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TS幼女の転生秘録  作者: 自堕落天狗
第3章 雅との出会い ~ 冒険者として第一歩 ~
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初ギルドの感動 < 料理の匂い


 これから先の目標――生まれ故郷に帰ること――も決まったことなので、善は急げということで早々にオレと錦は料理の後片付けを始めた。食べていた量もかなり多かったから器の数も結構多くて、洗い終わったときにはてっぺんにあった太陽が少し斜めになっていた。


 後片付けも済ませたあと、錦は荷物の準備を、オレは腕に繋がっていた鎖のあとをさすりながら柔軟体操をする。

 首を回したり背伸びをすると、やった分だけ骨が鳴る。

 久々に身体を動かすからか、やたらめったら関節が痛い。

 幼女とは思えないポキポキって音がオレの身体を刺激して、ちょっぴり心地良い。


 そんなこんなで数十分後。

 錦と一緒にオレのことを助けてくれた漁師のおじさんが、心配そうに小屋へとやってきた。


 おじさんはどこから来たか、他に誰かいたのか、ってことは聞かないで、終始オレの身体の調子を心配してくれた。

 たぶん、たった一人であんな海の上に浮かんでいたから色々と察してくれたんだろう。

 まぁ錦が「ほとんどあたしが聞いておいたよ」って言ってたからかもしれないけど。


「しかし本当に大丈夫なんか?」


「だいじょぶだいじょぶ! あたしがなんとかするからさ」


「誰もお前さんには聞いとらんわい」


 ……錦がこの娘はあたしが面倒見ますよ、と言ってからおじさんの心配そうな面持ちは拍車が掛かっている。

 ワシが連れていこうか? と言ってくれたのは嬉しかったけど、オレの身の上が身の上なだけあってあまり知られたくないことが多いから、こればっかしは遠慮した。


「助けてくれて本当にありがとうございました。これと一緒になるのはちょっと不安ですけど……」


「そうだよなぁ。俺も心配だわ」


 苦笑しながら言うオレにつられたか、おじさんも眉を八の字にしてオレと目を合わせた。


「二人ともあたしを信用してよ~」


 錦が何か言ってるが無視して、オレはおじさんと別れの握手をしたのだった。


- + - + - + - + -


 オレが漂流していたときとは比べ物にならないほど穏やかな波音が聴こえる。

 まだ季節が6月ぐらいだから海で泳ぐ人は見かけないけど、遠くにはポツポツと漁船と思われる船が浮かんでいる。

 ってかこんなにも穏やかな気持ちで海を眺めたのは初めてだ。

 こっちの世界の海って地球と全く変わらないわ。


 それにしても、気持ちいいほどの快晴だ!

 まるで今のオレの心境を表しているかのようだ。ギルド、楽しみだなぁ!


 不快にならない程度の潮風をまといながら錦のあとを追い、オレたちは市街地へと進む。


 港の近くは人通りが少ない……というか居るのは漁師関係者だけだったが、街の中心に近づくにつれ、どんどんと人の数、種類が増えていく。

 私服って感じの格好をした人が多いけど、やはりというかなんというか、RPGゲームで見たことあるような冒険者みたいな服装で身を包んだ人も数多い。この世界ではこれが一般的だからか、周りの人たちはその格好を見ても特に気にしていないみたい。


 もしかしたらキノコ狂いのおっさんに売られた港町よりも活気はこっちのほうが上かも。


 それにしても道行く人たちがチラチラとオレたちのことを見てくる。

 まぁ……仕方ないか?

 傍から見ればオレは幼女で、しかも薄ら汚れていて、衣服もホコリっぽい簡素な麻製の服しか着ていない。

 周りを見渡してもオレみたいな格好をしたちびっ子はいないし、物珍しいのかも?


