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TS幼女の転生秘録  作者: 自堕落天狗
第2章 おっさんとの出会い ~ 初めての珍道中 ~
28/55

村の秘密

この話と前話は同時投稿になります。最新話から辿ってきた方は、一個前へお戻りくださいまし。

「なぁおっさん」


「……………」


「おーい、聞こえてんだろ。返事しろよ!」


「……………」


「なぁなぁおっさんおっさんおっさん」


「……………だぁぁぁっ! うるせぇ! んだよクソガキ!」


「えへへー見てみてこの石! いーだろー!」


「知らねぇよそんなもん!」


 オレは見せつけるようにして荷馬車の運転席? にいる行商人のおっさんに、アルドから貰ったクズ石を見せつけた。

 アルドから貰った贈り物のおかげで、オレはさっきからニコニコがとまらんのだ。

 その嬉しい気持ちを見せびらかしてやって、オレは暇を潰している。


 そう。アルドと奇跡の出会いを果たしてから数刻。

 ガタゴト揺れる荷馬車は思った以上にヒマでヒマで。


 村で荷物を全部降ろしたせいか、荷台には何にも置いてない。

 それなのに、こっちの世界に生まれて初めてこんな遠くまで出てきたけど、見える景色はずっと森ばかりだし。


 だからさっきから、オレはもっぱらおっさんに話しかけてる。


「ってかさっきのガキは誰だ?」


 馬にムチをぴしゃりと打っておっさんが訊いてくる。


「誰ってアルドのことか? あいつはオレの大切な家族よ。よくできた弟さ……」


「はっ、弟ねぇ………」


 おっさんが思案顔になりつつ、振り返って荷馬車に座っているオレの顔をマジマジと眺めてくる。


「俺には、そうは見えねぇなぁ」


「そりゃそうだ。アルドとは血の繋がり全くないからな」


「んだそりゃ。子分的なヤツか?」


「ふっ、甘いな……血の繋がりだけが家族じゃあねぇんだぜ……アルドとは心の奥で繋がってんだ」


「んなこと真顔で言うなよ気持ち悪ぃ」


 顔をしかめながら前にむき直すおっさん。

 気持ち悪いといわれようが、オレがアルドを想っている気持ちは間違いなく強い。

 ……まぁ将来イケメンになったらおこぼれを貰おうって打算的なところもあるけど……。


 オレがどこに連れて行かれるのかわからないが、買われた家が優しければアルドにだって会えるかもしれないし?

 せいぜいアルドがオレのことを想ってくれていれば良いんだけど……。


「ってか、お前本当に7歳児か? そんぐらいの歳だったら、もっとこうガキ臭いはずなんだが」


 オレの渾身のドヤ顔をスルーしつつ、おっさんが訝しげに見てくる。


「失礼な。オレはぴちぴちの7歳だぞ。ただ言葉も文字もほとんど読み書きできるけどな」


 天才かよ……と感嘆の声を出すおっさん。

 そういえば当たり前っぽく話してたけど、確かに7歳児でこんな態度取ってたら怪しまれるかな。


 ……いまさら子供らしい演技なんてできないし、いっか。


「………しっかしなぁ……」


 馬のケツをベシベシ叩きながらおっさんが呟く。


「まさかあんな村に、お前みたいな掘り出し物がいるとは思ってなかったぜ」


「ん? 掘り出し物ってどういうことだ?」


「死の森奥地にある寂れた村で、美人な子供がいるとは思わなかったってことだよ。しかも読み書きまで出来るなんて、良いことじゃねぇか」


 美人だなんて……おっさんもお世辞がうまいなぁ。

 オレなんかより、うちの家族のほうが絶対美系だわ。


 っていうか、今さらっと聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ。


「なぁ、おっさん。その『死の森』って、なんだ?」


「はぁ? お前、あんなところに住んでてそんなことも知らなかったのか」


「へっ、どうせ田舎育ちですよ」


「マジでお前7歳じゃねぇだろ。……まぁ良い、知らないんだったら教えてやる。ちょうどいい暇つぶしになるしな」


 そういうとおっさんは、オレの知らなかった……いや、聞かされていなかったことを話し始めた。


「お前が住んでるところの周囲一帯はな、オレたちの間じゃ入ったら死んじまう森って言われてるんだよ。少しの間だったら別に問題はないんだが………だいたい一ヶ月程度いるだけで謎の死を遂げるって噂だ」


「そんな……オレたち、その森から色々食べ物とか鉱石とか掘り出してたんだぞ? でも、変な死に方した人なんて聞いたこともないのに……」


「さぁなぁ。お前らには有って、俺たちには無いものでもあるんじゃねーの?」


 よくわかんねぇけどな、といっておっさんは竹のような筒の栓を外して、中身を一口飲んだ。


 うちの村がそんな曰く付きなところだったなんて………。

 でもオレが生まれてから、村の外からやってきて長期滞在するような人なんていなかったし……。

 おっさんみたいな行商人は泊まることすらしないで、荷下ろししたらすぐに村を出てってたみたいだしなぁ。


 うーん……なんでだろ。

 言い伝え程度だったら昔のことだから、って一蹴できるんだけど、実際にそういう人を見たことなかったし……。


 気になるけど、きっとただの言い伝えかな、とオレは自分を納得させたところで、だがな、とおっさんが言葉を続けた。


「ヤバいところってのは魔物が一匹も居ねぇところをみるとあながち嘘じゃないと思うぞ」


 魔物!

 お母さんの聞かせてくれたおとぎ話にも出てきてたから、ファンタジーだなぁって思ってたんだよな!

 だからこそアルドとの勇者ごっこにも魔物って敵を出してたけど、本当にいるんだ!


「俺としては護衛を雇わなくて良いから懐具合にも優しくて良いんだけどな」


 護衛!


 今度は護衛と来たもんだ。

 っとすると、もしや…………。


「なぁおっさん。『ギルド』って、知ってるか?」


「あぁ知ってるも何も常識だろ? そもそもお前らの村からギルドに依頼が出たから俺が出張ってるんだし」


 おぉ! ギルド! あるのか!


 家族と離れ離れになって意気消沈してたけど、アルドと会ってからはオレの心の中には一種の余裕が生まれている。

 だから、こう……異世界〜ってしてる単語を聞くとどうしても興奮してしまう。


「何をそんなに……あぁ、そうか。お前は田舎モンだからな。知らなくて当然か」


「田舎モン言うなこの無精髭!」


「っと、そろそろ口を慎めよ? 自分の立場をわきまえろ。街に着いたら高値で売り飛ばすが、今の所有者は俺だぞ」


 そう言うとおっさんは言い切ったのか、それからは無言で馬の舵取りを始めた。


 ……わかってるさ。オレは売られた身だ。

 少しだけ、予想だにしないアルドからのプレゼントもあって浮かれてただけさ。


 ……でも、このおっさん、口では強く言うくせに案外ノリが良いんだよな。

 ……またあとで色々聞いてみるかな。


 そう思いながら、オレはアルドのくれたクズ石を手の中で遊ばせたのだった。



ブクマ&評価感謝感激ですー。

1章は最後シリアス気味になったけど、この章は基本ギャグ色強みです。

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