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射とめた先にあったもの  作者: 手羽先
2/2

出会いと始まり

不思議な人ってなんか惹かれます。


今日は夏祭り。屋台に人が溢れかえりカップルや親子や友達同士や団体…いろんな人たちがお祭りを楽しんでいる。

何が楽しいんだろう?


まぁ、俺も楽しんでる人間の1人だけど。

別に楽しみたくて来たんじゃない。

それ相応な理由があるんだ。理由が。


「侑利くん。たこ焼き食べる?」


俺の名前を呼んだのは隣にいる金髪の女の子。少し色黒で髪の毛を巻いて軽く化粧をして浴衣を着ている。

学校の同じ部活の同級生の摩耶。今日ここにいるの彼女に頼まれたからだ。


「いや。食べない」

と素っ気なく返す。

彼女はぷくーっと頬を膨らます。

可愛いと思ってるんだろうか。

可愛いと思ってなかったらこんな行動をしようとはしないよな。

あ。勘違いされては困る。別にカップルじゃない。俺の好みは黒髪の年上な訳で。

計算高い女の子は苦手で関わりたくない。

顔も好みじゃない。

数時間前の俺を殴ってでも止めればよかったと後悔する。


「!!」


すると、摩耶は俺の腕に抱きついた。

胸で俺の左腕を挟む。

気持ち悪い。これやってる奴って実際にいるんだな…

「柔らけえ」って言葉を期待してたのか?


こんな男慣れしてるのか無理してるのか訳わからない行動はやめてほしい。


「……なに?」


俺の疑問に


「ドキドキしないの?」と疑問で返される。


「べつに?」と疑問で返す。


摩耶は少し不機嫌になり距離を取る。

俺は、楽しくないなと心の中で呟く。


少し歩いただろうか。

頭の上に何かがポツリと落ちた。

足を止めて頭の上に触れ、確認をする。


濡れてる?雨か?

と考えてるとポツポツと少し暗くなりかけてる青空から雨が降り始める。


「こんな晴れてるのに雨!?」

と摩耶が叫び俺の腕を引っ張ろうとする。


面倒だ。本当に面倒だ。一人で雨宿りすればいいのに。


我慢の限界だったんだろうか。

俺は、摩耶の手を振りほどき走っていた。


摩耶の叫ぶ声が後ろから聞こえるが無我夢中で走った。


森深く走った。深すぎてか人も見なくなった。よかった。。


大きな木がたくさん並んでいる。

そのうちの一本に身を預け座り込む。

こんなにも濡れてたら風邪ひきそうだな…

ぼーとさっきまでのことを考える。

摩耶に後で連絡しないといけない。

楽しくなかった。逃げてよかった。知らないところだけどよかった。


「お主は此処で何をしておる?」


「!?」


気がつくと目の前に狐のお面をした女の人いる。落ち着く香りが鼻をくすぐる。


その女の人は俺の口元を手で塞いで「しっ」とお面の前で人差し指を立てる。


「声は出すでない。今は知人の結婚式でのう。人間が居るとなると大騒ぎになって殺されてしまう。」


俺は、必死に頷く。殺されるって嫌だ。


その反応に、女の人は俺の口元から手を離した。


てか、なんで森で結婚式なんだよ。

狐のお面をした女の人に目で訴える。


「晴れた空に雨が降ると『狐の嫁入り』と人間の世界でも聞くはずじゃ。それじゃよ。」


は?なんか、人間の世界って言ってるけどあんたも人間じゃないか。何を言ってるんだよ。変な喋り方でお面なんか被ってるけどさ。

と悪態をついてると女の人が一点を指差す。

見ろってこと?


俺は、木から体を起こしてそれを見た。


「はぁ!!?」


と俺の言葉に「馬鹿者!」と女の人はまた俺の口をふさぐ。

だって、二足歩行の狐だぞ!?それに粧しこんでる。花嫁っぽい狐と婿っぽい狐の後ろに何匹もの狐が並んで歩いていた。二足歩行で!


