【後日談】オレが転生秘録を書いたワケ
こちらは拙作の『つるぺた幼女の転生秘録』のリメイクとなります。
さまざまな話数で話の補完をしようとしたんですが、それだったら思い切ってリメイクにしたろ! って思いまして。
前作から読んで下さっている方でも、更新が1年以上止まってたらもう新作として出したほうが良いかなぁと考えてリメイクとさせていただきました。
前作ではなかった話の追加やシーンの書き直し等ありますので、読み直す気持ちで読んでいただければ幸いです。
※【後日談】について
後日談は本編終了後の世界での出来事が書かれます。
それは、12月も終わりに差し掛かったある日のことだった。
「ふぁ〜っ…………よく寝た」
窓の外から聞こえる鳥のさえずりを目覚ましに、オレは布団から這い出て窓から差し込むお天道様と顔を合わせた。
真冬だけあって肌を撫でる冷気が痛い。オレの身体が全力で布団に戻れーと命令してくるけど、その誘惑を振り切り震えながらも寝巻きから着替える。
寒さに負けぬよう抗いながら上着を脱ごうとしたとき、ふと、結婚したとき記念品にと貰った立派な姿見が目に入った。
……そこには、いつもはガラス玉のように丸く大きな青色をした目が、寝起きでボーッとして、肩まで覆い隠すほど伸びた薄い金髪をボサボサにしている少女の姿が映し出されていた。
地球の……いや、こっちの世界の住人からしても可愛らしい部類に入るだろう。男だったらこんな子と付き合いたかったわ。
寝起きじゃなければなお可愛いだろう、と自画自賛。
とかなんとか思うも、この姿にも慣れたもんだなぁなんて感慨深く感じながら、オレはもそもそと着替えを続けた。
上着を脱ぐ際に着けていた下着……スポーツブラが一緒に脱げてしまい、途端に身体を冬の冷たさが襲う。
急いでブラだけは着直しながら、その起伏の少ない……というか全く胸というものが存在しない身体に寒いだけが理由じゃない冷たいため息がこぼれる。
この身体を見るたびにあいつのことが脳裏にちらついて………まったくムカつく。
イヤな気分を振り払うようにすぐさま着替えを終え、普段着である食物繊維で出来た安価な服に袖と脚を通したところで、オレの部屋のドアがトントン、とノックされた。
「姐さん、起きてますか?」
「起きてるよー」
「そろそろ朝食の準備ができますよ」
「サンキュー、今行く」
オレは慌てて手櫛で乱れた髪の毛を整えながらドアを開ける。
「姐さん……髪の毛ぐらい整えたらどうですか」
「良いんだよ家の中じゃ。ほらご飯食べいこ」
オレのことを姐さんと呼ぶ長身の茶髪メイド……メイド? 侍女? が、諦めのため息をつくのを尻目に、そそくさとリビングまで続く廊下を進んだ。
リビングに近付くに連れて良い匂いが漂って来る。
ぐぅ、なんて思わず腹の虫も起き出したようだ。今日の朝ごはんは何かなーっと。
「よっ、元気してた?」
………リビングの扉を開けたところで、1人の人物が目に入り、たまらず顔をしかめた。
「なんでここにいんだよ……」
「メルちゃんが気になっちゃって。いやぁ久しぶりね〜この間の誕生日以来?」
「なにが久しぶりだ! この間ってつい三日前じゃねぇか!」
黒髪黒目、まるで日本人みたいな顔をした女……雅が我が家の食卓の椅子に座りながら「そうだっけかー」とか呑気に言っている。
こいつには返しきれないほどの恩があるから無下にはしない。
けど、こいつ自身も今は家庭を持ってるし、領地統治とかあるから忙しくないわけないのにしょっちゅうウチにやってくる。ホントは暇なんじゃないか? 大丈夫かあそこの領地。
「あっ、旦那さまが戻ってきたようなので朝ご飯届けに行きますね」
リビングの窓の外で黒い影揺れている。
それを見て、予め用意していたのか、1食分の食事を持ってオレのことを姐さんと呼ぶ彼女が外へ出ていった。
「そういや昨日、夜通し偵察しに行くって言ってたからなぁ」
テーブルに並んだ、冬の寒気に負けないよう熱そうな湯気を出す朝ごはんを前に、椅子を引きながらそんなことを思い出す。
定期的に見回りを欠かさないあいつも、雅が来てることぐらい勘付いてるだろう。追い出しちまって良いのに。今度お願いしておこうかな。
「そういえば、あいつは今出かけてるんだろ?」
