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TS幼女の転生秘録  作者: 自堕落天狗
第1章 故郷での話 ~ オレが売られるまで ~
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おトイレ1人でできるもん

0時と6時に更新する予定だった話を投稿してませんでした。申し訳なし……。

お詫びというわけではないですが、リメイク前の話でも書いてなかった新話を急遽執筆して、投稿させてもらいました。


「メルちゃーん」


「なーに? おかあさん」


 それはある冬の日、朝食を食べたあとであった。

 オレとアルドは3歳となり、もう家中を歩き回れるようになって久しい。


 その日もいつも通り家に置いてある数少ない本を読んだり、アルドの子守をしたり、魔法を使う練習――まだできたことないけど――をしようと考えていた。

 そこに、お母さんがやけにいい顔で迫ってくる。


 ……なんだろ。


「メルちゃん、『トイレ』って行ったことある?」


 オレの目の前でしゃがみながら、とても優しく、それでいてどこか緊張したようにお母さんが訊いてくる。


 もぞもぞと、いつものように構ってほしいのか、後ろからアルドが抱きついてくる。

 そんなアルドの頭を撫でながら、ちょっと考えて……………そして気付いた。


 トイレ……トイレって、あのトイレか!


「……………行ったこと、ない」


 皆さんはトイレという場所をご存じであろうか。

 オレはこの世界に生まれてから今の今まで、ずっとオムツで暮らしていた。そりゃそうだろう。前世知識があったところで、オレは赤ん坊なんだからな。

 こっちの世界には地球のような紙オムツなんてものは存在しない。

 当然布オムツだ。しかも材質なんて赤ちゃん用だから最低限マシなものなんだろうけど、それでも始めのころは違和感半端なくて邪魔で邪魔で仕方なかった。

 最初の頃はそうやって嫌悪感のほうが高かったが、1年、2年と経ってくるとそんな違和感なんて全く無くなってしまった。人間って慣れる生き物なんだなぁってどこか客観的に見てたけど……。


 トイレ、か。

 トイレ……行きたくねぇなぁ。


 赤ん坊生活3年目のオレにとって、トイレは行きたくない場所へと変貌していた。

 何故か分かるか?

 だって……トイレに行ったら、絶対意識するじゃないか。我が息子が行方不明なことを!!


 百歩譲って風呂は良い!

 ってかこの世界の風呂は日本みたいにお湯に浸かる文化が無くて、湧かしたお湯を布に浸して身体を拭く程度だからな!

 オレの股がクソ女神の胸みたいにつるぺたなのを、そんなに意識することが無いから良い。

 だがしかし、トイレはダメだ。

 しかも我が家のトイレは水洗式なんてものじゃない。ボットン便所だ。詰まるところ和式だ。


 想像してみろ。

 和式便所って、どうしても股開くじゃん。そっからおしっこなんてしてみろ?

 今でこそ布で巻かれてるからお手軽気軽に違和感なくおしっこできるが、絶対意識しちゃうじゃない。

 言っておくが、オレの自意識は余裕で男だ。この身体が女の子だなんて、まだ認めていないし許してもいないんだ!

 そんなオレがトイレできるわけない!!


「トイレ……行きたくない」


「え?」


 オレの思いの丈をぶつける。

 お母さんの顔が固まった。


 そりゃそうだ。きっとお母さんの思惑なら『オレ《メル》ならすぐにオムツ離れできる』と考えていたに違いない。

 今まで前世知識のおかげで理解も早かったし、自分でも何だが手の掛からない良い子だったと思っている。


 でもな、これだけは……これだけは譲れないんだ……!

 お母さんからすればオレは女の子に見えるんだろうけど、オレの自意識は男なんだ!


 くそっ! こんなところで前世知識が邪魔をするなんて……!!

 でも、ダメだ。オレのアイデンティティに関わる問題なんだ……!!


 アルドのお姉ちゃんって立場上、きっとお母さんはこう考えていたに違いない。

 アルドにトイレを教えるのはイヤイヤされるだろうから、お姉ちゃんであるオレをダシにオムツ離れをさせよう、ってね。


 だがそうは問屋が卸さない。

 こればっかりは思い通りになってたまるか!


「ねーねトイレこわいの?」


「そうみたいねー。アルドはトイレ行けるようになったもんねー」


「え?」


 ………??

 なんかよく理解できなかったけど。


「ボク、トイレこわくないよ!」


「アルドはすごいねー!」


「ねーね、トイレこわいならボクついてく!」


「わぁかっこいい! アルドは男の子だもんねー」


 ちょちょちょっと待って。

 え? アルド、トイレ、イケル? なんで? いつの間に?

 あれか、オレが昼寝してるタイミングか? そういえば最近アルドのオムツ換え見なくなったなぁなんて思ってたけどさ。

 マジ?


「ねーね! ここがトイレだよ!!」


「はぇ?」


 ふと気が付くと、目の前には和式便所……いやボットン便所が禍々しいオーラを放ってオレのことを待っていやがった。

 い、いつの間にトイレにつれてこられていたんだ!

 あまりのショックに放心状態だったのを良いことに、トイレに連れてきていただなんて!

 ちくしょう! これが人間のやることかよ!


「トイレってこうやるんだよ! みててね!」


 アルドはそういうと、付けていたオムツをいそいそと外し始め、トイレに置いてあるスリッパみたいな履き物を履くと、ボットン便所にまたがった。

 ……象さんをこちらに向けて。


「ちょ!?」


 っと向き逆だよね!?

