジール」
「う、うん」
ガチャッ……
「し、失礼しま〜す」
俺たちは恐る恐る中に入った。しかし、受付の場所には誰もいない。
「すいませーん!誰かいませんか!」
大声で叫んでみる。ジールが止めろよと言わんばかりに腕を引っ張っているが、無視した。
トン…トン…
階段から足音がする。誰かが降りて来たみたいだ。
そして、壁からヒョイっと顔だけ出てきた。
「い、いらっしゃいませー」
なんと出て来たのはイカつい爺さんでもなく、うるさそうな婆さんでもない、なめらかな青髪の少女だった。年齢は多分14歳くらいの。
「こ、こんにちは!お金はあるんで、こちらに泊めていただくことは可能でしょうか!」
元気よく聞いてみた。すると・・・
「あぁ、別に構いませんよ。部屋は2階にあるので好きに使ってください。お金は後払いで大丈夫ですので」
あっさりと了承してくれたのである。
俺たちは2階に上がり、べッドが2つある部屋を借りることにした。
「ふぅ、ようやく一息つけるな」
「そうだね。中は思ったより汚くないし、大丈夫そう」
「多分、この街に滞在できるのは4日程度だな」
「え、そんなに早いの?」
「あぁ、早めに行って色々下見が必要だろ?それに、ギリギリに出て時間に間に合わなかったら終わりだしな」
「たしかに……」
「さぁて、泊まる場所も見つかったし今日は街でも見に行くか!」
「あれ?特訓しないの?」
「たまには息抜きも必要だろ?」
「うん、まぁ。そうだね」
俺たちは出掛けることを告げに階下へ行った。
「あのー!僕たち今から街に行って来ます!」
結構な大声で言った。特に意味はない。
すると店の主人である少女はビクッとして、
「も、もう少し小さい声で良いですよ!心臓に悪いです!」
と言った。
なんだ、意外と愛想のあるやつじゃ無いか。
そう思いながら俺とジールは街に出かけて行った。
・・・
宿屋に帰宅すると、夕飯が用意されていた。
「街の散策は楽しかったですか?夕飯を作っておきましたので冷めないうちにどうぞ!」
少女が爽やかな顔で俺たちに言った。
「あ、ありがとうございます」
そして俺たちは少女と共に食卓についた。机に並ばれていたのは、シチューだ。
「わぁ、いい匂い。いただきまーす」
ジールが早々と食べ始める。全く純粋なやつだ。
「んん。すっごく美味しいです!」
よほど美味しいのか、ジールは満面の笑みで少女に語りかけいた。
「あの、本当にいいんですか?頂いちゃって」
「当然です!あなた方は私のお客さんなんですから」
「あぁ、ありがとうございます」
俺も用意してくれたシチューを食べ始めた。
モグモグ……
あ、美味いなこれ。
「とても美味しいです。本当に、」
少女は微笑みながら、「そうですか」と言った。
「これ全部一人で作ったんですか?」
「えぇ、そうですよ」
「大変……ですよね」
「まぁ、たしかに時間はかかりますけど、それほど大変では無いですよ。仕事ですから!」
「なるほど……」
「ところで、なぜこの街に来たんですか?両親は一緒じゃ無いようですが……」
「あぁ、俺たちセルリアに用事があって……」
「セルリアに?そこに両親がいるとか?」
「いや、まぁ。……そんな感じですね」
「ふーん。こっからセルリアまではあんまり猛獣はいないと思いますが、気をつけてくださいね」
「あ、ありがとうございます」
すると少女は笑顔で返してくれた。
優しい人だな。
「「ごちそうさまでーす」」
夕飯はあっという間に食べ終わった。
最初は愛想の無い人かと思ってたが、とても親切で愛嬌のある人だったようだ。
ご飯も食べ終わったことだし、俺は気になってることを尋ねてみた。
「あの、なんでこの宿を一人で経営してるんですか?」
「え、あぁ。そうですね」
少女は少し考えてから話し始めた。
「私はもともと、ギルドで金導級魔導士をやってたんです」
「……え?」
いやいや、いきなり問題発言だぞこれは。こんな少女が金導級?!魔導士の最高階級[大魔導士]の一個下だぞ?!