わざとらしく辺りを見渡しながら、薮から棒に話を切り出す雅。
こいつのそんな言葉にため息をこぼしながらオレは答える。
「おいおい……あいつはないだろあいつは」
「良いんだよわたしのメルちゃんを手込めにしたんだから」
「もともとお前のもんになった覚えはねーよ」
朝食を届け終わったのか、戻ってきた彼女も含めて一緒にいただきますをする。
しれっと混ざってる雅になんとなくもやもやしながらも、朝ごはんに箸を伸ばす。
今日の朝ご飯は、村で採れた卵と行商人からふんだくった砂糖、それに最近流通できるようになった乳をふんだんに使ったフレンチトースト。
ちなみに乳の流通ルートは雅のおかげで出来た。そういう地味に重要なことをさも当然みたいにやりやがるから、こいつのこと嫌いになれないんだよなぁ。
「なんか失礼なこと考えてない?」
「そんなわけないだろ。あれだ、なんで雅がうちに来たのかな〜って考えてただけだ」
二枚目のフレンチトーストに手を伸ばしたところで話題を切り替える。
こいつがうちに来るときは大体がお願い事があるときだけだ。金になる話なら良いんだけど。
「いや実はさ、メルちゃんに自伝を書いてほしいんだ」
「……なんでだ?」
もぐもぐとトーストを咀嚼しつつ、三枚目のトーストに手を伸ばしながら問い返す。
「メルちゃんってさぁ。気付いて無いかもしれないけど、実は凄い体験しまくってるのよねぇ」
はぁ、際ですか。まぁ確かに、ここに来るまでは色々大変だったからなぁ。
死にかけたことなんて一度や二度じゃないし、この村奪還するときだってそりゃもう大変だったからなぁ。
「その中でも、特に神様と何度も話し合ってるのって今んところメルちゃんだけなの」
「えっ、アイツってそんなレアなのか?」
四枚目のトーストを食べ終え、いったん箸休めに飲んでいた白湯を思わず吹き出しそうになっちまった。
あの畜生、オレなんかには割としょっちゅう話しかけてきてたくせに……神様って暇なんだなとか思ってたけど。
気を取り直して五枚目を食べようとフレンチトーストに手を付けた。
「神様に向かってアイツなんて言えんの、メルちゃんだけよきっと……」
あきれるように雅が言う。
そんなこと言ったって、オレあいつのこと敬ってもいなければ尊敬もしてないし。
あれだ、悪友みたいな感じ? 友達だともオレは思ってないけども。
「でも自伝っていったらオレが自分で書かなきゃだろー? オレも忙しいしなぁ」
六枚目の最後の一切れを胃に収めながら言うと、雅が待ってましたと言わんばかりにオレに向けてビシッと指を差した。
「原稿料出すからさ、どう?」
「やらせていただきます」
有無を言わさず即断即決。オレの手腕が光った瞬間である。
咥えていたフレンチトーストを皿に置いて、オレは雅サマに深々と頭を垂れた。
苦しゅうない~と高笑いをする雅。
そんなコントのような光景を、オレを姐さんと呼ぶ彼女は素知らぬ顔で見ている。
っと、うめき声を上げながら玄関のドアを開けて入ってくる女性が1人。
「ただいま~! あ゛ーお腹すいたぁ……って雅さん!? なんでここに!?」
「よっマグちゃん、久しぶり」
「久しぶりってこの間会ったばかりじゃないですか……メイルちゃん、あたしにも一枚取ってー」
「りょうかーい」
早朝の仕事を終えたマグに一番大きなフレンチトーストを取ってあげる。
マグが戻ってきたってことは、そろそろオレの出番だな。
八枚目を急いで咀嚼してお腹に納める。
……うしっ、腹八分目だな。
「じゃあ雅、ちょっとオレこれから仕事場行くけど、原稿料について話詰めたいから一緒に工房来てくれない?」
「合点承知の助!」
ごちそうさまをして、お皿を片付けてからオレは雅と一緒に寒空の下へ繰り出した。
オレが、オレたちが勝ち取った平和な日常が、今日もまた始まったのだった。
本作品はメル(主人公)が書き記した自分の人生記録を、当時の人物が何をしていたか一人称で追っていくものになっています。
そのため、この小説のまえがきは、メルが書いた記録の一番最初に書いてある前書き風になってます。
[2019/01/01 18:10]前書き追加
[2019/01/27 23:38]【番外】から【後日談】に変更。後書き追加。