「なんだ?貴様らは。」


と男の声がする。途端に、女の人は自分のお面を俺の顔に押し当てた。

「いーや?嫁である知人が綺麗だからのう。このような綺麗な者を目の前に見たと、妾の連れが腰を抜かしてしまったのじゃ。」と言う。


「!?貴方は"十二支の神"である寅貝殿ではありませんか!!?」


と男がものすごい勢いで地面に這いつくばり頭を下げる。


その行動を見て女の人は

「今日の主役は妾ではない。知人である彼奴じゃ。妾にひざまづくことなぞせんで良かろう。」


何者なんだ?女の人の顔はお面が邪魔でちゃんと顔が見れない。ズラそうとしても女の人の力が強くてズラせない。


「こうなると思ったから身を隠しておったがのう。もう良い。桜深(おうみ)雫石(しずく)(さく)出てこい!お主は去って良いぞ。」


女の人の声で近くの木から3人ほど降りて来た。

さっきの男の人は「はっ」ともう一度、頭を下げると狐の行列に消えていった。


「妾は最初っから参列なぞ行かんと言ったであろう。こんな物で妾を隠せれると思うたか?」


俺の顔面に押し付けていたお面を3人の付き人に差し出して言う。


小鞠って人の後ろ姿しか見えない。腰より少し長めの濃色のした髪が揺れる。


「罰として其方達は此方の代わりに参列するのじゃ。妾は、この小僧と人間の世界を堪能させてもらう」


は?俺?この中で小僧って俺以外いないよな…!?

そう思っていると小鞠って人は俺の腕を引っ張り走り出した。


風がいてえ。刃物で切られてる気分だ。

後ろで「小鞠様!!待ってください!!」と声が聞こえるがスピードを緩める様子は無くあっという間にさっき俺が埋もれていた祭りのところに着いた。


「ふむ…。ここが「祭り」かのう?」と俺に問う。なんか凄く楽しそうな声だ。

「そーだよ。」と返答に「よし。楽しむぞ!」と言う。


は?


反論しようと顔を見る。

けれど女の人の容姿を見て言葉を失った。


長い睫毛に潤んだ茜色の目。濃色の前髪で茜色はより一層輝いて見える。頬は薄い桃色。唇は柔らかそうに潤っている。

とても和服が似合う容姿だった。


潤った唇がゆっくりと動く。

「そうであった。自己紹介がまだ出会ったのう?妾は小鞠と申す。今日は付き合ってもらうぞ?小僧」


少しいたずらそうな顔がとてつもなく綺麗で言葉を失ってしまった。


「こ、小僧って…お、俺の名前は"侑利"って言うんだよ!」


声にも動揺を隠せなかった。


「ほう?妾の美しさに動揺を隠せぬのか?」


図星。


「う、うるさいよ。」


「図星かの。面白い。小僧よ。」


また小僧って!


「侑利だっつってんだろ…」


俺のぼやきに「知っておるわい」と返してくる。じゃぁ、なんで小僧のままなんだよ。俺はもう高校生だよ。見た目だとあんたも大分若いだろ。


「あれはなんじゃ?」

と小鞠が指す。

その先にあった屋台は「わたがし」と書かれている。


「甘い綿のようなお菓子だよ。口の中に入れると溶けて無くなんの。」


俺の説明を聞いて小鞠はその場に行った。

「これは可愛らしいのう?これ1つじゃ」と言って金銭を渡そうとする。


今の俺の詳細を聞いて「可愛い」となるのか?「面白い」ってなると思ったんだけど。


「なんだよ?これ!金じゃない!こんなんじゃ売れねーよ!!」

と突然、綿菓子を売っている人は怒鳴る。

なんだ?と様子を見に行くと小鞠が持っているもので怒っていた。

小鞠が持っているのを見ると手のひらサイズの半分の大きさの六角形の長方形のようなもので真ん中あたりに形のふた回り小さい穴が空いたものだ。硬貨のように見える。


ふぅー。と俺はため息。


「おじさん。これでいい?」と横から縁がギザギザした銀色の硬貨を3枚渡す。


「おお。それだよ。このねえちゃんの連れかー?しっかり見とれよ!」と一声。


軽く会釈をして小鞠がいた場所に目をやると居ない。やはりと思っていた自分がいる。


「おい小僧!!あれはなんじゃ!」とまた騒ぐ。


もうなんなんだよ。俺は小鞠の元に向かって足を運ぶ。

完全にはしゃぐ子の保護者じゃねーかよ。


ふぅーと俺はため息をつく。

誤字あれば申し付けください。

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