「どうかしました?」
「あ、いや。なんでもないです。続きお願いします」
「あ、はい。……それで、この店は私の母が経営してたんですけど、2年前に突然行方不明になってしまったんです」
行方不明……。
俺の両親とも何か関係があるのかな……。いや、考えすぎか。
「それで、母の意思を継いでこの店を継続させてると?」
「はい。でも本当は引き継がなくても良かったんですけどね。曽祖父の代からあるこの宿屋も、母の代で終わらせる予定だったそうです」
「じゃあ、なんで引き継いだんですか?」
「ただ、私が母の意思を引き継ぎたかっただけです。それに……」
少女は少し顔を暗くして言った。
「魔物と戦うのが、怖くなったんです……。いつ死ぬかもわからない前線で戦い続けるのはもう嫌になって」
なるほどな。魔導士を引退するには丁度良かったって事なのだろう。冒険者は命懸けの職業だ。逃げ出す人もこれでもかと言うくらい見てきた。年齢的にも、この少女が逃げ出すのは無理もないだろう。
「本当、笑いものですよね。人々を守る役目の人が、怖くて逃げ出すなんて……」
少女は苦笑いして言った。
そんな事無いですよ。なんて都合のいい事は言ってあげられない。だが一つ言えるのはーー
「逃げる事は弱い事じゃ無いと思いますよ」
「……え?」
「逃げたい時は逃げたって良いじゃ無いですか。でも、自分の覚悟から逃げたらそれは本当の弱者です」
「自分の覚悟……ですか」
「俺とジールは世界ギルドを目指しています。それは興味でも指図でもありません。自分たちで覚悟して決めた事なんです。大切なものを奪われる悲しみから、皆んなを守るための覚悟です」
「あなたは一体……」
「俺はティア。ただの10歳児ですよ」
「あなたの生き方に文句なんて言いませんが、少しは自分を信じてもいいんじゃ無いですかね」
俺は笑いながら少女に言うと、いつの間にか寝ているジールを起こす。
「うぇ?あれ?ここどこ?」
どうやら寝ぼけている様だ。
「ジール、上行くぞ」
「ふぇ?」
俺はジールの肩を持って階段を登る。
「あ、そうだ。そういえば名前なんて言うんですか?」
「あ、私の名前はラミラス・レンデントです」
「ラミラスさん。夕飯とても美味しかったです。ありがとうございました」
俺はニッコリと笑って2階へ行ったのだった。
翌日、何やら良い匂いがして目を覚ました。
……なんの匂いだ?ラミラスさんが朝ごはんを作っているのかな?
そう思って下の階を覗くと、案の定朝食を作っていたようだ。すかさずジールを起こしに行く。
「ジール起きろ!ラミラスさんが朝ごはんを作ってくれてるみたいだ」
「ラミラスって誰?」
ジールが眠そうにしながら言った。
あぁ、そうか。コイツ昨日寝てたんだったな。
「まあいいから行くぞ」
俺はジールと共に階下へ降りていった。
「「おはようございます」」
「おはようございます!朝食の準備がもうすぐ終わるので、そこに座って待っててください!」
ラミラスさんは台所にある椅子を指して言った。
俺たちは言われた通りに、ダイニングにある椅子に座る。
「ねぇ、ティア。今日は何の特訓をするの?」
ジールが椅子に腰をかけながら言ってきた。
「まだ秘密さ」
「気になるなぁ」
俺たちが会話をしていると、やがてラミラスさんが朝食を持ってきた。
「どうぞ!召し上がってください!」
「「ありがとうございます!」」
元気よくお礼をし、俺とジールは朝食を食べ始めた。
うん。やはりラミラスさんの料理は美味い。
朝食を終え、俺たちは特訓に出かけた。
「どこで特訓やるの?」
ジールが心配そうに聞いてきたが、全くもって問題ない。
「もうすぐ着くから大丈夫だ。」
そう、昨日の息抜きはただ歩き回ってたわけではない。特訓できそうな場所を探してたのだ。
「さぁ、ついたぞ」
俺が連れてきたのは、人気が少なく周りに民家がない広々とした空き地だった。特訓をするには絶好の場所だ。
「へぇ〜こんな所があったのかぁ」
ジールが驚いた顔をして言った。
「それで、今日はなんの特訓をやるの?」
「まぁ、これを特訓と言えるのかはわからないが」
俺はジールの方に振り返った。
「ジール、今から俺と戦え」
「……え?」
それがティアの秘密にしていた特訓内容であった。
はいすいません真面目に書きます。