表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

第1戦 第1話 ハーレムの裏側

「せんぱーいっ、席替えしませんかー?」



 いつも通りボランティア部の部室で適当な放課後を過ごしていると、突然千続(ちつづ)がそう提案した。


「ほら、今席順こうなってるじゃないですかー」



挿絵(By みてみん)



「ちつづが入部してからなんとなくこの席順になってますけど、菊花(きくか)せんぱいが下座になってるじゃないですか。1年生のちつづとしては、どうしても気を遣っちゃうわけですよ」

「うーん……。私は気にしないけどなぁ……」


 笑顔の千続とは対照的に、いつもにこやかな菊花の顔がやけに強張っている。そんなに今の場所が気に入ってるのか。まぁ俺も、


「別に今のまんまでいいんじゃないか? めんどくさいし」

「あんたは何でもめんどくさいで片づけすぎ。あたしは賛成よ。いい加減こいつの腑抜けた顔も見飽きたわ」


 前の席の羽衣(うい)がいつものように俺の言葉を否定してくる。生まれた時からの幼馴染だし今更気にしないけど。


雫咲(しずさ)さんは? 唯一の3年が上座から離れるってのも変な話でしょ?」

「しーも席替えしたいかなー。3年とか部長とか気にする仲でもないしねー」


 相変わらず眠そうな顔と口調でそう語る雫咲さん。これで賛成派と否定派は3対2。多数決で俺と菊花の意見は却下されることとなった。



「席替えするのはいいとして、どうやって決める? くじとか?」

「せっかくだしゲーム性をもたせましょうっ。名付けてドラフト席替えっ!」

 千続が適当なプリントの裏に部室の簡単な図を描き、それぞれの席に番号を振っていく。



挿絵(By みてみん)



「まず希望の席を紙に書いて裏側にします。全員書き終わったところでオープン。希望の席が一人だった場合、その人は当選決定! 逆に被ってしまった場合、投票は無効になって二巡目に移ります。それを決まるまで繰り返す。どうです? おもしろそうでしょう?」



 なるほど。くじのような運の要素はなく、希望の席を選べるってことか。いい暇つぶしにはなりそうだ。



「千続にしてはまぁまぁの案じゃない?」

「そうだね……。どこの席にしようかな」

「まぁまぁー、ゆっくり決めようよー」

「ちつづにしてはってどういう意味ですかっ」



 他のみんなも乗り気のようだ。まぁみんな席なんてどこでもいいだろうし、ゲームっていうところに魅力を感じてるんだろうけど。



 さーて、俺はどの席にしようかなー……。



――――――――――



 みんな席なんてどこでもいいだろう。ボランティア部唯一の男子、棚葉(たなは)がそうぼんやりと思っていたその時。四人の少女は全く別のことを考えていた。


(本当に千続にしてはいい案ね。初めてあんたを部に入れて正解だと思ったわ)

(ちぃっ! せっかく最高の席にいられてたのに……余計な真似を……!)

(この席順に満足してたのは菊花ちゃんだけ。こうなるのは必然だよねー)

(ちつづだけ強制最悪の席だなんて認められませんよっ! 下剋上のはじまりですっ!)



 四人の思考。それはバラバラなようで、実は同じ。彼女たちの目的はただ一つ。



 赤佐棚葉(あかさたなは)の隣の席に座ること。



 そして。



 赤佐棚葉と付き合うことにあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