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TS幼女の転生秘録  作者: 自堕落天狗
第3章 雅との出会い ~ 冒険者として第一歩 ~
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錦の誘い


「…………オレ、自分が生まれた村の名前聞いたことないわ……」


「………………マジ?」


 信じられないようなものを見るように錦の顔が驚愕に染まる。

 多分オレの顔も同じようになっていることだろう。


 慌てて目を閉じて、生まれてからこれまでのことを反芻する。


 ………正直近所のガキとはつるんでなかったし、いつもアルドと一緒に遊んでたからなぁ。

 お母さんもお父さんも村の名前なんて言ってなかったし………。

 行商人や手紙配達とかなんかしらやり取りしていたのは見たことあるけど、いつも遠巻きに見てただけだし。

 そもそも精神年齢は子供より高いけど、そういう大人の場に居合わせてもらえなかったしなぁ。


「ダメだ出てこねぇ……意識したことなんてなかったからなぁ」


「………じゃあメルちゃんが売られたっていう港町の名前は?」


「ごめん、それも聞いてなかったんだわ」


「成すすべ無いじゃん……」


 一応錦が知ってるかも、ってことで村や街の特徴を挙げてみたが、錦は首を横に振った。


 くそぅ……盲点だった。

 自分が住んでるところの名前なんて、気にしたこともなかった。


 ぐぬぬぬぬ………いくら思い出しても思い浮かばない。


 ……………あれ、これって地味に詰んでないか?


 海で数日遭難してたから、おっさんと別れた港町からはオレが思っている以上に流されているはずだ。

 陸繋ぎならばどこに行ったか少しは目星が付いたろうけど、こうして旅していた錦でも見たことがない場所だっていうなら、少なくともこの近くではないことは確かだ。


 ちくしょう……せっかく奴隷にならなくて済みそうだってのに、オレは家に帰ることができないのか………。


 脳裏に家族の顔が浮かぶ。

 そのことを考えると今すぐ帰りたい気持ちが湧き上がってくる。

 でもすぐには帰れない、もしかしたら………一生帰れないかもしれないという気持ちがぶつかってきて、わけが分からなくなってくる。


 それに帰るにしたってどうやって帰るんだ?


 歩いて行くにしても、自慢じゃないが魔法も使えないし、身体は吹けば飛びそうな幼女だ。

 うちの村では魔物が出なかったから、武器を扱う練習だってしていない。

 魔物に出会ったら一瞬で殺られることは目に見えている。


 それに下手に人を頼ったところで、奴隷として捕まり、またどこかに売られるかもしれない。

 おっさんがたまたま優しかっただけで、他の人間がみんなおっさんみたいだとは言い切れない。


 ……ヤバい。ヤヴァい。嫌な汗が吹き出てきた。

 どうすりゃいいんだ………。


「まぁまぁそんな暗い顔すんなって。わたしが知らないってことはわたしが行ったことがないって場所だろ?」


「……………確かに、そうなるな」


 どうすれば良いかグルグル思考を巡らせているオレとは裏腹に、錦はあっけらかんと言う。

 人がこんなに不安になっているってのに、こいつは全くもって事の重大さを理解していないみたいだ。

 その様子に少しばかりムッとする。


「ってことはさ。世界中を見て回りたいっていうあたしの旅の目的と一致するんだよねー」


 ……ムッとしていたが、この錦の一言でオレは目を見開いた。


「錦、お前……もしかして、オレの家を探してくれるのか?」


「あたしだって困ってる人を見捨てるほど薄情じゃないもん。それに地球出身っていう同郷のヨシミもあるし。あたしの旅のついでで良いなら一緒に探してあげるよ。どう? 魅力的な提案じゃない?」


 百合話のおかげですっかり尊敬も何もあったもんじゃなかった錦への好感度が一気に急上昇するのを感じる。

 どうすれば良いか迷って悩んで苦しんでいたオレにとって、この提案は考えてもいなかった素晴らしいものだ。


「も、もちろん! ぜひとも!」


 飛びかかる勢いでオレは錦に駆け寄る。

 さっきまで百合狂いのやべーやつだと思ってたけど、今じゃまるで女神のように見える。

 黙ってりゃ美人なんだよなぁこいつ。


「実は一人で探すことを考えてて、どうすりゃいいんだってずっと思ってたんだ……」


「だからあんなに暗い顔してたんだなー。わたしとしても旅が出来るしTSっ娘とイチャイ……もとい色んなお話ができるから一挙両得なのよー」


 ………いま何か聞こえた気がするけど気にしないでおく。

 オレとしてはこいつの申し出は渡りに船なんだ! 一人旅なんてできる気がしないし!


「そういうことだったらぜひともお願いします」


「うん、任された」


 オレは一礼して、にこやかに笑う錦と握手する。

 オレと比べてこの世界に精通しているであろう錦にはこれからたくさんお世話になるだろう。

 握り合う手に力を込めて、それをひしひしと実感する。


 ……やたらと握った手をもちもちと握ってくるが気にしない。

 ちっちゃくてすべすべしてて気持ちいいね〜なんて言ってるが気にしないったら気にしない。


「………ふぅ、満足満足。女の子成分チャージ完了よ」


 ……手のひらにしっとり汗が染みるほど握手していた手をようやく離してくれた。

 手をホコリがついてばっちいオレの服で拭くと服の色が変わるぐらい湿っている。

 ………気にしない。気にしないぞ…………。


「じゃあ握手も済んだしメルちゃんとあたしが一緒にいても怪しまれないように、ギルド行ってパーティ登録しましょうか」


 十分に握手を交わしたあと、ほくほく顔の錦が料理の後片付けをしながら言う。

 ギルドという言葉にさっきまでの滅入った気持ちが嘘のように晴れていく。


 おぉ! この街にはギルドがあるんだな!

 結局おっさんと別れた街のギルドには行かなかったから行ってみたかったんだよな。

 異世界といえばギルド! この単純明快な方程式はきっとオレを楽しませてくれるだろ!

 錦は冒険者だからギルドをよく使うんだろうな。これを気に色々と教えてもらわなくちゃ!


 錦の魅力的で魅惑的な呼びかけに元気よく答えながら、オレも錦のお手伝いをするのであった。


ブクマと評価ありがとうございます〜。

話の進みが遅いですけど、ようやっとギルドが出てきました。


[2019/02/21 12:00]

ヤヴァいヤヴァい。更新滞って申し訳ないです。

今日の24時過ぎに更新できると思いますー。もしもダメならあとがき更新しときます。

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