 その視線にちょっとだけ窮屈な気持ちになり、自ずと錦の影になるように歩く。


 ………10分程度人の目に晒されたあと、人の流れがどんどん増えていく中で錦がとある建物を指差した。


「あれがギルドだよ」


「おぉ、あれが……」


 錦が歩きながら指差した先には、赤茶色のレンガを使って作られた、おおよそ3階建てぐらいの大きな建物があった。


 そこだけ人の流れが常に途切れず、活気に満ち溢れている。

 入り口に近づくに連れ、身長の小さいオレではギルドが見えなくなってくるほどに人が多い。


 不本意だが錦にくっつきながら着いていく。

 入り口はそこまで大きくないのにみんな防具を身にまとい、剣や杖といった獲物を携えているので中に入りくくってしょうがない。


 ………どうにかこうにか、押しつぶされないように室内に入って、やっとこ人のあまりいない壁際にやってこれた。


「っと、やっと入れた。さぁ! ここがメルちゃん待望のギルドだよ!」


「はぇ〜…………」


 ガヤガヤと絶えず人の話し声に満ち溢れている場所に来たのは、生まれて初めてだ。

 建物の天井付近にある窓と、ギルド内に点在している松明? の明かりのおかげで、ギルドは部屋の中だってのに外と変わらない程度に明るい。

 上を見上げると、天井もかなり高い。オレが4、5人縦にならんでも天井に届かないんじゃないかな?


 壁際には『受付嬢募集中!』の言葉と一緒に給料なのか『1ヶ月18万rie』と書かれているポスターや、『傷薬、売ります、買います』と緑色の液体の入ったビンと葉っぱが描かれたポスターが貼ってあって、思わず目に付いた。

 こんなに大きな一枚の紙を見るのも初めてだから、たまらず背伸びして紙に触れてみる。

 

 ………うん、質感全然地球と変わらない。

 強いて言えばただの紙だからか、湿気でちょっと丸まってるぐらいかな?

 文字なんかも触ってもにじまないから、インクみたいなものもあるんだろうなぁきっと。


 壁際から目を離して、次は周囲を見てみようとした。

 が、身長のせいで周りに何があるか、人の壁でほとんど見えない。


 こういうとき幼女な身体が気に入らないなぁ~なんて思ってたところ、どこからか良い匂いがしてきた。


 無意識に鼻をひくつかせる。

 ……どこからか漂ってくるソレは、どうやら魚介類のようだ。


 じゅるり。


 思わず口の中によだれが溢れ出す。

 ここらは港町だから錦の料理にも使われていたけど、魚介類を使った料理が有名なのかな。

 村にいたときは川魚は食べたけど、それも数が多いわけじゃなかったからしょっちゅう食卓に上がらなかった。


 だからかな、錦のせいで魚料理の味にハマってしまったのかもしれない。

 特に海の素材を使ったスープは村では食べたことのない魅惑の味だった……。

 うちの村は山の中だったから、山の幸は経験してたけど海の幸なんて一切手に入らなかった。

 そんな未発達な舌が海の幸の味を覚えてしまったんだ………腹が減るのは仕方ないことなんだ!


 …………ん? 腹が減る?


 お腹に手をあてる。

 ガサついてホコリっぽい洋服が平坦なお腹を撫でる感触。

 まだ錦にごはんをご馳走になって2時間も経ってないのに、いつの間にかぽっこりお腹がすっかり引っ込んでいた。


 …………えぇっ。あんだけ食べたのに、なぜ腹が引っ込んでるんだ。

 これが俗に言う、味に目覚めた、ってやつか?

 もしくは別腹? 魚はスイーツだった?


 ……頭の中に魚の姿を思い浮かべる。

 とたんに出てくるよだれ。

 オレって食いしん坊キャラだったのか……いやいやそんなそんな。


 ついつい口元を拭う。


「あ、メルちゃんあれだけ食べたのに涎垂らしてるー!」


「た、垂らしてなんかないやい!」


食いしん坊ばんざい!


[2019/03/08 00:20]

最新話更新しましたー。

以下、過去ログ。


[2019/03/01 00:00]

風邪を……ひいてもうた……。

熱下がらなかったゾ。てもオシゴトタノシーから、土日で(体調不良回復すれば)次話投稿します。あたまが痛いゾ……


[2019/03/04 22:55]

だめじゃ……頭痛が痛いんじゃ……。

熱は無くなったけど咳と頭痛が止まらんのじゃ……。

書けるようになったら都度連絡? としてあとがき更新していきます。


[2019/03/06 00:30]

咳は続きますが頭痛がほとんどなくなりやした。

7日0時目指して執筆するでおま。


[2019/03/07 00:15]

進捗80%です。残業は悪。


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