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TS幼女の転生秘録  作者: 自堕落天狗
第2章 おっさんとの出会い ~ 初めての珍道中 ~
38/55

【後日談】ジャンの朝食

※【後日談】について

後日談は本編終了後の世界での出来事が書かれます。


「さむさむさむさむさむぅぅ!!」


「おっ、遅いお目覚めだなメル。おはようさん」


 家の中にいるってのに寒さで痺れる身体を引きずりながら、オレはダイニングのテーブルまでなんとかやってきた。


 いやぁ朝起きたら想像以上の寒さにお布団から抜け出すのに小一時間かかってしまった……。

 まぁ今日はお休みの日だからゆっくりしてても問題ないよね!


「何飲むよ。俺様が直々に淹れてやる。感謝しろ」


「そんなら温かいお茶ちょうだい……って珍しい。今日は朝からジャンなんだな」


「あぁ、私はまだ寝ていたいんだと。だから俺様が朝食も作ってやった。感謝しろ」


 ジャンが仁王立ちして褒めて欲しそうにこちらを見ている。

 こういうときのジャンは褒めてあげると露骨に喜ぶので、オレは素直に褒めてやる。


 レナでは見れないニヒルに笑う顔を浮かべながら、ジャンが朝食を用意し始めた。

 ………こいつの扱いにも慣れたものよ。初めて会ったときは肝を潰したがな。


「それにしても昨日はだいぶ遅くまで起きていたみたいだが大丈夫なのか?」


 ホカホカと湯気が立ち上るお茶を出しつつジャンがオレを気遣ってくれる。


「最近は工房のほうも忙しいけど……雅の依頼はできる限り枚数増やしてやるんだ……」


「あんなやつに頼まれた仕事なんて適当で良いだろ適当で」


「そうは言ってもなぁ」


 ずずずっとお茶をすすりながらジャンに言い返す。

 雅に頼まれた仕事というのはオレの生まれてからの記録、人生誌のことだ。

 昨日ちょうど良いところまで書き終わったんだが、夜遅くになっちゃったんだよねぇ。


「ところでどこまで書き終わったんだ?」


 ことり、と子気味の良い音を立てながらサンドイッチを盛り付けた皿がテーブルに置かれる。

 ジャンが作る料理は簡単なものが多い。彩りなんか考えないような男らしい無骨なものばかりだけど、味は悪くない。

 そんなジャンが作ってくれた今日の朝食は、みずみずしい緑野菜が挟みこまれたタマゴサンドイッチみたいだ。


 ジャンが野菜を挟むなんて芸当を披露するなんて……こいつも勉強してるんだなぁ。


 三段に積み重なったサンドイッチの一番上のやつを手に取る。


 粗めに刻まれたタマゴは半熟だったり黄身が崩れるほど固くなっているものまで、様々なものが混ざっている。

 野菜を挟むことを覚えた割に、こういうところは気にしないってのがジャンらしい。

 手に取ったパンがほんのりと暖かいところを見るに、パンは今朝村で焼かれたものみたいだ。小麦の良い匂いがする。


 マヨネーズは作り置きしておいた自家製のものだ。

 工房で開発された冷蔵庫のおかげで、今まで足が早かった食材や調味料が劇的に長期間保存できるようになったのはとても喜ばしいことである。まぁオレが率先して作ったんだがな。地球にあったものから着想を得ているけど、実現するのはなかなかに骨が折れた。


 そんなジャン作のサンドイッチは、質素ながら起きたての腹には十分すぎるぐらいの贅沢な品である。

 しかも滅多にないジャンの手料理となると、腹の虫も収まる気配を見せない。

 両手を合わせて、いただきます。


「……食べ始めるのは良いけどよ、俺様の質問に答えないとは良い度胸してんじゃねぇか」


 サンドイッチを口にくわえながら両手にサンドイッチを掴む最強の布陣を敷いていたオレに、対面に座ったジャンが呆れた顔をして話しかけてきた。


 そうだったそうだった。あまりに朝食が魅力的ですっかり忘れていた。


「ごめんごめん。進捗だけど、今ちょうどおっさんと別れたところまで書き終わったぞ」


「まだそんなとこか! じゃあなんだ、俺様たちが出てくるのは……」


「うん、次は雅で、その次アレックスと出会うからな。その後だ」


 マジかよ~とテーブルにうなだれるジャン。

 オレより二回りほど大きい胸がテーブルと身体でぷにっと潰れてあふれている。


 今日の服装は侍女のものでなく私服で、しかもそれがまた生地が薄いもんだから胸の谷間が見える見える。

 ……ジーッと柔らかそうな双球の間を見やる。

 こいつの左胸の谷間付近にはホクロが付いてて、それがまた扇情的な雰囲気を醸し出しているのだ。

 パーティーを組んでいた時は普段から装備に身を固めていたから、このチャームポイントはあまり見ることができないものだった。見られてもみんなで風呂に入ったときとか着替えのときぐらいだったし。

 それが今なら見放題なのだ。こんなチャンスは滅多にない。これを目に焼き付けずして何をする。


 うーん、いつになってもおっぱいは良いものだ。

 口は常にサンドイッチが入っており、両手にもサンドイッチ、そして目の前にはおっぱい。

 なんだ、これこそが最強の布陣だったんだ。


 オレが朝食とおかずを堪能している間、ジャンはずっと子供のようにはやく書いてくれよ~とか駄々をこねてた。


 ってか雅もそうだったけど、なんでみんな早く自分のことを出して欲しいんだ。

 まぁそりゃ自分が出てきたら嬉しいんだろうけども。

 急かされたところでオレの人生誌なんだし、どうしようもないんだがなぁ。


 未だ文句を言ってるジャンに容赦なくおかわりを要求する。

 しぶしぶ準備をし始める、キッチンに向かうジャンの後ろ姿が、ふと雅と初めて会ったときの、あいつの姿と重なった。

 そして、同時に雅と出会う前の出来事を思い出して、ちょっぴり憂鬱になったのだった。



このキャラを早く出した過ぎて、もともと話し相手はレナの予定だったけど容赦なく変更ぅ。

キャラの詳細はまだ先だけど、後日談として登場させられるのは我ながらナイスアイディーア。


[2019/02/10 01:10]

誤字修正。暖かい→温かい

報告ありがとうございます~。誤字報告って適用すると通知からなくなっちゃうんすね……。

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