 なんて言おうとした瞬間、アルドの可愛らしい象さんが放水を始めた。


 ぴるぴるぴる~

 しぱぱぱぱ~


 苦節3年。夢にまで見ていた息子の晴れ姿である。弟のだがな!!


 こ、これがオレのだったらどんだけ良かったか……。

 くそぅ、アルドの妙に自信たっぷりな顔が腹立つ。

 いつもはもっとイケメンに育てよーそしてオレの百合ハーレムに貢献するんだぞーなんて軽く思ってたけど、今回ばかりはその整った顔が繰り出す放尿どや顔にお姉ちゃん圧倒されちゃったよ。


「ボクにできるんだから、ねーねだってできるよ!」


「そうそう。メルちゃんはお姉さんなんだから♪」


 ひょい、っとお母さんに身体を持ち上げられ、アルドと入れ替わりにトイレに立たされるオレ。


 アルドとお母さんに背を向けてトイレに立つ。

 あれ、これってもしかして強制イベント?

 弟に男を見せつけられて打ちひしがれているオレにこれ以上の追い打ちを掛けるか!

 せ、せめて抵抗しなくちゃ……。


「……オムツ脱ぎたくない」


「じゃあボクが脱がしたげる!」


 出来た弟ですよ。


 違う、そうじゃないんだ。オレはトイレしたくないだけなんだ。

 っていうか、ちょっと待て。

 

 オムツを脱がされたオレ。

 これはもう腹を括るしかないのか……? 潔く行くのも男の証、か……。


 どこか悟ったように、オレはボットン便所にまたがった。

 ……股間を撫でる風が冷たい。お腹からケツの穴まで、なめらかな流曲線を描いていることを風が教えてくれた。

 意を決して、股間に力を込める。


「ねーね、トイレこわいならボクとママのこと見ながらトイレしよ!」


「「!?」」


 思わず振り返ってアルドを見やる。

 お母さんも驚いた表情でアルドのことを見ているが、そんなアルドはお構いなしにニコニコしながらオレのことを見ている。


「い、いやこっち向きで良いかなー?」


「ねーね! こっちむいてこっち!」


「えぇっ………」


 いや、よく考えてみてくれマイブラザー。

 オレ、いま、下半身裸なんだぜ?

 見せられるワケがねぇ!


 いや……そういえばオレって3歳児だ。

 3歳児に羞恥心なんてもの、あるか? 早熟な子だったらあるかも知れないけど、オレがこうして恥ずかしがってるのは、前世での知識があるからだ。

 あまり3歳児らしくない行動をするのは控えたほうがいい、か?


 ってことはなんだ……もしかして、ここはオレがおしっこしてる姿を見せつけてやるしかないのか!?


 もう一度振り返ってアルドを見てみる。すごくキラキラした屈託のない瞳でオレのことを見ている。

 お母さんを見てみる。娘の初トイレをちゃんと見たいのか、屈託のない瞳でオレのことを見ている。

 ってかお母さんはオレが驚いてたの分かってんだろ。ただ見たいだけだなアンタ! オレに味方はいないのか……。


 今日何度目かの畜生を心の中で叫びながら、オレは……オレは―――――覚悟を決めた。


「アルド………オレは、トイレなんてこわくないぞ!!」


 オレはアルドとお母さんのほうを向いて、ヤケクソになりながら、股間の蛇口を緩めた。


「おぉぉ」


 アルドがそんな感嘆の声を漏らす。

 オレは緊張感から大量に生産されていた聖水を漏らす。


 冷たい空気を切り裂くように吹き出しているアレをなるべく意識しないように努めるが、それはなんでも難しい。

 男のときみたいに管があるわけじゃないからか、吹き出した聖水がまるで涙のように股を伝ってケツの穴まで垂れてくる感覚を味わってしまう。


 嗚呼、オレってやっぱり、女の子になっちまったんだなぁ………。

 改めて再認識する。してしまう。

 心の中は屈辱感でいっぱいだ。こんなことならクソ女神にちゃんと取り繕っておけば良かった、なんて少し思ってしまったぐらいだ。


 ……長いようで短かっただろうか。

 おしっこ、完了です。


「メルちゃん……よくできました!」


「ねーねすごいねー!」


 お母さんが破顔しながらオレを褒め称えてくれる。ついでにアルドも褒めてくれてる。

 やめて下さい……褒めないで……褒めないで……。


「トイレが出来たらこれでオマタを拭きましょうね」


 そういってお母さんが、手のひら大に切り分けられた布を、トイレ横に置いてあった水が入った壺に浸して股を拭いてくれた。

 この股拭きはオムツをしていたときからやってもらっているので、今更この感覚に特別な感情は抱かない。

 けど、今後これを自分でやるってなったら、否が応でも自分で股間を触らなくてはならないってことになる。


 ……………心が、憂鬱だ。トイレのたびに女であることを再認識しなくちゃあならないなんて………。


 異世界生活3年目にして、とてつもない大きな壁にぶち当たったオレであった。




「ママー。なんでねーねにはぼくのコレ、ついてないの?」


「それはね、あと5回誕生日パーティやったら教えてあげる」


 ……さっきは勢いでやったから良かったけど、アルドがそんなことをお母さんに訊いてしまったがため、放尿シーンをガン見されていたことを思い出しちゃって。


 オレは何も言わず、顔を隠しながら布団に突撃して、掛け布団をかぶった。


「ねーねおやすみなの?」


 無邪気なアルドが恨めしい。

 オレは何もアルドに言わず、ただただ真っ赤になっているだろう顔をアルドとお母さんに見られないように努めるしかなかったのであった。


 畜生! めっちゃくちゃ恥ずかしいぃ!!


次回更新は今日の18時とします。

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