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TS幼女の転生秘録  作者: 自堕落天狗
第1章 故郷での話 ~ オレが売られるまで ~
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【校閲】やっぱり魔法は出せません

・メモ

【校閲】って書いてあるのは、章が書き終わった後に足した話。

途中で差し込むと分かりにくくなるかもだから、章の最後に追加しとくぞ。 byメル

「ふんっ! ぬぬぬぬぬぅ!」


「………」


「……はぁ。やっぱダメだなぁ」


「メルねぇ、やっぱダメ?」


「うん、どうやるんだろうなぁ」


 ぽすん、と草原に仰向けに倒れこむ。

 木々の隙間からのぞき込む曇天を見つめながら、どうしたもんかなぁと考える。

 そんなオレを見ながら、アルドは近くに落ちていた手頃な棒を握ると素振りを始めた。


 初夏。

 ここ最近太陽が顔を出すことが少ないが、それでも蒸し暑い森の中でも、アルドと見つけた水晶のある穴近くは涼しい風が吹いていて過ごしやすい。


 最近オレたちの遊び場はこの穴の周りになっている。

 家の外で遊んでいると村のガキどもがうるさいからなぁ。

 ここなら村の子供はやってこないから気兼ねなくアルドと二人っきりでいろんなことが出来るって寸法よ。

 あんなガキんちょにオレとアルドの貴重な時間を消費されるなんてつまらんからな。


 んでもってオレがさっき唸っていたのは、あいも変わらず魔法の練習をしていたからだ。

 ご存知の通り、オレはこの世界にやってきてからずっと魔法を使えるようにならないか試行錯誤をしている。


 お父さんお母さんから魔法って言葉を聞いたことがあるので、そのあと魔法ってどんなものか二人に聞いてみたけど………。

 曰く、指パッチンをすると火打ち石を使ったときのように火花が飛んで炎が吹き出る。

 曰く、水を作り出して飲料水にする。

 曰く、風を操り洗濯物を乾かしたりする……なんて使い方をするらしい。


 もしかして魔法って戦いに使うより家事とかにしか使ってないんじゃ? なんて思ったけど、きっとそんなことはないハズ。


 ただこの村で魔法を使っている人なんて見たことないし、うちの両親にも聞いたけど魔法は使えないみたいだ。

 魔法は遺伝するもので、ほんとに限られた人しか使えない。なんてことだったらオレがクソ女神を呪う項目が一つ追加されるんだけど……。

 でも日常生活に密着した使い方をされているのであれば、きっと一般人にも使えるんだろう。

 たまたまうちの村では使ってる人がいないだけで、誰しも頑張れば使えるようになるハズ!!


 そんな夢を抱いてオレは今日もせっせと練習するが、それが実を結ぶのは今日ではなさそうなのが現状である。

 っていうか魔法を使う感覚ってどんなもんなのかすら分からないし! 使ってる人いないから聞くに聞けないし!


 あ〜。どうすりゃいいんだろ。

 ………とりあえず自己流でどうにかするしかないか。

 こう、パッとやってグッとすればボンって魔法が出てくれれば良いんだけども……。


「ふっ! はっ! とぉ!」


 ヒュンヒュンと風を切る音をなびかせるアルドを見る。

 魔法を使えるようになることを目指すオレと違って、アルドは剣士(勇者)になることを目指している。

 最近は身体も出来上がってきたのか、剣に見立てた棒を振る速度も上達してきている。

 こっちもオレが適当に教えてただけだから自己流なんだけど、徐々に型というか、振り方が様になってきている。


 もしかしたらアルドには剣士の素質があるのかなぁ。

 ………うし、オレも負けてられないぞ。


 心にピシャリと活を入れ、小さくて色白な手のひらを天に向かって伸ばしいつも通り魔法を出すイメージを思い描いた。


 ポツ


 と、そのときオレの手のひらに水が落ちてきた。

 なんだ? と思ったのも束の間、オレたちの周りに立つ木々が音をあげる。

 隣を見ると、アルドのくりくりお目々と目があった。


「メルねぇ」


「……うん、雨降ってきたな」


 音は止むことなく、どんどん大きくなってきた。

 ここらへんは森の中だからまだそんなに濡れることはないだろうけど、この調子だとそれも時間の問題かな。


「よし、今日はもうお家に帰ろっか」


 分かったーとアルドも相槌を打って持ってた木の棒を放り投げる。それに合わせて、よっ、とオレも身体を起こして、アルドと一緒に家路を急ぐ。


 ……サァーっと奏でていた森の音が、みるみるうちに激しくなってくる。

 加えて、ゴロゴロと遠くで唸る声も聞こえる。


 こりゃ本降りになるなぁなんてのんきに思ったそのとき、ピカっ! と辺りが白く光り、少し間を開けてドォォォンと音が鳴り響いた。

 おぉ結構近いところに落ちたんじゃねぇの?


「わぁぁぁっ!」


 雷が鳴ったと同時に、オレの隣で悲鳴が上がる。

 振り返ると、アルドがぎゅっと目を閉じて、その場でしゃがんで耳を塞いでいる。


「なんだアルド! 雷怖いのか!」


「こわいよー!」


 雨だけで濡れている訳じゃないだろうウルウルな瞳をオレに向けてくる。

 今までも何度か見たことあるし、向けられたことがあるアルドの表情を見るたびに、まるでずきゅーん! と心が撃ち抜かれたようにどきどきしてくる。


「……オレが付いてんだ! 怖がることは何もないぞー!!」


 そんな気持ちを悟られないよう、オレは仁王立ちしてアルドの前に立つ。


 見下ろせば、かわいらしいちびっ子が、不安そうな顔でオレに頼って、すがりついてくる………。

 いや、オレは母性を感じているわけじゃないし、ドSであるわけでもないんだけど……アルドのこの庇護欲を刺激する顔を見るだけで、アルドが弟でよかったなぁってしみじみ思う。

 だってアレだぜ? アルドはオレ以外の子供とは遊んでないから、オレはアルドを独り占めできるんだぞ。

 しかも兄弟……いや、姉弟か。これさえなければパーフェクトなんだが、まぁこの際これについては目をつむってやろう。


 あぁ、たまんねぇわ………心がキュンキュンしてきちゃう。

 アルド、絶対イケメンになるわ。

 オレのハーレム計画の礎となるべく、この関係性を崩さず、かつオレに従順になるようにしていって………。


 ふはは! 夢が広がるな!


 思わずにやり、と笑う。

 たぶんアルドには雷にも恐れず不適に笑う姉貴のように見えるだろう。

 こうやってオレにどんどん依存させていって、将来はアルドによってきた可愛い娘を侍らせていって………。


 そんなことを思い描きながら、オレはアルドの手を引いて急いでおうちに帰るのだった。



※【校閲】について

作者が後々の伏線とか話にまつわる内容を、章が終わったあとに追加したくなったため書いた話を表しています。

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