赤い石
短いですが、まだまだ暗いゾ。
「……ただいま」
「ただいまー」
片手に石を握ったまま、オレたちは家に帰ってきた。
アルドはオレの挙動不審さを疑問に思いつつも、村長の家で何かをもらった、程度にしか考えてないんだろう。家に着く頃にはいつもの無邪気さを取り戻していた。
おかえり、と迎えてくれたお父さんとお母さんがオレたちが出迎えてくれる。
その時お母さんの手に触れた。
その手は、寒さからくる以上の冷たさをしていて震えていた。
「村長がぼくたちに石をくれたんだー」
なんでだろう? と言って首を傾げるアルドに、お母さんたちはぎこちない笑顔を浮かべるだけだ。
「アルド!」
その顔を見て、オレはお父さんたちの前で手を開くべきではないと感じた。
もしも、オレたちが当たりを引いていたとしたら、それを間近で見た二人が何をするか分かったもんじゃなかったからだ。
「オレと一緒に、部屋で見せあいっこしよっか」
二人の顔を見ないようにしつつ、オレはアルドの手を引いて部屋まで引きずって行く。
「お母さん達に見せろ、ってそんちょー言ってたよ?」
「オレと見せあったあとでも遅くないよ。ほら、行くよ」
分かったー。
そのアルドの子供らしさが今のオレには酷く羨ましく感じた。
……………パタン、と部屋のドアを締める。
耳を打つ音が先程より大きくなっていた。
雨が強くなってきたな、そう思い、ふと気付く。それが自分の心臓の鼓動だということに。
大丈夫、オレたちはきっと大丈夫。当たりは引いていない。
深呼吸をしながら自分に言い聞かせる。
けれども、耳に叩く鼓動が止められない。
「メルねぇ、はやく中見てみようよ!」
「……あぁ、そうだな」
緊張が収められないまま、オレはアルドに急かされ、石を掴んでいる手に巻かれた布を解き始めた。
でも、もう片方の手が震えてうまく解けない。
動揺が隠しきれずに何度もトライするが、そんなに固く結ばれてないはずが、解けない。
まるで見たくない、と身体が拒否しているみたいだ。
……こんなんじゃお父さん達と変わんないな。
「メルねぇ困ってるね! ぼくが手伝ってあげるよ!」
そういってアルドが自由な方の手でオレの布の結び目を引っ張ってくれる。
すると、嘘のように簡単に解けた。
「取れたね! じゃあ先にメルねぇの見せてー」
いつもは急かすアルドを見てほっこりしようものも、今は拷問のように感じる。
石を握っている拳は、無理に強く握っているせいか血の気がなく白くなっている。
オレは無意識に浅くなっていた呼吸に活を入れ、すうっと息を吸い込む。
…………ふん!
貝柱が切られた貝の如く、一瞬の間もなく拳を開いた。
まばたきもしないで凝視したその手の内には―――――
―――見覚えのある、クズ石が。
「……………………はぁ〜っ」
たまらずため息。
ハハハッ。んだよ、ここまでさんざん引っ張っといてこれか!
あ゛〜っ。緊張して損した。
全身の緊張感が解れ、脱力から膝を付く。
「メルねぇの石、透き通ってて綺麗だねー」
「はん、こんな石よりいつも見る秘密の場所のやつがもっと綺麗だわ」
アルドに軽口を叩くも、内心ヒヤッヒヤだったのは言うまでもない。
どうせ普通のクズ石ならハズレだ。わざわざこんなどこにでもありそうなクズ石当たりにするわけないからな。
あーあ。心配して損した。
「でも、オレの石の方が強そうだぞ!」
そういってアルドは、いつの間にか布を解いたのか、自分が、握っていた石を、オレに見せびらかしてきた。
その石は、クズ石なのに、血のように真っ赤に塗られていた。
こんなクズ石、見たこともない。そこらに落ちていたこともない。つまり…………………
ちょっと体調不良で、もしかしたら18時の更新ができないかもしれないっす……。
インフルじゃないと思うんだけど……。




