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転生した勇者  作者: 早苗ナツキ
第一章 始まりの地
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第02話 決意

  村の焼失から2日後。俺は隣の街に来て、初めて世界の情報を知った。

 人が生活出来る領域は約半分減っていて、様々な国家で領地をめぐる争いが起きようとしているらしい。


 世界は今、壊滅的な状況にあるようだ。


 この街は比較的内地との交易が盛んなので、世界の情報が載った新聞も沢山あった。



 俺の両親以外の村民はこの街に逃げて難を逃れた。


 俺の父親はあの日から行方不明のままだ。



 村の魔物は、その後駆けつけた“世界ギルド”の団員によって淘汰された。

 焼失した村から、死体は1()()も見つからなかったらしい。

 俺は母が息を引き取るまで見ていなかった。だが、あの状況から助かるはずもない。

 だとすると。


 隠蔽か?


 でも何でそんなことする必要があるんだ?


「おーい、ティアー」


 ジールがやって来た。


「なんだ、まだ筋トレしてたんだ」


「まぁ...な」


 そう、俺はこの街にきた翌日から特訓を始めた。母さんの遺言を実現するために。そして、もう何も後悔しないように。そもそも、世界の壊滅的状況を作った原因が俺にあるならば、尚更こんなとこで踏みとどまるわけにはいかない。


「ところでジール......何のようだ?」


 ジールは、ギルドがこの街に設けた緊急避難施設で寝泊まりをしていた。やはり故郷が無くなったショックが大きかったのか、ずっと顔が暗いままだった。


「ティア。この張り紙を見て欲しいんだ」


 


「張り紙?えーと……。世界ギルド団員募集試験?」


「うん。ついさっきギルドの人が来て配っていったんだ」


 今そんなに人手が足りてないのか?

 しかも10歳以上対象とか書いてあるぞ。


「で、これを俺に見せてどうしたいんだ?」


「僕、これに受けようかと思うんだ」


「はぁ?!やめとけってあんなギルド!」


「え?」


「あ、いやぁ。その...ほら!昨日来たギルドの連中もなんか嫌な感じしたろ?!」


 俺は必死に誤魔化した。


「そうかなぁ、そんな人には見えなかったけど」


 昨日来たギルド団員の中にセルシオンと言う奴が来ていた。愛想が良い好青年で、そこそこの実力もあり、みんなから尊敬されてる存在だ。

(前世の俺ほどじゃないけど)


「いやでもやめとけって。危ないじゃん」


 俺はギルドに入る予定だったが、ジールには入らせたくない理由があった。

 ジールは10歳児にしては非力な方で、性格も控えめだった。


 世界ギルドは、魔王軍と最前線で戦う組織。故に危険も大きい。


 ジールが入れたとしても、早死にする可能性が高いと思ったからだ。


「でも......」


 ジールは小声で言った。


「何か理由があるのか?」


「僕は...、故郷が無くなって悔しかった。ティアの両親が行方不明って知った時も、すごく悲しかったんだ。もうこんな思いはしたくない。それに、同じ目に会うかもしれない人をーー」


 ジールは俺の目を見ていった。


「守りたい」


 俺は見た。

 ジールの目の奥に光る輝きを。今までギルドで同じような目をしたやつは五万と見てきた。だが、その覚悟も虚しく、大半はそのうちに散っていってしまった。

 だが、ジールの目はそいつらとは少しだけ違った。絶望の奥に沈む希望の光。そんな輝きをしていた。


「だがな、今のお前じゃ到底無理だぜ?」


「だから、今日は頼みに来たんだ。僕は魔物と戦う君の姿を見たんだ。ティアは僕が思ってる以上に強い存在だった。だからーー」


 ジールは同い年の俺に頭を下げた。


「僕に、剣術を教えてください」


 非力で、ひ弱なくせに人のためには本気になれるこの姿勢。

 まったく、呆れたもんだ。だが、少なからずジールはギルドで見てきたやつとは違う。今回は自分の直感を信じよう。


「魔法も、だろ?」


 俺ははにかんで言った。


 するとジールは顔を上げて笑った。


 ここが俺とジールにとっての、始まりの地となった。







 入団試験は9か月後。準備をするにはちょっと短いが、まぁなんとか間に合うだろう。


 試験内容は、

 ・魔力値測定

 ・体力測定

 ・剣術等の武器使用実技

 ・魔法実技

 の4つだ。(募集要項にも書いてあったし)



 魔力値は、それ相応の体幹と体力が無いとあげられない。だから筋トレを軸に特訓をするか。


「ジール、まず一番大事なのは筋トレだ。だから筋トレから始めよう」


「わかった」


 快く返事をするジールだったが、やがて困った様子で首を傾げた。


「どうした?」


「あの、筋トレって、どうやるの?」


 ジールは苦笑いで答えた。



 え、あぁ。まじか。



 え、いや。まじか。



 ジールは筋トレとかやってこと無さそうだもんなぁ。

 いやでも流石にわかるだろ。


「はぁ。あのなジール、筋トレっていうのはなーー」


 俺は事細かく筋トレのやり方を教えた。


 この調子で大丈夫だろうか。

 なんか急に心配になって来た。




 …………



 そんな心配も束の間、4か月の時が過ぎた。

 ジールも並み以上の筋肉がついたとこだ。


「ジール、そろそろ魔法の練習を始めよう」


「わかった」


「ところでジール、魔法は......」


「使ったことないよ」


「まぁそうだよな。いいかジール魔法って言うのはな、打ちたい魔法を強く意識して、詠唱するんだ。」


「詠唱?」


「まぁ見てろって。こうやって手に魔力を集中させるイメージで......」


『火球』!!


 ティアの手から火の球が飛び出す。


「わぁ凄い!!」


「これが魔法だ」


「僕にもできるかな?」


「あぁ、今のジールならこのくらい普通にできる筈だぜ。やってみろよ」


「わかった......」


 えーと、手に魔力を集中するイメージ......

 そして出したい技をイメージ......

 あと詠唱......


『火球』!


 ジールの手から巨大な火の球が飛び出した。


「なっ?!これは『極火球』?!」


 火の球は木に衝突し次第に燃え始める。


 まずい、火事になる!


 慌てて水魔法で消火にかかる。


『水流』!!



 プシュゥゥ……。


 なんとか火は消すことができた。


「ジール。今のは……」


「わかんない、言われたとおりにやったはずなのに。失敗した」


「今のは失敗なんかじゃない!あれは大人になっても使えない人がいるくらいの大技だぞ!」


「おお……わざ?」


「あぁ、お前には多分魔法の才能があるんだよ!!」


「僕に、才能が?」


「きっとそうだ!」


 嬉しい誤算だった。

 これなら入団試験に間に合う。




 ジールは、魔法に関しては前世の俺を超えるかもな。


 心からそう感じた。

続きは明日載せる予定です!

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