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TS幼女の転生秘録  作者: 自堕落天狗
第0章 全ての元凶 ~ クソ女神との出会い ~
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【外伝】まな板の独白

本日5話目の更新となります。最新話更新からいらっしゃった方は、今日更新の1話目までどうぞー。


※【外伝】について

外伝では、メル(主人公)以外の人物がそのとき何をしていたか、何を考えていたかを書いています。

メルが本編終了後も含めて知らない情報も載ってるかも……?


「あっ、やっちゃった」


 ふしゅ〜とゴッドオーラが溢れる拳を慌てて引っ込める。

 目の前には仰向けに失神してぶっ倒れてるバカ。こんな程度で気絶するなんて貧弱すぎるわ。

 あ。一応どういう転生をさせてやるかって教えてあげなきゃだったけど………。


「まぁいっか」


 私はアホを一瞥するも気にしないことにした。失礼な態度を取ったこいつがいけないんだ。

 神様に向かって胸が無いだのまな板などと……不届き千万。すべて自業自得だ。


 ……………どうせだったら。


 スッと目を閉じて私は頭の中で思考を巡らせる。

 脳裏に浮かぶは、色とりどりの肉体情報。

 成長したらどんな見た目になるか、基本的に胚の状態で基本設計は出来上がっているから私の力をもってすれば将来どんな姿になるかは一目瞭然なのだ。

 私の管理している世界で、一番こいつに相応しい身体を選別してやる。


 生意気で気に食わないが、曲がりなりにもこいつは新魂だ。新魂は何度か人生を経験させてやらなければならないルールがあるから、気は進まないけどいわゆるヒトを検索する。

 地球の人間と同じもの、獣耳が生えてるもの、

羽が生えてるもの、いわゆる魔物と合体したもの………調べれば調べただけ、私の世界に生まれるヒトが浮かび上がってくる。


 うーんどれが良いかなぁ。

 性別は……まぁまず間違いなく男にしてやるもんか。邪な気持ちを抱かせた状態で男にするのは私の世界にとって損失しかないだろう。あと私のことを侮辱した罰だ。

 そうだ、良いこと思いついた。どうせなら私なんかより胸が小さい身体にしてやる。成長してから自分がした罪の重さを実感すれば良い。

 それだったら成長がほとんどない種族にしてやるか。んーでも良いのがいないなぁ。産まれながらのチート環境は成長によろしくないから良家はパスだし、それ以外だと胸がBカップぐらいになるやつばっかりだし……。


「おっ、良いのあるじゃーん!」


 思わず口に出した私の脳裏にある一体が引っかかった。

 見た目、少女サイズから一生変わらず。種族的な特徴というより、生まれついての特徴みたいだ。

 産まれる場所も、親は普通の一般的な家みたいだが、ヒトがまったく寄りつかない不自由な村。

 この身体はちょっと異常なほど魔力を持ってるみたいだけど。魔力チートか………やめよっかな。でもなぁあまり条件絞りすぎても引っかかりそうにないし………まぁこれぐらいオマケってことにしておいてやるか? 探すのが面倒くさいわけじゃないわ、うん。

 顔の作りは―――げっ、私の世界にしては可愛いじゃない。うーん……でもこの顔のおかげで男に言い寄られまくって苦労することもあるだろうし、このドジにはおあつらえ向きかしら。


 どんな人生を歩むかはこいつ次第だし、さすがに私の世界の生き物っていっても、運命なんか操作できないから将来どんなことが起こるかなんて検討もつかないからなぁ……。


「考えたって仕方ないか。これでいいや。ほいっと」


 未だにぶっ倒れてるマヌケに向かって右手を突き出し、むん、と一呼吸。

 今まで何度もやってきたから今更驚くこともない。力を込めた途端に未だぶっ倒れているのトンマが、ふわっと光の粒子となってこの空間から霧散していった。

 こうやって私の世界にうまく落とし込まれるのを確認すれば転生作業はおしまいなのだ。


 ん〜っと……よし、うまく固着した。これであとは何ヶ月後かに産まれるな。

 うぷぷ。あの野郎の悔しがる顔がいまからでも楽しみだわ……たまに呼んでやって反応を見るのも良いかもしれない。うん、そうしよう。あまり転生者や私の世界の住人には干渉しない主義なんだけど、たまにはいいっしょ。楽しみはいくつあっても問題ないのよ。


 ふぅーっと一息つくと、私の身体に久方ぶりの疲れが感じられた。

 ここまで転生させるのに苦労したのは初めてだわ。この間も地球出身の魂を転生させてやったけど、そいつも頭がイっちゃってて会話が成り立たなかったし……なんだろ。やっかいな魂の受け入れ先にでもなってるのかしら、私の世界。

 ここ最近ずっと戻ってなかったけど、たまには実家に帰ろうかしら。


 ワン!!


「!?」


 老人よろしく肩をトントン叩いてリフレッシュしようとした矢先、私はこの場所では聞き慣れない声を聞いて即座に振り返った。


 さっきまで気絶していたあいつがいたところで、犬が一匹。いや、犬というより前世が犬だった魂だろうか。でもここまで形が鮮明な魂は久しぶりに見たわ……。

 突如現れた犬は尻尾をぶんぶん振り回し、しきりに鼻を鳴らして匂いを嗅ぎ取っている。時折クゥーンと、切なそうな鳴き声が聞こえる。

 その様は、まるでご主人様がいなくなって寂しがる犬のようで……。


「もしかして、あいつが地球で飼ってた犬だったりして……?」


 私はその場から離れない犬に近づいて、頭を撫でてやりながら考える。

 あいつは新魂のくせして記憶が欠落していたわ。せっかくの新魂があのまま汎用に私の世界で過ごすぐらいだったら、あいつの取り柄が地球出身ってことぐらいしかないと思ってたけど……。

 もしもこの犬があいつと縁のあるものだったら、これは僥倖だわ。肩入れする気はさらさらないけど、どうせ私の世界で生きるならこの子とあいつを引き合わせてみるのも、面白いかもしれないわね。


 私は未だに動こうとしない犬の魂に触れながら、この子の転生先について思考を巡らせたのだった。




 ………思い返せば、普段ここまで頑張らない私だけど、このときはちょっとやる気があったというかなんというか。

 後年、私はこのときのことを思い出すたびに「昔の私、ぐっじょぶ!」と思うのであった。


[2019 01/27 23:40]【幕間】から【外伝】に変更。【外伝】の説明を若干変更。

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