神さまを煽ってはいけない
本日4話目になります。今のところこの話が最新話です。
最新話更新からいらっしゃった方は1話目からどうぞー。
女神さまが喚き立ててから幾分か経ちました。
みんな聞いて。女神さまが元気出してくれない。
「あーあ。やんなっちゃうなぁ。せっかく初めて転生する魂管理できると思ったからこうやって直接話掛けてやってるってのに、こんな状態だったなんて……」
何もない空間で体育座りしながら文句ばかり言っている女神さま。
こんなときでも後光が差していてるのは、なんというか滑稽に見える。……あっ、後光消えた。あれってセルフで出したり消したりできたんだ。
いやぁしかし、美人なだけあってなにをするんでも絵になっているけど、こんな惨めなポーズ決めた女神の絵なんてたぶん見向きもされないだろうなぁ。かわいそうに。
「言いたい放題言うわねあんた……はぁ。なんか性格も最悪だし、状態も最悪だし、ホントあんた良いとこないわね」
「心外な。オレの良いところは諦めないこと、前向きなとこ、ポジティブなところだぞ? これ以上に良いことあるか?」
「気付いていない時点で最悪よ最悪。はぁ……」
ぺっと虚空に向けて唾を吐く女神さま。
これだけ見てると本当に神様なのか疑わしくなるな。
……よし! ここはいっちょオレが元気付けてやりますか。
「ため息ばっかりしてると胸が縮むぞ?」
「うっさいわ!!」
目にも留まらぬ速度でオレにメンチを切ってくる女神さま。
ほら元気になった。
女神さまは口角をぴくぴくと上げ、青筋をニコニコとさせながらオレのことを見つめてくる。
美人さんに見つめられちゃうと照れるから早くその顔やめてください。
じーっとオレのことをにらみ続けていた女神さまは、ふと睨むのをやめるとそっぽを向きながらボソッとつぶやいた。
「せっかく初めての転生だから奮発して色々用意してやろうと思ってたのになぁ……」
おっと……今のは聞き捨てならねぇぜ?
「おぉ! ここにおわすは見るもの全てを魅了する女神さまではありませんか。貴方様のその強大なお力で、ここにいる憐れな子羊をお導き下さい」
「やっぱり辞めだわ。いいからさっさと転生してこいよ」
「そんなぁ! 頑張って褒めたのに!」
そもそも神様と二人きりになるこんなシチュエーション。
………どう考えたってオレが主人公になるための大事なイベントじゃないか!
魅了スキルとか体液媚薬スキルとかめっちゃ欲しい!
本音を言えばエロ向け能力が欲しいけど、ここは欲を出さずとりあえずチートだチート!
とにかくアピール! 口に出さなくても伝わるけど、ここはあえて口に出すことで本気度をアピールするんだ!
ここが踏ん張りどころだぞ! オレ!
「是非とも見た目麗しい女神さまには、異世界で生き残るためにチート能力をいただきたく存じ上げます。鑑定スキルとか薬物精製スキルとかマジカルチ○ポくださいお願いします!!」
「あげるわけないでしょ?! そもそも私が作った世界でそんなことさせるわけないじゃない! 自分の立場をわきまえなさい!!」
「えー良いじゃん良いじゃん! 損するわけじゃないじゃん!」
「んなものあんたに授けたら何に使うか分かったもんじゃないわ!」
「ハーレム作るのに使うからさ!」
「やっぱ底なしの馬鹿ね! 新魂だったくせにどんだけ煩悩にまみれてるのよ!」
「オレだって知らねぇよ! どうせ地球じゃ女にモテてなかったんだろうな!」
「偉そうにほざくな! みっともない!」
やいのやいの。
オレと女神さまの押収が続く。
にしても、本当この神様は器が小さいなぁ。ちょっとぐらい何かくれたって良いじゃないか。
控えめにいって最強能力じゃなくても良いから、って言っても首を縦に振ってくれないし。
ところどころ場を和ませようと淑女のように控えめな性格をしてる胸の話をしてあげると、どんどん機嫌が悪くなってくるし。
胸が小さい……というか無いレベルだけど、そんなこと気にするほど神様って俗世にまみれてるんだなぁ。
「うるせぇ粗チン! これ以上私の胸のこと言ってみろ考えてみろ! ただじゃおかねぇぞ!!」
そ、粗チンって……粗末な息子ってことか?!
こう見えたってオレはデカいんだぞ! 多分ね! 覚えてないけど!
それなのにこいつは!!
「ケチ! つるぺた! まな板! ペチャパイ! 器が小さいから胸も小さいんじゃねぇの?」
オレが言い放った瞬間―――――
びしり
―――――確かに、そう聞こえた。
どこからかって? 女神さまの方からだ。
女神さま、目が完全に座ってます。
それなのに今までに見たことないほどニコニコ笑ってます。
オレの魂が叫んでいる。
これはヤバいぞ、と。
「オーケー、オレが悪かった。だから笑いながらちょっとずつ近付いてくるのだけはやめてください」
「何言ってるの? 私は、あなたを、転生させて、あげようと、しているのよ?」
一歩近付いてくるごとに空気が震える。
威圧感、圧迫感、緊張感が、オレと女神さまの間が縮まるごとに湧き出るように増してくる。
完全に萎縮したオレは、その圧倒的なプレッシャーに負け、尻もちをついてしまった。
「ここまで私を楽しませてくれる転生者は初めてだわ……本当は初めての転生だから、ハーレムは無理でもマジで特殊能力みたいなのはあげようとしてたけど………」
女神さまは右手を、指一本ずつ丁寧に折り込んでいく。
「やめだ。やめやめ」
握った拳の周りにオーラのようなものが立ち昇る。
見るからに分かる。明らかにやべーやつだわこれ。
「少しでも正常な状態だったら温情をあげようとしてた私が馬鹿だった」
膝を曲げ、握った拳を包み込むようにもう片方の手で拳を握る。
カタパルトに搭載された戦闘機のように、握りこぶしが添えられた手によって殴り抜くようセットされる。
さっきから冷や汗が止まらない。
あれ、今のオレって汗かくのかな。どうなんだろ。この空間、暖かくも寒くもないちょうどいい温度なんだよなぁ。
………そんな現実逃避をしながら、女神さまの表情から目が離せない。
今目を逸らした瞬間、きっとオレは殺られる。
「大丈夫、何も心配はない。てめぇの転生先は今決めた。せいぜい可愛らしく生きていけ」
可愛らしく……それってどういう―――
最後まで女神さまに訊くことはできなかった。
ありったけの光と轟音がオレを包み込み、そして消えた。
次話投稿は2019/01/02 18:00を予定しています。