息子は何処へ
「あ゛ーーーーっ!!」
「merutyanntomatte-!!」
「meru,tomare-!!」
部屋中に響き渡る慟哭。
追うように鳴り響く両親の叫び。
それはさながら仲間を失った戦士を追悼する二重奏曲であった。
こんにちわ皆さま。
クソ女神に異世界転生させられたオレです。
聞いてください皆さま。
どうやらオレ、女の子に生まれ変わっていたようです。
「ま゛ーーーーっ!!」
「madaarudohaneterunoni,nanndekonokohakonnnanihaihaihayainnda!?」
「atasiniiwaretemowakaranaiwayo! fo-to,sottinimawatte!」
「wakatta!!」
女になってるなんて聞いてねーぞクソ女神どーしてくれるんだ!
オレの幼いころから前世知識チートでスタートダッシュ決めた人生のゴールはハーレムだったんだぞ!?
それなのにスタートする前から前提が崩れ去っちまったじゃねーか!!
「う゛ぇーーーーっ!!」
雄叫びをあげながら部屋中を動き回る。
もうじっとなんかしてられるか畜生!!
出てこいオレの戦友! 前世じゃ一度も戦ったことがなかったけど、お前はオレにとって必要なんだ!
「nanntehayanano!?」
「akannbougasiteiikoejanaizomattaku!!」
お父さんとお母さんの間をすり抜けてピンボールのように部屋中を駆け巡る。
2人が悪戦苦闘してるけどオレだってとても悲しいんだ。分かってほしい。
……さて、こうなった経緯について説明しよう。
まず、オレはまだまだ生後数ヶ月程度の赤ちゃんだ。
赤ちゃんだから、もちろんトイレに行けない。
そうするとおしっこやうんちはどうする? ……そう、垂れ流すしかないな。
まぁこれに関してはもう全然、これっぽっちも気にしていない。
羞恥心なんてもの、限界いっぱいまで我慢したおしっこと一緒に流しちまった。
それはおいといて、今日のことである。
今日、オレはいつも通り、おしっこをした。
そのとき、たまたま周囲にお母さんもいなかったみたいでな。
ちょっと呼んでみたんだけどお母さんがやってこなかったから、その間におしっこで股間が蒸れちまったんだ。
赤ちゃんってのは敏感肌でな、ほんの少し蒸れただけで痒くなってきちまったんだ。
それで、こう……手を伸ばして股間を掻こうとした。
そしたらな……いなかったんだよ。我が息子が。
最初は理解できなかったさ。なんせオレは男だと思ってたからな。
いや、男なんだけど、それは前世でも男だったからであって、今世でも当然男だと思ってたわけだよ。
なんども股間をぺたぺた触ったさ。でも、いくら触っても何もない。
頭が追い付かず、無心に股を叩いていたのに気付いたお母さんが、オレをベットから降ろしてパンツを交換してくれたんだが……もうそれからは一心不乱にハイハイさ。
ってかやってから気付いたけどオレ、ハイハイできるようになってました。
これが初ハイハイです。行動範囲が広がるぜやったね畜生!
「ま゛っ」
「yattotukamaetazo!」
オレの息子を探す旅は、挟み撃ちにされあっけなくお父さんに抱きかかえられ終わった。
お父さんの腕の中でウゴウゴともがくが、赤ちゃんと大人で腕力勝負なんて土台無理な話だ。
あっけなくオレはベッドまで連れ戻されてしまった。
ちくしょう! 離してくれ! オレは息子を探しにいかなくちゃいけないんだ!
「masaka,konnnanihayakuhaihaisihajimerunannte...」
「merutyanngaannnanioogoedasuno,atasihajimetekiittawa...」
お父様、お母様、どうかオレに息子を下さい……このままだと、ハーレム作れないんです………。
あーもう! このイライラを解消させるのにはアレしかない!
「んっ!!」
オレはお母さんに向けて、精一杯手を伸ばした。
「...nanikasira」
「...harahettennjanaika?」
「ee-xtu,masaka.madaakatyannyo? konnnafuunimotometekurumononanokasira...」
するすると洋服を脱いで、そのたわわに実った果実を準備してくれるお母さん。
おぉ、伝わった伝わった。はようそれでオレを癒してくれ。
ぷるん、と擬音が伝わってきて、その果実は顔をのぞかせてくれた。
抱き寄せてもらい、オレはそれに口付けてペシペシとおっぱいの感触を楽しむ。
はぁ……癒されるなぁ……。
「nonnderuwane」
「sikasitetukigaiyarasiina...」
「tte,anata! nanimitennnoyo,tyottoattiniittete!!」
お母さんの声で、お父さんがスタコラと部屋から出ていく。
どうせ授乳してるところをイヤらしい目つきで見てたんだろ! これは赤ちゃんだけに許された神聖な行いなんだ! 見世物じゃあないんだぜ!
ふふーん、となんとなく勝ち誇った気分になりつつ、オレは与えられた母性の象徴をまったりと堪能した。
「...ara,arudomoosikkositeruwane.kaeteagenakya」
ふと母性の象徴が離され、お母さんがオレの隣で今だすやすや寝ている兄弟に手を伸ばす。どうやら兄弟もおしっこしていたようだ。
なんとはなしに兄弟の股間を見てみる。
………お前は男なのかよ! ずるいずるいずるい!!




